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第8話 初デート(その4)

(こっ、これが5000円のパフェなのね)


 頼子の前には、この喫茶店の中で1番高い品であるスペシャルパフェが置かれていた。通常のパフェと比べて大きさが2倍程度あり、ふんだんに生クリームが使われ、さまざまな種類のフルーツが中側、上部に詰められ、多彩な色を放つ花のように盛り付けられ、頼子は芸術品のように思え、食べるのが惜しく感じられた。


「ほっ、本当に食べて良いんですよね?」

「どっ、どうぞ。僕に聞かなくても良いので、遠慮なく食べてください」


 頼子は再度、仁に食べて良いか確認を取った。すると仁は一瞬困惑した表情をしてから笑顔で答えた。


「そっ、それでは、いただきます。はむっ」


 頼子は覚悟を決め、パフェ用の柄が長いスプーンを手に取り、パフェをひとすくいして口の中に入れた。


「んーっ、美味しいっ。凄く甘いわ」


 頼子は十数年ぶりに口にしたパフェの味を噛み締めた。そして、その美味しさから満面の笑みがこぼれ落ちていた。


(月見里さんがパフェを美味しそうに食べている。すごく幸せそうだなぁ。見ているだけで心が和む)


 頼子の幸せそうな顔を見ていた仁も、あたたかい気持ちになり、コーヒーを飲みながら、会話もなく黙々とパフェを口に放り込んでいる頼子の姿を眺めていた。



「パフェがこんなに美味しいものだったなんて。はっ! わっ、私ったら、思わず食べることに夢中になってしまったわ」

「月見里さんって、幸せそうな顔をしてパフェを食べるんだね。思わず見とれてしまったよ」


 頼子は結局パフェを食べるのに夢中になり、パフェの入っていたグラスが空になったところで我に返った。仁も頼子と会話をしなかったが、彼女の幸せそうな顔を見ているだけで、パフェを頼んで良かったと思った。


「おかわりを頼もうか?」

「えっ? いいの?」

「もちろん。すみませーん、スペシャルパフェをもう1つください」


(本当に頼んじゃったよ。これだけで1万円だよ。私、そんなに持ち合わせがないけど、本当に大丈夫よね?)


 頼子はスペシャルパフェの味が忘れられず、仁の甘い誘惑に乗ってしまった。2つめのスペシャルパフェを頼んだところで、財布の中に1万円も入っていないことを思い出し、仁が飲食代を払えなかったら、どうしようと不安になっていた。


「月見里さんは甘いものが好きなんだね」

「えっ? ふだんは食べないよ」

「そうなんだ。幸せそうに食べてたから、ふだんから食べているものだと思ったよ」


(甘いものは好きだけど、家計のことを考えると、無駄な出費はできないわ)


 仁は頼子の言葉を聞き、彼女が日頃、甘いものを食べないことを知った。仁はカロリーの摂り過ぎに気をつけているのだろう程度の認識であったが、単に月見里家の家計が厳しく、スイーツのような贅沢品が買えないだけであった。



「お待たせしました。スペシャルパフェです。こちらは、お下げしますね」


 仁と頼子がスイーツの話をしていると、注文していたスペシャルパフェを、ウエイトレスが持ってきてテーブルの上に置いた。それと入れ替わりで、仁と頼子が使用した食器が下げられた。

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