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第70話 3回目のデート(その11)

「何か光で照らされているわね」

「古井戸みたいだよ」


 仁と頼子が先に進むと、古びた井戸にスポットライトが当てられていた。


(恐らく井戸の中から何か出てくる仕組みだろうな)


 仁はそれを見て、井戸の中から何か出てくる仕掛けなのだろうと思っていた。


「……何も出てこないわね」

「故障かな?」


 頼子も同じことを思っていて、井戸の中から何も出てこないのを不思議そうに見ていた。


「ウエダヨー」

「きゃっ!」

「うわぁ!」


 仁と頼子は井戸の中から何か出てくると思い、下の方を注視していた。だが、それを逆手に取った仕掛けで、上からボロボロの衣装を付けられたお化けのマネキンが突然振ってきた。予想外のところから現れたことに仁と頼子は驚いてしまった。


「あっ、ごめん」

「わっ、私の方こそ」


 仁と頼子は驚いた拍子に抱き合ってしまっていた。仕掛けのマネキンを元の配置に戻すため、モーターの駆動音を立てながら上の方に移動していったところで、2人は互いに抱き合っていることに気が付いた。


「……先に進もうか」

「そっ、そうね」


 仁と頼子は気を取り直して離れ、再び手を握ることにした。


「兼田君の手って、こんなに固かったかしら?」

「えっ?」


 仁は頼子の手を握ろうとしたが、感触がなく手のひらは空中をさまよっていた。だが、頼子の方は何かをにぎっているようで、その感触が変だと感じていた。


「僕は月見里さんの手は握っていないけど?」

「えっ? それじゃ、この手は?」

「ワシジャヨ」

「「ぎゃー!」」


 仁が手を握っていないことを教えると、頼子は現在握っている物の正体を確かめようとした。すると突然赤い照明が当てられ、そこには血まみれの老婆が立っていた。お化け屋敷の中は、作り物だけだろうと思っていたが、実は脅かし役のスタッフも配置されていて、適所でお客さんに対し恐怖心をあおり立てる行動をしていた。


「あれ? もういなくなっている」

「どこに行ったのかしら?」


 仁と頼子が悲鳴をあげて、再び抱き合った。そして気が付くとその老婆の姿はなくなっていた。


「ちょっと驚いたね」

「そっ、そうね」


 仁と頼子は気を取り直して順路を進んでいった。その先には寺や墓場、さらにすすむと洞窟などがあり、さまざまな仕掛けで仁と頼子を驚かせていった。



「思ったより長いね」

「そうね。そろそろ出口でも良い感じがするわ」


 2人は程よくお化け屋敷の中を歩いていたため、そろそろ出口があるだろうと思っていた。だが、建物内が暗いため、先が見えず出口がどこにあるのかわからない状態になっていた。


「うわぁあああああ! もうだめだぁあああ」

「まっ、まってぇ! 置いていかないでよぉ」


 そのような状態で歩いていたところ、前方から男性の悲鳴が聞こえ、その後に女性の悲痛な叫びが聞こえてきた。


「前を歩いていたカップルかもしれない。何かあったのだろうか?」

「そうね。少し気になるわね。でも、この中には脅かし役のスタッフさんがいるから、何かあれば対応してくれるとおもうわ」


 仁は男女の声が先行しているカップルではないかと予想した。頼子も同じように考えていたが、この施設内には脅かし役のスタッフさんが複数いるため、不測の事態があれば対応するのではないかと考えていた。

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