第61話 3回目のデート(その2)
「この前、兼田君からお金を取ってしまったよね。あの時は動揺していて思わず恐喝まがいのことをしてしまったわ。本当は今日、返したかったのだけどいろいろ事情があって持ってこられなかったの。明日、学校で返すから本当にごめんなさい」
(音羽、お母さんの義務は果たしたわよ。あとはアナタが頑張るのよ)
頼子は音羽が仁からお金を巻き上げたことに対し、詫びを入れてから返却しやすいようにお膳立てをした。
「あれは、その、僕も悪かったことだから、受け取ってくれていいよ」
「兼田君ならそう言うかなと思っていたけど、私の方にも落ち度があったから、いただけないわ」
仁はお金を返却しなくても良いと言ったが、音羽が返すと言った以上、母親として頼子は返却の意志を伝えなければならなかった。
「月見里さんがそこまで言うのならわかったよ。でも、今日は会えるのを凄く楽しみにしていたから遠慮しなくて良いからね」
「わかったわ。私も会えるのを凄く楽しみにしていたよ」
仁は頼子の強い意志を受け取った。だが、今日のデートで使うお金に関して口を挟まないよう、仁は予め頼子に申し入れを行った。
「それじゃ、時間がもったいないし、移動しようか?」
「そうね。ところで、ここから遊園地へ行くのは徒歩は無理よね? どのルートで向かうの?」
仁は頼子に目的地の遊園地へ移動することを提案した。遊園地へ行くためには、駅から電車かバスで移動することになる。頼子は仁に対してどのルートで向かうか尋ねた。
「そうだなぁ、タクシーはどう?」
「えっ?」
(ちょっと、タクシーなんて使ったらいくらかかると思ってるの。あー、だめ、だめ、今回、口を出さない約束をしたばかりだったわ)
頼子は仁が予想外の提案をしたため驚いてしまった。
「ごめんなさい。口を挟まない約束だったけど、電車でお願いします」
「今日は休日だから電車やバスは混むかなと思ったけど、月見里さんが電車が良いって言うのなら、僕はそれで構わないよ」
頼子はタクシー料金のことを考えてしまい、怖くて乗れる気がしなかった。そのため電車での移動を提案すると、仁はその提案を受け入れた。
「それじゃ、駅へ向かおう」
「そうね。行きましょう」
仁と頼子は自然な感じで手を握り、電車に乗るために駅へ移動した。
「あと3分で来るね」
「そうね。あっ、前の駅を出たわ」
仁と頼子は切符を購入してから、ホームで電車を待っていた。天井から下げられた案内板には行き先と発車時間が表示されていて、その下に前の駅を主発したことを知らせる表示が出ていた。
「電車が来たけど、凄くお客さんが多いわね」
それから3分ほど時間が経過し、時間どおりに電車がホームに入ってきた。車内はかなり混雑していて、少し詰めなければ乗られない状態であった。
「月見里さん、大丈夫? 無理そうなら次の電車にするけど?」
「次を待っていても同じくらい混雑しているかもしれないわ。遅くなるし、乗ってしまいましょう」
仁は頼子に対し、次の電車を利用する提案したが、頼子は次も混雑している可能性もあり、到着が遅くなることを考えると、多少窮屈でも乗った方が良いと判断した。




