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第48話 ストーカー?(その8)

「よし、今日はこんなものだろう」


 翌朝、仁は株取引の売買入力を終えてパソコンの電源を落とした。


「今日は少し早いけど、学校に向かおう」


 仁はとある用事をするため、いつもより早く家を出た。



「通学時間帯は、コンビニくらいしか食料の調達ができないけど、ここへ来れば食料以外にもいろいろ揃うから便利なんだよなぁ」


 仁は家から少し離れたところにあるスーパーマーケットに来ていた。この店は24時間営業で価格も比較的良心的であるため、仁もときどき利用している。とても便利な店なのだが、家から離れているため、移動する労力さえなければ毎回利用しても良いと思えるほどであった。


「この時間帯は初めて来るけど、同じことを考えている人もいるんだな」


 店内は少し早い時間帯と言うこともあり、閑散としていたが、通勤、通学の途中で朝食、昼食用の食料を求めて訪れている人達の姿がちらほら見られた。その中に同じ学校の制服を着た人の姿もあった。


「うーん、何にしようかな」


 仁は惣菜が売られている場所に行き、弁当を見ていた。この店に立ち寄った理由は、言うまでもなく昼食で食べるためのものを確保するためであった。通勤、通学の途中で立ち寄る人のため、早い時間にも関わらず、おにぎり、パン、弁当などの種類が豊富に揃えられてあり、どれにしようか悩むほどであった。


「弁当も良いけど、階段の途中で食べるのは大変かもしれないなぁ。そうするとパンかおにぎり辺りが妥当かな」


 机の上で食べるのであれば弁当という選択肢もあるのだが、この日は音羽と屋上へ向かう階段で食べる約束をしていた。そのため、仁は食べやすさを重視して、おにぎりかパンあたりが良いかもしれないと考えていた。


「よし、これに決めた」


 仁は、選んだものを買い物カゴに入れ、精算を済ませてから店を出て学校へ向かった。




 仁がスーパーマーケットに入ろうとしていた同時刻、頼子は通勤のため同店の前を通りがかっていた。


「さあて、今日も頑張って働いて借金を返さなきゃね」


 頼子はこの場所から少し歩いたところにある縫製工場で、パートの仕事をしていた。毎日同じ作業の繰り返しであったが、前夫の残した借金を返済するため頑張ろうと前向きに考えていた。


「あっ、あの後ろ姿はもしかして」


 頼子は歩きながらふと視線を遠くに向けると、とても会いたいと思っていた人物に似ている後ろ姿を見つけた。頼子は思わず駆け出し、本人であるか確かめたいという衝動に駆られていた。


「やっぱり、兼田君だ。お店の中に入ってしまった。でも、ここで追いかけると仕事に遅刻してしまうし」


 頼子はスーパーマーケットに入ろうとした仁の横顔を見て、本人だと確証が持てた。そのまま追いかけたいと言う衝動に駆られたが、このまま店の中に入ってしまうと遅刻する恐れがあった。頼子はどうすれば良いか判断に迫られた。


(きっと兼田君は、毎朝この店で昼食を確保しているのだわ。明日は少し早く来てここで待ってみよう)


 仁が毎朝この店で食料を調達しているものだと思った頼子は、仕方なく翌日に声を掛けることにして、職場の縫製工場に向かった。

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