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第46話 ストーカー?(その6)

「私はもう行くわ」

「えっ?」


 音羽は片付けを済ませると、一緒に居るのを拒絶するかのように立ち上がった。


「それじゃ」

「まっ、待って」


 仁は階段を降りようとした音羽を呼び止めた。


「その、明日もここに来て良いかな?」

「学校の施設なんだから勝手にしなさいよ。でも、食べ物を分けるのは今日だけだからね」

「わかった。それじゃ、明日は自分の食べ物を用意してから行くよ」


 仁は何とか音羽と翌日ここで会う約束を取り付けた。


「私は先に行ってるわ」


 音羽はそう言い残して階段を下りていった。


「やっぱり何か怒らせてしまったみたいだ。教室では話をして貰えないけど、ここなら少し話ができたから、明日も行くしかないな」


 仁は、なぜ音羽に嫌われてしまったのか理由を尋ねるために、翌日もこの場所へ来ることにした。




「夕食の準備終わりっと」


 それから時間が経過して音羽は家に帰宅し、母親の頼子が帰ってくるまでに、夕食の支度を済ませていた。


「ただいま」

「おかえりさない。お母さん」


 しばらくして頼子がパートの仕事を終えて帰宅した。


「夕食の支度ができているから、用意が終わったら食べようよ」

「ありがと。すぐ準備をするから待っていてね」


 頼子は着替えを済ませて、ちゃぶ台の前に座った。


「おまたせ」

「それじゃ」

「「いただきます」」


 月見里家では夕食は基本的に母と娘がそろって食べるようにしている。都合が付かない日は仕方ないが、この日にあったことなどを会話することで親子の絆を深め合っていた。


「ねえ、お母さん」

「どうしたの? 音羽」

「実はここ数日、同じクラスの男子が、私に絡もうとしてくるの」


 食べ始めてから音羽は、ここ数日で気になったことを頼子に相談しようとしていた。


「絡んでくるねぇ。もしかして音羽が気になるんじゃない?」

「うーん、そうなのかな? 実は今日なんだけど、私が隠れて昼ご飯を食べているところが見つかってしまったんだ」

「音羽って、昼食を隠れて食べているの?」


 頼子は音羽が学校では、人から隠れて昼食を食べていたことを知り、驚きの表情を見せていた。


「だって、白おむすびだよ? 教室で食べているところを見られたら恥ずかしいよ」

「うっ、確かにそうよね。もっと良いものを持たせてあげたいのだけど、ウチの家計では厳しいのよねぇ」


 白おむすびしか持たせてあげられない頼子は、音羽が悩んでいることを知った。


「それで、その彼が何も食べていなかったみたいで、白おにぎりを1個分けてあげたの。そうしたらすごく喜んで食べてくれて、また明日昼食を一緒に食べることになった」

「白おむすびで喜んでくれるなんて微笑ましいわ」


 音羽は白おむすびを1つ分けた話をすると、頼子は学生同士の微笑ましい話のように感じていた。


「ねえ、お母さん、その男子なんだけど、兼田君なんだ」

「ふえっ!」


 音羽から、その相手が仁だと聞かされて、驚いた声を上げた。

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