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第45話 ストーカー?(その5)

(スカートの中の布なんて、初めて見てしまった)


 仁は、初めて見るものに目を奪われてしまった。それが油断に繋がってしまった。


「覗いているのは誰?」


(やばい! 見つかった!)


 油断して見せている方が悪いという考え方もあるかもしれないが、覗き見していた仁の方が圧倒的に不利であった。音羽はまだ誰か気付いていない様子であった為、逃げるという選択肢も残されていたが、仁は叱責を受けるのを覚悟して姿を見せることにした。


「ごめん、覗き見するつもりはなかったんだ」

「兼田仁! またアナタなのね。そんなところに突っ立ってないで、こっちに来なさいっ!」


 仁は、謝りながら音羽の前に姿を見せた。すると音羽は高圧的な態度で近くに来るように言った。仁は言われたとおり階段を上がり、音羽のところまで移動した。


「はぁ、あの位置だと大きな声で話さないといけないから、他の人に気付かれるかもしれないわ。少し話をしましょう。隣に座りなさいよ」


 音羽が仁を呼び寄せたのは、離れていると大きな声で話さなければならず、他の人に聞かれると様子を見るために、階段を上がってくるかもしれないと思ったからであった。音羽は仁に対して隣に座るように言った。


「これでいい?」

「近いわよっ。もう少し離れなさい」


 仁は音羽に言われたとおり隣に座った。仁は頼子と接するときと同じような距離感で身を寄せるように座ったが、音羽が近すぎると抗議したため、人が1人座れる程度間隔を空けて座ることになった。


「その、見たよね?」

「うっ」

「黙っていないで言いなさいよっ!」


 音羽の質問に仁は即答できなかった。答えられない仁に対し、音羽は威圧するように再度尋ねた。


「……白だった」


 仁は答えるしかないと覚悟を決めて、見たものを正直に答えた。


「やっぱり見ていたのね。そうよ、私の昼ご飯は何も入っていない白おにぎりよっ!」

「……え? おにぎり?」


 音羽が仁の思っていたものと違う言葉が出て、一瞬何を言っているのか仁はわからなかった。


「実は私の家ってお金がないの。昼食もこんなものしか用意できなくて、見られたくなかったから人が来ないこの場所で食べていたの」

「そうなんだ」


 音羽はこの場所でおにぎりを食べていた理由を仁に話した。


 ぐるるるる


「あっ」


 仁は音羽が真面目な話をしているときに、お腹が大きく鳴ってしまった。


「もしかして、兼田君は昼食まだなの?」

「実はそうなんだ」


 その音は、音羽の耳にも聞こえていたようで、心配した表情で仁に尋ねてきた。


「仕方ないわね。これで良かったらあげるわ」

「えっ? 良いの?」

「こんなもので良ければだけど」

「食べる。食べさせていただきます」

「はい、どうぞ」


 音羽は1つ残っていた白おにぎりを仁に手渡した。


「うん、シンプルだけど、適度に塩味が効いていて美味しいよ」

「白おにぎりでこんなに喜んでくれるなんて驚いたわ」

「月見里さんって料理が上手そうだね」

「わっ、私をおだてても何も出ないわよっ。それに、このおにぎりは私じゃなくて、お母さんが作ったものなんだからね。感謝するのなら私のお母さんに感謝しなさいよ」


 音羽は喜んで食べている仁を見て、少し照れた様子で答えた。

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