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第44話 ストーカー?(その4)

「うわっ、力を入れすぎた」


 仁は軽く上履きを蹴り上げるつもりでいたが、予想以上に力が入ってしまい、上履きは階段を転がり落ちていった。幸い廊下や階段を歩いている者に当たってトラブルに発展するようなことはなかった。


(うっ、視線が痛い)


 仁の不可解な行動に何事かと思って見ている者や、蹴り上げるところから見ていたのかクスクスと笑っている者など、仁はまわりの視線を気にしながら、2階と1階の踊り場まで飛んでいった上履きを回収するため、階段の手すりを持ちながら片足のみで移動した。


(無事回収っと。上履きは表だったから、上の階か)


 回収した上履きは表を向いていた。仁はそれに従い上履きをはき直してから3階へ移動をはじめた。


「上履きを回収するのに手間取ってしまったから、月見里さんを完全に見失ってしまった」


 仁は3階に到着したが、人通りは少なく音羽の姿も見当たらなかった。


「仕方ない。今日は諦めて購買に行くか」


 今からゆっくり購買に向かえば、売れ残りのパンが確保できるため、仁は昼食を確保するために仕方なく購買に移動しようとした。


「そう言えばこの校舎って屋上があったな。安全上入れないようになっているから、この上に移動する人はいないはずだけど」


 仁はふと階段を見ていると、この校舎に屋上があることを思いだした。ふだんは閉鎖されて立ち入り禁止になっているため、建物のメンテナンスなど用事がなければ階段を上がる者はいない。そのため上がるための階段はあるが、皆存在しないものだとして学校生活を送っていた。仁もその中の1人であったが、なぜかそれが気になってしまっていた。


「一応見ておくか」


 仁は上がる階段が気になり、何もないと思いながらも上がってみることにした。この先が閉鎖されている関係で行き止まりになっているため、この先に音羽がいることを想定して足音を立てないように注意しながら、1段、1段ゆっくりと階段を上がっていった。


(この先の踊り場を過ぎると行き止まりだな)


 3階と屋上の間にある踊り場の前まで来た仁は、その先の気配を探っていた。このまま階段を進むと屋上へ出る扉があるのだが、施錠されているため進もうと思うと職員室から鍵を持ってこなければならない。だが、屋上のフェンスが傷んで危険なため、一般の生徒の立ち入りは禁止されている。そのため教職員やメンテナンスで入る業者以外の者はこの先の扉までしか移動できない。音羽がいるとすればこの先しかないため、仁は慎重に階段の手すりの陰からそっと顔を出した。


「あーん。はぁ、夕食の残りがなかったから、白おにぎり2つしか持ってこられなかったよ。こんな昼食は他の人には見せられないよね」


 仁が上の方を見ると、階段の一番上に座って、白いおにぎりを頬張っている音羽の姿があった。


(みっ、見つけた。すっ、スカートの中がっ、し、白か)


 音羽は誰も来ないだろうと油断して、足を少し広げていた。そのため仁は、音羽のスカートの中から僅かに覗かせている白い布が見えてしまった。

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