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第38話 2回目のデート(その14)

「売り切れと言われると、何だか気になる」

「そうね。ないものは仕方ないわ。でも、改めて選んだカスタードチョコクリームクレープも美味しそうにみえるわよ」


 仁は結局カスタードチョコクリームクレープを注文した。ちなみにシュールストレミングはとてつもない臭気を発生し、周囲にも影響を与えてしまうほどの食材である。店主の遊び心でメニューに加えられていた物であり、女性店員が戻ってきていなければ、仁と頼子はとんでもないことに巻き込まれるところであった。


(1つ500円で、2人合わせて1000円か。少し金銭感覚がおかしくなっていたから、これくらいの価格だと何だか安心するわ)


 仁と頼子はクレープを購入して、移動販売車から近いところにあるベンチに座っていた。この公園にはゴミ箱が設置されていないため、クレープを包んでいた紙を捨てられるところが、移動販売車側で設置したゴミ箱しかないためであった。


「それじゃ兼田君、いただきます」

「どうぞ」

「はむっ。んーっ、甘くて美味しいっ」


 頼子は手に持っていたイチゴクリームクレープにかぶり付くと、生クリームの甘さが口の中に広がり、幸せそうな顔になっていた。


「はむっ、月見里さんが甘いものを食べたときに見せる幸せそうな顔を見ていると、僕も嬉しくなってしまうよ」

「そんなことを言ったら、食べ辛くなるじゃない」


 仁は、ひとくちクレープを食べてから、頼子が幸せそうな顔をして食べていることを話すと、頼子は恥ずかしそうな顔をした。


「あっ、そうだ。兼田君、ひとくちどうぞ」

「えっ?」


 頼子はそっと仁の前に食べかけのクレープを差し出した。


(こ、こ、これって間接キスになる)


 仁は頼子の差し出したクレープを食べてしまうと、間接キスになると意識してしまった。


「もしかして間接キスになるからって意識しちゃった?」

「ま、まあ、そうなるかも」


 頼子が上目遣いで尋ねると、仁は照れた様子で答えた。


「ふふっ、先週、パフェを食べたときも間接キスになるんじゃないかな? 前にできたのなら問題ないのではないかしら?」

「うっ、やっぱり気付いていたんだ」

「どうかしらねぇ。それじゃ、先に兼田君のをいただいちゃうわね。はむっ。んーっ、これもカスタードとチョコレートの絶妙なハーモニーが良いわねぇ」


 頼子は前回のデートでパフェを食べたときの話を持ち出し、そのときに間接キスは済ませているので問題ないと言ってから、隙を見て仁のパフェにかぶりついた。


「それじゃ、改めてどうぞ」

「仕方ないな。はむっ、うん、イチゴが良い味を出している」


 頼子は仁がイチゴクリームクレープを食べているところを、嬉しそうに眺めていた。こうして交互に食べ比べながら、仁と頼子は楽しいおやつタイムを過ごした。



「ごめんなさい。今日は夕食の食材を買ってから支度をしないといけないの。残念だけどそろそろ駅前広場に戻りましょう」

「そうなんだ。もう少し一緒に居たかったけど名残惜しいなぁ」

「またいつでも会えるわよ」

「そうだね」


 クレープを食べ終えた後、仁と頼子は楽しく話をしながら公園を散策した。気が付くと頼子は帰らなければならない時間になっていた。お互い名残惜しい気持ちもあったが、中央公園を出て駅前広場に戻ることにした。

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