第34話 2回目のデート(その10)
「海浜公園は今から行っても、帰る時間を考慮すると厳しいから中央公園でいいかな?」
「いいよ。それじゃ行こうか」
頼子は夕食の支度があるため、帰る時間が決まっていた。駅前広場は人の流れが多く、公園として整備されていても、あまり落ち着ける場所ではなかった。そのような事情で、この場所から少し歩いたところにある中央公園を提案すると、仁もそれを受け入れた。
「この辺りは人通りが多いね。横に並んで歩くのは難しそうだ。はぐれないように手はしっかり握っていてね」
「わかったわ」
中央公園は駅の裏側にあるため、線路を渡らなければならない。渡ると言っても踏切ではなく、地下をくぐるアンダーパスと呼ばれるトンネルになっていて、施工費用を節約したためか、その場所だけ歩道がとても狭くなっていた。同じように線路の反対側へ移動しようとする人達も多くいるため、人が密集する状態になり歩き辛くなっていた。仁は人の流れから守るように頼子の盾になって、この狭い歩道を移動した。
「ふっ、何とか抜け出せたね」
「そうね。こちらは昔から変わっていない街だから、反対側の街並みとは大違いね」
「僕もそう思うよ。結構古い建物もあるし、時代を感じる気がする」
線路の反対側は、開発の手があまり入っていないため、昔ながらの街並みになっている。木造建築の間隔が狭く、昔ながらの駅前商店街と言った街並みが続いていた。
「そうね。ほとんどお店は閉まってしまって、賑やかだった頃があったなんて、信じられないくらい寂れちゃったわね」
頼子は幼い頃の思い出で辛うじて、この駅裏商店街に活気が残っていた頃の思い出があった。口には出さなかったが、閉店している住居兼店舗では、当時、何が売られていたか、何となく覚えていた。
「到着」
「はぁ、はぁ、やっと着いたわね」
「月見里さん、大丈夫?」
「え、ええ、大丈夫よ。少し歩いたから疲れちゃったかもしれないわ」
頼子は仁の歩く速度に合わせていたため、旧駅裏商店街を抜けた先にある中央公園に辿り着いた頃には息が切れかかっていた。ゼイゼイと荒く呼吸をしている頼子を見て、仁は体調が悪くなったのかもしれないと思い、心配した表情で頼子に尋ねた。
(さすが若い男の子ね。私の体力では、ついて行くのがやっとだったわ)
頼子は、息を切らせながら年齢の違いを思い知らされていた。
「あのベンチで少し休んでいこうか?」
「そっ、そうね。気を遣わせてゴメンね」
仁は頼子を休ませた方が良いと判断し、公園の入り口付近に設置されているベンチで休むことを提案した。
「自分のペースで歩いてしまってゴメンね。もう少し月見里さんのことを気遣うべきだったよ」
「いいのよ。私の運動不足が原因だから気にしないで」
仁は家族以外で人と一緒に歩く経験が少なく、頼子が無理をして付いてきていたことに気づけなかった。ベンチに座ったところで落ち着いて考えることができ、配慮に欠けたことを反省して頼子に詫びた。




