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第31話 2回目のデート(その7)

「月見里さん、この階の用事も終わったし、そろそろ昼食にしない?」

「えっ? もう、そんな時間? そうね。昼食にしましょう」


 女性服売り場を後にして、仁と頼子はエレベーターの前に戻っていた。気が付くと昼前の時間になっていた。休日の駅から近い飲食店はとても混み合うため、その時間帯に入る前に食事を済ませてしまおうと仁は考えた。頼子もその意図を汲み取って仁の提案に賛同した。


「この百貨店の最上階は飲食街になっているみたいだよ」

「へぇ、そうなのね……」


(百貨店に入っている飲食店って、凄く高そうなイメージがあるわ。兼田君にお金を出して貰ってばかりだと悪いし、昼食くらいは私が持たないと。でも、お財布事情を考えるとあまり高いのは困るのよねぇ。とっ、とにかく、店の前に行って値段を確認してからでないと判断ができないわね)


 頼子は仁の言動から、この百貨店で昼食を済ませる考えだと思った。今まで仁がお金を出してばかりであった為、次こそは負担しようと思ったが、手持ちの資金で足りるか店の前で判断することにした。


「月見里さん、飲食街へ行くのはエスカレーターを使おうか」

「そっ、そうね。エレベーターに乗ると緊張するよね」

「僕も同じことを思ったよ」


 仁と頼子は、最上階の飲食街へ行くため、エレベーターを使用せず、エスカレーターで行くことにした。それはエレベーターに乗ると過剰なサービスに緊張してしまうためであった。それはお互いの共通認識であった。




「へぇ、いろいろなお店が入っているのね」

「そうだね。まだ時間が早いから、どの店も混んでいないみたいだよ」


 頼子と仁は飲食街のある階に到着した。このフロアには和洋中などいろいろな料理の店が並んでいた。まだ昼のピーク前であるため、どの店も混雑していないようであった。


「月見里さんは何を食べたい?」

「そうねぇ……うひゃ」


 仁と頼子は飲食街を歩きながら、どの店に入ろうか考えていた。今のところ客引きなどもなく、落ち着いた状態で店を見て回っていたが、頼子は店の前を通り過ぎる一瞬の間に、ディスプレーされている食品サンプルと、付けられている価格を調べていた。


「ひととおり見て回ったけど、月見里さんは何にするか決めた?」

「えっと、その、あの……」


 すべての店の前を見て回り、仁は頼子に対して何が食べたいか尋ねた。


(ちょ、ちょっとぉ、ここの価格設定おかしいわよ。ほとんど4桁ばかりで、下手すると5桁の店まで存在するわ)


 頼子は調べて回った価格に驚いていた。手持ちのお金で2人分の飲食費を出してしまうと、先日給料をもらったばかりであるにもかかわらず、月見里家の家計に大きく響き今以上の倹約生活を強いられることになるのは確実であった。


(えっと、えっと、そう言えば1店ほど価格表示していないお店があったわね)


 上手く考えが纏まらなくなっていた頼子は、見て回った店の中に、1店ほど表に価格を表示していない店があったのを思いだし、店に視線を向けていた。


「あの店が気になるんだね。それじゃ、入ってみようか」

「えっ? そういう意味で見てたわけじゃ。あわわわ」


 仁は頼子が1つの店を見ていることに気が付き、その店に入りたいのだと判断した。そして仁は頼子の手を握り、価格を表示していない飲食店に入ることにした。

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