第29話 2回目のデート(その5)
だだだだだだ
「お客様、この帽子なんてお似合いだと思いますよ」
「お客様、こちらは、ちょうど先週入荷したカーディガンです」
「お客様、今、とても人気のパンプスも試着してみてください」
「せっかくなので、こちらのショルダーバッグも合わせてみると良いですよ」
女性店員の合図を確認した他の店員達は、素早く陳列されている商品をかき集めて試着室の前に集まっていた。そして手にしている商品を次々に頼子に勧めてきた。
「か、兼田くーん。ど、どうしよう」
「僕は、月見里さんが綺麗になったところを見たいなぁ」
困っている頼子に対し、仁はオシャレをして綺麗になった頼子が見たいと思い、素直な気持ちを言葉に表した。
「彼氏さんの言質はとったわ、一気に畳み掛けるわよっ」
「「「おーっ!」」」
「えっ、えーっ!」
この百貨店の試着室は、スペースが広めに取ってあり、仁の言葉を聞いた店員達は、頼子を試着室の中に放り込んだ後、おすすめの商品を手に持ったまま中に入っていった。
「どっ、どうかな?」
「すごくよく似合ってよ」
販売のプロが選んだ商品とあって、着替えが終わった頼子は気品溢れる綺麗な女性に変身した。その姿を見た仁はとても似合っていると感じた。
「いかがでしょうか? お客様」
「いいですね。さすがプロが選んだだけあると思います」
「恐縮でございます。気に入っていただけて、従業員一同とても嬉しく思います」
女性店員は、仁に対して手揉みをしながら、店員達が選んだ商品の感想を聞いた。
「お支払いは、現金のほかに各種キャッシュレス決済、または当百貨店のクレジットなどもご利用いただけますよ。毎月僅かな支払いで彼女さんを喜ばせることができますよ。いかがですか?」
女性店員は、頼子に聞こえないように仁に話しかけてきた。仁は年齢的にクレジット関係の契約ができないが、大人びた容姿から条件を満たしていると判断して持ちかけてきたようであった。
「僕、まだ学生なので、クレジット関係の契約はできませんが、現金払いでお願いして良いですか?」
「えっ? まだ未成年なんですか? え、えっと、現金払いで本当に良いですか?」
仁が正直にクレジット関係の契約ができないことを告げると、女性店員が驚いた顔をしていた。仁が購入の意思を伝えると、その女性店員はさらに驚き、おそるおそる本当に購入する意思があるか確認してきた。
「はい。あの、そのまま着て帰ることはできますか?」
「もちろんです。では、お支払いが済み次第、サイズの微調整とタグ切りをおこないますね」
仁が女性店員に対し、頼子が購入した商品を着たまま出られるか尋ねると、女性店員は、会計が終われば可能だと伝えると、他の店員達に合図を送った。すると仁と女性店員のやりとりが頼子から見えないように、他の店員達が違和感を覚えない自然な位置に陣取った。
「彼女さんが金額を聞くと遠慮しそうな感じがしたから、私の判断で見えないようにブロックしましたよ」
「気を使わせてすみません」
「いえいえ、お客様の要望に応えるのも店員の仕事です。では、お会計ですが、税込み385000円になります」
「少し待ってくださいね。1、2、3……、38、39。これでお願いします」
「では確認しますね……はい、390000円のお預かりで5000円のお返しです。ありがとうございます」
仁が支払いを終わらせると、女性店員は再び他の店員達に合図を送った。
「はい、では一旦試着室の方へお願いします」
合図を受けた他の店員達は、頼子を試着室に戻し、再びゾロゾロと頼子のあとに続いて入っていった。




