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第26話 2回目のデート(その2)

「ここだよ」

「えっ、この建物に入るの?」


 仁と頼子は駅前広場から移動し、駅に隣接している大きな商業施設の前に来ていた。それなりの規模を誇る駅に隣接する形で店を構える商業施設といえば、百貨店と呼ばれる商業施設である。時代の流れから近年では営業に苦戦を強いられている店舗が多くあるが、この街の百貨店は健全な経営を続けているため、今のところそのような心配は無さそうである。百貨店とは、多くの商品を取り扱う店という意味から来ているが、少しお高い物を取り扱っている店というイメージが強くあり、倹約生活を続けている頼子にとっては、見えない障壁が張られているため近寄り難いと感じる施設であった。


「兼田くん、こんな格好で入ったら恥ずかしいよ」

「えっ? 別に問題ない気がするけど?」

「百貨店は正装して入らないとダメな施設なんだよ」


 頼子は親から百貨店は格式がある為、正装して入らなければならない施設だと教えられ、年月の経過した今でもそのように思い込んでいた。


「僕は詳しく知らないけど、それって、すごく前の話だと思うよ。今は、入っている全部の店がそうだとは言わないけど、低価格路線の店もあって、服装なんか気にしなくても気軽に入れるようになっているよ」

「そっ、そうなの? それを聞いて安心したわ」


 仁の話を聞き、頼子はホッとした表情をした。前回のデートから頼子は仁が嘘を言っているようには思えなくなり、疑う表情をみせることはなかった。


「それじゃ、入ろうか」

「ええ、でも、このような施設に入ることがないから、手を繋いでくれると嬉しいな」

「はい、どうぞ」


 不安に感じている頼子の気持ちを和らげるため、仁はそっと片手を差し出した。


「ありがとう。兼田くん」

「あっ」

「ふふっ、恋人繋ぎしちゃった」


 仁の手に頼子の手が触れると、そのまま握るのではなく、指同士が互いに絡みあった。それは、いわゆる恋人つなぎと呼ばれるものであり、仁は驚いた表情をしたが、頼子は意図的におこなったもので、小悪魔的な笑みを浮かべていた。


「こうして歩くと恋人同士に見えちゃうかな?」

「どっ、どうかな?」


 頼子が仁に尋ねると、仁は空いている方の手で後頭部をかきながら照れた表情をしていた。ここまでは年長者である頼子がマウントを取った形であったが、その関係は後ほど逆転してしまうことになった。


「月見里さん、エレベーターに乗るよ」

「えっ、ええ」


 仁は事前にネットで調べていたため、百貨店に入ると迷わず頼子を連れてエレベーターを目指して歩き出した。


 ポーン


「本日はご来店いただきありがとうございます。どうぞお入りください」

「おわっ」

「きゃっ」


 エレベーターが到着し、ドアが開くと正装した女性従業員が乗っていた。彼女はエレベーターガールと呼ばれる人で、エレベーターの階数ボタンと開閉ボタンを扱うのが主な業務で、その他に客の案内業務なども行っている。エレベーターは無人で動いているものだと思っていた仁と頼子は、突然現れたエレベーターガールに驚いてしまった。

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