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第25話 2回目のデート(その1)

「学校ではあんな感じだったけど月見里さん、本当に来るのかな?」


 次の日曜日、仁は約束していた時間より少し早くから駅前広場で待っていた。前回のデートをした翌日、月曜日に音羽と挨拶と少し会話を交わして以降、教室の席が前後である以外、特に接点がなかった。結局、音羽と話さないままデートを約束していた日曜日を迎えてしまい、あの様子では音羽が来ないかもしれないと、仁は不安を抱えていた。


「とりあえず、先週と服装を変えてみたけど、無駄になったかもしれないな」


 仁は、今回のデートに合わせ、新たな服をネットで注文していた。デートをドタキャンされてしまうと、今回の出費は無駄になってしまう。そのようなことを思いながら、相手が到着するのを待っていた。


「約束の5分前か」


 前回のデートでは大幅に遅刻してきたこともあり、仁は5分前に彼女が来るはずがないと考えようとしたが、約束の時間が近づくにつれ不安な気持ちが増していった。


「兼田君、お待たせ」

「あっ、月見里さん」


 仁が腕時計と睨めっこをしていると、不意に女性が声を掛けてきた。仁が顔を見上げると、頼子が笑顔で立っていた。


「うわぁ、兼田君、今日も格好良いね。私なんか、あまり服を持っていないから、これしか着てこれる物がなくて不釣り合いかもしれないね。あははは」


 頼子は、仁を見てから真っ先に服装を褒めた。それから、諸事情のため自分の服装があまり良くないことを仁に詫びた。


「そんなことは……ないよ?」

「兼田君、無理にお世辞を言わなくても良いわよ。私だって本当はオシャレしてきたかったの。本当にゴメンね」


 頼子の服装は、使い古してヨレヨレになった紺のワンピースにベージュのカーディガンを羽織り、靴は汚れで色の変わった白の運動靴に黒の靴下というものであった。お世辞にもあまりセンスが良い服装とは言えず、仁はどのように返して良いか言葉に困った。だが、そのような反応があるのは頼子も承知しているようで、恥ずかしそうに顔を赤らめていた。


「あまりこういうのは聞くものではないと思うけど、もしかして家庭の事情?」

「そっ、そうね。恥ずかしいことだけど、あまりこういうのにお金が掛けられるほど余裕がないんだ」

「恥ずかしいことじゃないよ。月見里さんは親を選ぶことはできないから、気にすることはないよ」


(確かに親は選べないわよね。でも、音羽の親って私なのっ)


 仁が家庭の事情について尋ねると、頼子は言いにくそうに月見里家の状況について話した。事情を聞いた仁は音羽自身が悪いわけではなく、親を選べないから仕方ないと持論を展開した。だが、その親とは頼子自身を指すため、どのように返事をすれば良いか悩んでしまった。


「この恰好で一緒に歩くのは嫌かな?」

「うーん、嫌ではないけど、気になるのなら、もっとオシャレしてみない?」


 心配そうにしている頼子に対し、仁はある提案をした。


「それってどういうこと?」

「いいから、いいから。あまり詳しくないけど、一応調べておいて正解だったよ。僕に任せてくれないかな? という訳で行こうか」

「えっ、ちょっと、どこへ行くつもりなの?」


 仁は今回のデートで考えていたプランを取りやめ、行き先を今回のデートで参考として調べていた場所に変更することにした。仁は頼子の手を握り、目的の場所へ移動を開始した。

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