第24話 放課後の告白
(思わずあとを付けてしまった)
仁は気付かれないように音羽のあとを追い校舎裏に来ていた。そこは先日、仁が音羽から呼び出された場所と同じところであった。
「で、私に何か用?」
音羽の前には同級生と思われる男子生徒が立っていた。音羽は警戒した様子でその男子生徒に話しかけた。
「そ、そ、そ、その、えっと」
「言えないのなら、この後バイトがあるし、私、帰るわ」
「まっ、まって。音羽さん」
なかなか用件を言い出さない男子生徒に呆れて、音羽は声を荒らげ、明らかに不機嫌な様子で呼び出した相手に対し帰ることを告げた。だが、その男子は、音羽が帰って欲しくないようで必死に呼び止めた。
「月見里音羽さん、好きです。付き合ってください」
そして勇気を振り絞った様子で、男子生徒は音羽に対して愛の告白をした。
(校舎裏に呼び出した時点で何となくそう思っていたけど、月見里さんは、どのような返事をするのだろう)
仁は心にズキンと何かが刺さる気持ちになり、音羽と男子生徒のやり取りを陰から見ていた。
「はぁ? 貴方とは1度も話したことがないのに、どうしてそんな考えになっちゃうの? そういうものは段階を踏んでするものだと思うわ。だからお断りよ」
「そ、そ、それじゃ、お友達から」
「今は友達を作る気はないの。それじゃ」
音羽は告白してきた男子生徒に対してハッキリと断りを入れ、そのまま校舎に戻っていった。
(良かった)
仁は、その様子を一部始終見た後、音羽が交際の申し込みを断ったことに安心した。
「くそっ、見た目が普通でモテなさそうだから、付き合ってやろうと思って手紙を入れたのに。そのあとすぐにヤレると思ったのに断ってくるなんて思わなかったぞ。とんだクソ女だ」
(あの野郎っ! 月見里さんに対して何て言うことをっ!)
仁はフラれた男子生徒の暴言が許せず、思わず感情のまま彼の前に出てしまった。
「おい、月見里さんのことを侮辱するなんて許さない」
「はぁ? お前何言ってるの? もしかして僕とクソ女のやり取りを見ていたのか? 覗き見なんて趣味が悪いな。あんな女、僕の方からお断りだ。じゃあな」
男子生徒は仁に捨て台詞を残し、校舎に戻っていった。
「月見里さんが断ったから安心したけど、アイツの言ったことを思い出すと気分が悪くなる。月見里さんもあんな奴に関わらなくて良かった」
仁は、モヤモヤとした気持ちを抱えながら教室に戻ることにした。
「あっ」
「何よ?」
仁が教室に入ろうとしたところで、帰り支度を済ませた音羽に出会った。仁は先ほどの光景を思い浮かべてしまい声を出してしまった。すると、音羽は絡まれたと思い足を止めて仁に尋ねてきた。
「あのことは、この前の日曜で解決済みのはずよ。まだ何か言いたいことがあるの?」
「……何もない。呼び止めてごめん。さようなら」
「さよなら」
音羽は何か言いたそうな様子の仁に向かって高圧的な態度に出ていた。仁は昨日の優しい話し方とは違うことにショックを受けて何も言えなくなった。仁は辛うじて音羽に挨拶を交わすことしかできなかった。
「……月見里さん」
音羽が仁の横をすり抜けていくとき、音羽から昨日と同じシャンプーの匂いがして、仁は思わずドキリとしたが、別人のような接し方に戸惑いを感じてしまった。




