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第23話 いつもどおりの学校生活(その2)

「ゴーヤパン、ピーマンパン、ニンジンパン……」


 仁は売れ残っているパンを見ていた。それらはどれも美味しそうには感じず、何故このようなパンを作ろうと思ったのか、パンを製造した会社に対し疑問に感じた。


「今日は、ゴーヤパンとピーマンパンにしておくか」

「毎度あり。それじゃ2つで500円ね」


(不人気で美味しくなさそうなパンが、なぜこの値段で売られているのだろうか)


 仁はゴーヤパンとピーマンパンを選び、少し高めの価格設定に納得できないところであるが、贅沢を言える状態ではないため、購買のおばちゃんにパンの代金を払った。


「あとは飲み物を確保して、どこか人気の少ないところで食べよう」


 仁は購買横の自販機で炭酸飲料を購入し、人気の少ないところで食べることにした。



「今日はここで食べよう」


 仁は中庭のベンチに腰掛けて、購入したゴーヤパンの袋を開けた。中庭は園芸部が管理している花壇を中心に小さな公園のように整備されている。ベンチなども配置され、仁のようにこの場所で昼食を済ませる生徒もいた。


「うっ、苦い。よくこんな味で売り物にするよなぁ」


 仁はパンに挟まれたゴーヤの苦みを感じながら食べていた。率直な感想で言えば、このパンは不味いに分類され、この味で売り物にできるものだと不思議に思った。だが、空腹よりは良いと考え、炭酸飲料で流し込むようにしてゴーヤパンを完食した。


「次はピーマンパンか。相変わらず不味い」


 次に仁はピーマンパンの袋を開け、ひとくちかぶりついた。ゴーヤパンやピーマンパンは売れ残っていることが多いため、売れ残りを狙っている仁にとって食べる機会が多いパンであった。何度も空腹を満たすためお世話になっているパンであるが、空腹よりはマシ程度な扱いで、決して味に満足できるものではなかった。


「はぁ、ごちそうさま。午後の授業が始まるまで時間があるし、少し横になるか」


 仁は昼食を手早く済ませ、ベンチの上に寝転がった。視線は上を向いていて校舎に囲まれた上に青空が広がり、その中を流れる小さな雲をボーッと眺めていた。


「明日は学食に行こうかな」


 仁は口の中に残ったゴーヤとピーマンの苦みに耐えながら、明日は学食で昼食を済ませようと誓った。明日の昼食について考えごとをしながら、半分ボーッと過ごしていると、あっという間に昼休みが終わり、午後の授業が始まった。




「よし、終わった」


 それから時間が経過し、午後の課程が終わり放課後になった。仁は帰宅部であるため、この後の予定はなく下校するだけであった。


(ん? 月見里さん、何をやっているだろう)


 ふと、前の席を見ると、音羽が手紙のようなものを持っていた。


「はぁ、面倒くさいなぁ」


 音羽は手紙に視線を落としため息をついていた。そのあと手紙を制服の上着ポケットに突っ込み、荷物を置いたまま教室を出て行った。


(何か気になるなぁ)


 仁は元気のない音羽の後ろ姿が気になり、悪いと思いつつ、あとを付けることにした。

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