第21話 初デートの翌日
ぴぴぴっ、ぴぴぴっ。
「んんっ、もう朝か」
翌朝、仁は目覚ましの電子アラームで目が覚めた。昨夜は疲れていたこともあり、早めにベッドに入ると、そのまま落ちるように眠りに就いた。睡眠時間は適度に取っていたはずであるが、仁は起きるときに気怠さを感じていた。
「さて、忘れないうちに今日の設定をしておかないと」
仁は自室のベッドから這い出し、そのまま同室に置かれているパソコンの電源を入れた。
「さて、外国の市場はどうなっているかな?」
仁は普通の高校生より早い時間に起床する。それは外国の株式市場がどのようになっているか確認するためであった。
「ふむふむ。さて、設定の方を済ませてから学校に行く準備を始めよう」
仁はその情報と、国内の経済状況を確認してから株取引のサイトを開き、この日の取り引き設定を行った。仁は高校に入ってから株取引を始め、多くの利益を出していた。学校に行く前に情報収集を行い、その情報を元に指定した金額に達した場合、指定した株を購入したり、保有している株を売却したりといった設定をしていた。
「よし、こんなものかな」
仁は株の売買設定を行った後、学校に行く準備を始めた。株取引は中長期で株を保有して売却による利益確保や配当、株主優待を狙うやり方と、短期保有で売り買いを繰り返して利益を確保するやり方が存在する。仁は後者の短期保有で取り引きを行っているが、リアルタイムで市場の動向を見ながら適切なタイミングで取り引きを行うようなことはせず、事前に設定した金額になると自動で取り引きするようにしていた。これは、株価の動向を常に見てしまうと、気になって授業中にスマホで株価を確認したくなる衝動に駆られるためであった。仁はこの方法で手堅く利益を出し、今では親の収入を大きく上回るほど稼いでいた。
「さて、準備もできたし、学校へ向かうか」
仁は学校へ行く準備を済ませて家を出た。
「到着ぅ」
仁は学校に到着してから教室に移動し、自分の席に座った。
(月見里さんは、まだ来ていないな)
仁が音羽の席を見ると、空席になっていた。
(昨日のデートは楽しかったなぁ)
仁は昨日のデートを思い出し、無意識に音羽が来るのを楽しみに待っていた。
(ん? 何か女子から視線を感じる気がするけど、気のせいかな?)
仁はクラスメイトの女子達が、こちらの方をチラチラみているような気がした。仁が見ていた女子に視線を向けると、その女子は慌てて視線を逸らしていた。
(あっ、月見里さんだ)
そのようなことが何度かあったところで、音羽が教室に入ってきた。彼女もあまり友人がいない様子で、クラスメイトと挨拶を交わすこともなく、自分の席の方まで移動してきた。
「おはよ。月見里さん」
「えっ? あ、ああ、おはよう」
仁は昨日仲良くなったような気がしたので、音羽に挨拶をすると、一瞬驚いた顔をしてから、素っ気なく挨拶を返し、そのまま席に付いた。
(あれ? 昨日とは別人のような反応だ)
昨日のような調子で挨拶を返してくれると思っていた仁であったが、予想に反し素っ気ない返事であった為、仁は驚いてしまった。
(そう言えば、学校では話しかけないでって、言っていたのを忘れてた。月見里さんって恥ずかしがり屋さんなんだな)
仁は昨日デートした相手が別人だとは気付かず、音羽の態度は恥ずかしがっているだけだと解釈した。




