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第117話 母娘の話し合い(その1)

「兼田君、私ね、アナタのことが好きみたい」


(あー、私ったら雰囲気に流されて、とんでもないことを口走ってしまったわ)


 音羽は、仁の顔が目の前にあり混乱していた。いままでいろいろしてくれたことも重なり、少なからず好意を寄せるようになっていた。その秘めた気持ちを表に出してしまった。


「ありがとう。でもゴメン。実は僕には好きな人がいるんだ」


 真剣な表情で想いを伝えてきた音羽に対し、仁はその気持ちに応えてあげられないことを正直に話した。


「そっか、私、フラれちゃったんだ。アナタとなら家族になれそうなきがしたのに」

「気持ちには応えてあげられないけど、家族にはなれるかもしれないよ」


 音羽は自分が振られたことに気づき、目には涙を浮かべていた。仁もその顔を見て何とかしてあげたいとは思ったが、頼子の顔を思い浮かべると、どうしてあげることもできなかった。


「ただい……ま。えっと、音羽が男の子を家に連れ込んでいるなんて、お邪魔だったかしら?」

「お、お母さん、お、お邪魔じゃないよ。たまたまそこで躓いて転んだところを助けて貰っただけだから」


 そこへ頼子が仕事を終えて帰宅してきた。頼子からは音羽が男を押し倒しているように見え、相手は誰かわからない状態であった。


「仁……君?」


 音羽は慌てて目の涙を拭い、仁の上から離れた。そして遮るものがなくなり、頼子からも相手が仁であったことに気付いた。


「やっぱり、私なんかより若い音羽の方が良かったのね」

「まっ、待って、頼子さん」


 仁と音羽がいい仲になっていると思い込んだ頼子は、反射的に家から出て行こうとした。それに気付いた仁は慌てて頼子の元に駆け寄り、彼女の腕を掴んで離さなかった。


「離してよ。私なんかより音羽と良いことをすればいいのよ」

「だから落ち着いて頼子さん。ちゅっ」

「んんっ」

「ちょ、ちょっと、どういうことよ。兼田君とお母さんがどうしてキスなんてするのよ」


 頼子は仁の手から離れようと暴れたが、それを仁は強引に抱き寄せて唇にキスをした。その一部始終を見せられた音羽は驚いてしまった。


「落ち着いた?」

「ごめんなさい。少し冷静さを失っていたわ」


 仁は頼子が落ち着いたのを見計らってから唇を離した。


「2人とも、話があるわ。そこに座りなさい」

「「はい」」


 2人の様子を見ていて、話しかけても大丈夫だと判断した音羽は、詳しい事情を聞くために、仁と頼子に対してちゃぶ台を囲むように座るように指示を出した。



「で、改めて聞くけど、これはどういうこと?」

「実は、僕と頼子さんはお付き合いをしているんだ」

「そうなの。なかなか言い出せなくてごめんなさい」


 2人の態度を見て、何となく察しが付いていた音羽であったが、仁と頼子は、付き合っていることをこの場で初めて音羽に話した。

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