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第111話 実は母親でした(その9)

「あら、2人とも起きたのね」


 仁と頼子がリビングに入ると、そこには恵子がいて、キッチンで何か作業をしていた。2人に気が付いた彼女は作業の手を止めて話しかけてきた。


「おはよう。母さん、何をしているの?」

「何をって朝食の準備に決まっているわよ。どうせ1人で暮らしていたら、まともに朝食なんて取っていないわよね?」

「うっ」


 恵子は朝食の準備をしていた。日頃から適当に朝食を済ませている仁にとってはありがたいと思ったが、本当のことを言われてしまうと、仁にとってなかなか耳の痛いものであった。


「まあ、これからは頼子がしっかりその辺は見てくれると思うから安心よね。彼女は昔から面倒見が良いところが取り柄なのよ。まあそれが欠点でもあるのだけど」


 今までは母親として息子の朝食を心配していたが、これからは頼もしいパートナーができたことで解決してくれるものだと恵子は思った。


「あっ、そうそう。仁」

「なんだい? 母さん」

「昨夜はお楽しみでしたね。頼子に自分のシャツを着せちゃうなんて、これはオレの物だってアピールしているみたいよ」

「そ、そ、そんなんじゃ」


 恵子は仁に対して揶揄うように言った。


「恵子、朝から自分の息子を揶揄うものじゃないわよ。ところで昨夜の記憶が曖昧なのだけど、私の服を知らない?」


 頼子は恵子の口調から揶揄っているのを理解していたため、会話をしている間は話に入らず、終わったところで本題について尋ねた。


「頼子の服ねぇ。そこのソファーにあるわよ」

「あら、本当だわ」


 頼子の服は意外と簡単に見つかってしまった。リビングソファーの上に無造作に放置されていたので、そこで脱いだままだったようであった。


「私と一緒に寝る? って聞いたら仁君と一緒じゃないとヤダなんて駄々をこねるから、仁の部屋を教えたら服を脱いでの飛んでいったじゃないの」

「頼子さん、そうなの?」

「ど、どうだったかな? 酔っていたし、わ、忘れてしまったわ」


 頼子が下着姿であった理由を恵子から聞かされ、仁は頼子に確認を取った。すると頼子は覚えているのか、覚えていないのかわからないような表情をしながら、恥ずかしそうに忘れたと言い張った。


「仁、頼子、簡単なもので悪いけど、もう少しで朝食の準備が終わるわ」

「あっ、私も手伝わなきゃ」


 恵子が朝食の準備をしていることを思い出した頼子は、慌てて手伝いに入った。



「それにしても頼子って、なかなかお酒が飲めるわね。初めて一緒に飲んだけどビックリしちゃったわ」

「あまり飲む機会が無かったからわらかないけど、そうなのかしら?」


 朝食の準備が終わり、テーブルの上には3人分のトーストとスクランブルエッグに野菜サラダが載せられている皿とコーヒーが用意され、3人で食べ始めていた。そのときに恵子が昨日の頼子の飲みっぷりを感心したように話した。


「まわりは弱い人ばかりで、ここまで楽しくお酒が飲めたのも久しぶりだったわ」

「そ、そうなのね」


 昨日、兼田家で消費されたお酒の金額は、頼子が考えたくないほどのものになっていた。


「ひと晩で、あんなに飲んでしまったら、父さんが悲しむんじゃない?」


 仁は処分するために、部屋の片隅に集められている空になった酒の瓶を見ながら言った。

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