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第1話 それは偶然だった

 僕の名前は兼田仁かねだじん。高校生である。今日も変わらず退屈な授業を受けている。教卓では数学教師がよくわからない数字や記号を板書していた。自慢ではないが僕の成績は赤点ギリギリの教科が多く、親からも勉強しろと何度も言われている。そのようなこともあり、僕は完全に授業から置き去りにされていた。


(授業中ボーッとしていても、この席なら教師に気付かれにくいから楽で良い)


 僕の席は窓際の1番後ろの席であった。そのお陰で教師から1番遠い場所になるため、騒がない限り授業中、声を掛けられることは少なかった。


(ん? 月見里さんどうしたんだろう?)


 ふと視線を前に向けると、前の席に座っている月見里音羽やまなしおとはがモジモジと体を動かしていた。僕は退屈な授業を受けるより、彼女の不思議な動きを観察していた。


「ああっ、くううぅ」


 音羽は何かに耐えているように小さな声を漏らしていた。周りを見ると皆、授業を真面目に受けているようで、彼女の不思議な動きと声に誰も気付いていないようであった。


「だめ、出ちゃう、出ちゃうの」


 音羽の声はだんだん悩ましいものに変わり、僕は思わず彼女を邪な感情を抱きそうになっていた。


 ぷぅ


「はうっ」


 僕の邪な感情は、ある音によって掻き消されてしまった。そう彼女はおならをしてしまったのであった。音羽は恥ずかしそうに声を上げるとモジモジとした動きが止まった。そして、彼女はまわりをキョロキョロと見て、先ほどの音が他の者に聞かれていないか確認しているようであった。


(女の人でもおならをするんだ)


 僕はある種の衝撃を受けていた。女性のおならを聞いたのは母親以外では初めてで、若い女性でもそのようなものが出るという現実を知った。


「ん?」


 ふと視線をあげると音羽が僕を見ていた。彼女の視線に耐えきれず、思わず視線を逸らしてしまった。それを見た彼女の顔は真っ赤になっていた。


「月見里、そっちは黒板ではないぞ」

「すっ、すみません」


 音羽が僕を見ていると言うことは、彼女は後ろを見ている状態であった。数学教師は彼女の姿勢に気が付き名指しで注意した。すると音羽は慌てて前の方を向いた。




「兼田君ちょっといいかな?」


 退屈な授業が終わり、休憩に入ったところで音羽が僕に声を掛けてきた。


「なっ、何かな?」


 僕は女性に話しかけられる経験が少なく、思わず構えてしまった。


「少し話したいことがあるから付き合って」

「わっ、わかったよ」


 音羽が言いたいことは何となく気付いたが、あまり事を荒立てるとまわりの人が注目するため、彼女が教室から出てから少し時間を置いてから席を離れた。

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