表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

願いを叶える為に…①

『本日十三時頃、私立明星学園高等部一年女子生徒が投身自殺しました。ご遺族の方々は「あんなに優しくて明るい子だったのに、如何どうして……。」「相談してくれていれば、死んでしまうなんて事しなくて済んだかも知れないのに…。」と話していました。今年度に入ってまだ一ヶ月ですが、既に、およそ十名の方々が自ら命を絶って……』

点けていたテレビを切り、ソファーの上に寝転んだ。

 僕は死にたい。


 事の発端は幼稚園生だった頃の話だ。

 昔の僕は病弱で、なかなか幼稚園に行けていなかったせいか、ずっと孤立していた。

 そして、何故だかは分からないが、勝手に『何をしても怒らない子』と云うレッテルを貼られてしまい、その日からいじめの標的になってしまった。

 初めていじめられたのは小学校に入学してすぐだった。

誰がいじめを始めたのか、詳しいことは覚えていないが、幼稚園が一緒だった人だったとう事は、まず間違い無いだろう。

 別に最初から酷かったわけでは無い。ただ、陰口を叩かれる程度だった。そんな程度のことも我慢できない僕ではなかった。

だが、事態は変化していき、どんどんエスカレートしていった。

 雑菌と呼ばれたり、ランドセルに汚物をつけられたり、過激な暴言を吐かれたりする日が続いていた。

 それでも僕は我慢して、耐え抜いてきた。幼稚園でも、父さん、母さんにも「口答えしたらダメ。口答えしてしまったら、やってきた奴らと同じになってしまう」と理不尽なことを言われてきたから、当時の僕は、反論もせず、嵐が去るのを待つ植物の様に、じっと耐え続けて来た。

いつかは僕が報われるはずだ、いじめの主犯達は制裁を受けて、きっといじめはなくなる、と自分自身に言い聞かせて、来るはずもない幸せな未来を勝手に想像していた。

でも、そんな奇跡があるはずもなく、中学校に進学しても、いじめは無くなったりなんかしなかった。むしろ、さらに悪化していった。

 給食に配膳中、先生が席を外しているとき、僕のスープに虫の死骸を入れられたこともある。上履きなどの僕の私物を隠されるなんてのは日常茶飯事だった。

 そして、クラスメイトの私物がなくなると勝手に誰かが盗んだとう話になり、根拠もないのに僕が犯人だと決めつけるのがいつもの流れだった。その挙げ句の果てには、騒ぎ出した本人のスクールバックの奥や机の奥から見つかるのがオチだ。

 そんな中、僕に中学生時代唯一の親友ができた。

僕がいじめられていても、それを気にせず話しかけて来てくれた唯一の人。

「このクラスにいる奴らの精神年齢ってみんな小学生くらいだよな」

と言って、僕に明るく笑って話しかけてくれた。

クラスで孤立していた僕たちはすぐに意気投合して仲良くなった。

その友人は速水彰人はやみあきと。僕の生涯唯一の親友だ。


 ある日の体育の授業。その日は長距離走だった。いつも通り、僕と彰人は一緒に並んで走っていた。授業も中盤に入り、3kmを走り切ろうとした頃、ずっと黙って隣を走っていた彰人が開口一番に発したのは「俺さ、もうぐ、死ぬんだ」とう言葉だった。

 僕は衝撃的すぎて声も出ず、その場で立ち止まってしまった。

 唯々目を見開いて彰人を見つめることしかできなかった。

そうして数秒経っただろうか、彰人は少し罰の悪そうな、悪戯めいた表情を見せ、「悪い、冗談だからそんな変な顔すんなよ」と困った様な顔をして笑って見せた。僕は頭の中をぐるぐるしていた感情が一気になくなった様な気がして、ホッとして「なんだ、嘘か。驚かすなよ」と少しおどけて言って見せた。その後は、しばらく他愛のない話をしてからまた無言で並んで走った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ