美味しい食べ物
―あらあら、そんなにがっつかなくても、食事は逃げたりしませんよ。
シスター・イェラが優しく、男の子を諭す。
男の子は言う
―だって、すごくおいしいんだもん。とくにこのお肉!夢みたいだよ!
スープに浮かぶ柔らかな肉に喜びを爆発させる男の子。
無理もない。この子は孤児で、森のなかをさまよっていたところを、たまたまシスターが保護したのだ。
―戦争は暗い影を世の中に落としていた。
徴兵される男達。働き手を失って飢える女子供。
仕方なく、売笑に手を出すものもいた。
それでも足りない。明日の食事が―いや、今日の食事すらありつけない、恐怖。
空腹は人を悲観的にさせる。そう考えた、イェラを始め、修道女達は、とある事を決めた…。
役に立たない者、例えば犯罪を犯した者や、偉そうに振る舞うばかりの役人達から…。
村ではほんの少しづつ、肉が食べられるようになった。
―おかわり、…大丈夫?
男の子の恐る恐るとした声に、現実に引き戻された。
―えぇ、もちろん。
シスター・イェラはにっこりと微笑んだ。
―たくさん、食べて大丈夫よ…。
今夜もシスター達は、協力して〈肉〉を手に入れるべく、頑張るのだった…。