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いつかまた、この花が咲く時に  作者: 月ヶ瀬明。
第一章 『魔女の洗礼』
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第一章27 『不安』


「それじゃあ、出発しますね」


時刻は早朝。薄暗かった世界が陽の光に照らされて、明るくなっていく頃だ。

御者台に乗ったディアナが、連絡口から顔を覗かせて出発の確認をしてくる。


「───あぁ、分かった」


そう俯きながら返事するルイは、何処か元気なさげだった。こうなった原因を軽く説明しよう。


事の顛末は早朝に遡る。

朝早く起きたディアナは、シエナが部屋の中にいないことに気が付き、辺りを捜索すると、ルイの部屋で一緒に寝ているシエナの姿を発見したのだった。

そこからは修羅場だった。ルイは呑気にスヤスヤ寝ていると、突然、強引に体を起こされたのだ。突然の出来事に驚愕し、目を大きく見開かせると、そこにはルイの胸倉を掴んでいるディアナの姿があった。


明らかにディアナは憤慨している様子であり、眉間に皺を見せて、ルイを貫く鋭い眼光は、怒りで赤く染まっていた。


「ルイ、本気で死にたいようですね」


そして、開口一番。ディアナは魂が恐怖するほど恐ろしい声を発し、腰に下げている鞘から剣を取り出して、ルイの喉元に突きつけた。


「いや、これは違くて───」


「言い訳しようとしないでください。醜いですよ」


ルイは必死の弁解をしようとするが、直ぐにその訴えは跳ね除けられてしまう。 そして終いには、


「最期に言い残すことはありますか」


と、ディアナに喉元を剣で突きつけられながら、最期の言葉を求めてくる。彼女は手元を狂わせないように、再度グリップを強く握りしめ、いよいよルイの処刑が開始されようとしている。


「これは冤罪だぁぁぁぁぁぁあ!」


ルイは最後の最後まで冤罪だと強く訴えるが、ディアナは全くもって聞く耳を持たなかった。そして、振り上げられた剣が、ルイの喉元を貫いて───、


「ディアナちゃん駄目だよ?今回ばかりはルイくんは悪くないんだから」


ルイが処刑される直前、シエナは眠そうに瞼を擦りながら起き上がり、冤罪を晴らそうと、ルイは悪くないとディアナに訴えかける。


「シエナちゃん大丈夫ですか?」


すると、ディアナは手元を止めて、シエナの方を向き、彼女の安否を確認する。それに、シエナは「大丈夫だから」と微笑を浮かべながら言い、


「ねぇ、ディアナちゃん。先走った行動しちゃだめだよ?これにはちゃんとした理由があるんだから」


シエナは剣を握っているディアナの手を優しく包み込んで、憤慨しているディアナを窘める。


「シエナちゃん、ごめんなさい。いてもたってもいられなくてつい…」


シエナに窘められたディアナは、素直に自身の行為を反省し、申し訳なさそうにして謝罪の言葉を述べた。

そして、強く掴んでいたルイの胸倉をようやく離して、剣を鞘に収めた。


「───で、シエナちゃん。なんでルイなんかと一緒に寝てたんですか?」


落ち着いたところで、ディアナは何故ルイと同じベッドで寝ていたのかを問う。ルイなんかという部分が少々気に触るが、下手に追求すると痛い目にあうので、辞めておく事にする。

そんな問いを受けたシエナは、ルイの顔をチラりと見て、


「だって、兵士さんと一緒だったら安心でしょ?」


シエナはルイが兵士であるからと言う理由で、ディアナを納得させようとする。傍から見れば、ツッコミどころ満載だと思うが、


「そうですか、シエナちゃんがそう言うんだったら、それで納得します」


そう簡単に納得してしまうのだった。毎度思うが、シエナの言うことなら簡単に受け入れてしまうディアナの事が全く理解出来ない。だが、そのおかげでルイは処刑されずに済んだのだが。


そんな訳で、時間が経った今でも朝の一悶着のせいで、ルイは全く元気がないのだ。あとなかなか寝付けなかったので、単純に睡眠不足だ。眠気は殆ど残っていないが身体の疲労が残っているように感じる。


「ルイくん元気ないけど…どうしちゃったの?大丈夫?」


と、こちらの顔を覗きながら、心配げに声をかけてくるのは、案の定ルイの隣に座っているシエナだ。


「あぁ、全然大丈夫じゃない」


シエナが傍にいるせいで、気持ちが落ち着かず、全然寝付けなかった記憶がある。

だが、一応ルイも寝付けはしたので、身体が休まったはずなのだが、朝の一悶着で、回復した分の体力が全て持っていかれてしまった。


「全く元気じゃないし、ていうかもう疲れてるよ…」


ルイは俯きながらそう言うと、シエナは「任せて」と自信満々に言い張ると、その場から立ち上がり、ルイの正面に立った。

そして、シエナは掌をこちらに向けると、


「スーパーハイパーウルトラミラクルアルティメット元気になーれー!」


「───何言ってんだ?」


恐らく、シエナは詠唱しているのだと思うが、一体何を言っているのだろうか。

ルイはそう冷静に返事すると、シエナは肩を大きく跳ねさせて「えぇっ!?」と心底驚いたように叫んで、


「何故だ…何故効かぬ…私が使えることが出来る最強の魔法が…」


シエナは魔法を使用したのに、ルイに何も変化が生じていないことを信じられていない様子だった。

実際、ルイの身体には何の変化も起きていない。そもそも、あんな変梃な詠唱で魔法を使用出来るはずがないのだ。

身を案じてくれたことに対しての感謝ぐらいはしておこうか。そう思い、ルイは絶望に苛まれているシエナに目をやり、


「まぁ…ありがとう。シエナのおかげでちょっとは元気になったよ」


嘘なのではなく、ルイが元気になったのは間違いない。

ルイを元気づけようと頑張っているシエナの姿を見るだけで、なんだか微笑ましく思えてきて、自然と元気が湧いて出てくる。


「まぁまぁ、こんなもんよ!だからシエナちゃんに任せた甲斐があったでしょ」


ルイは率直に感謝を伝えると、シエナは鼻を高くして、自信満々にそう応えた。

少しでも褒めたら直ぐに調子に乗るやつだ。そんな調子に乗っているシエナに、ルイは「はいはい」と適当に相槌を打った。


そんな様子のルイを見て、シエナは一仕事を終えたと言わんばかりに、非常に満足気な顔を見せた。

そして、シエナは再び荷台の席に腰掛けた。言わなくても分かると思うが、当然ルイの隣だ。


「それにしても暇だね。そこら辺に魔獣とかいないかな?」


「縁起でもないこと言うな。本当に魔獣がいたらどうするんだよ」


シエナほどの実力があれば、魔獣など屁でもないのだろうが、ルイにとっては恐怖極まりない。

多少訓練をした兵士と言えども、一人であれば、魔獣を倒せる可能性は低い。そもそも、魔獣が本当にいたとすれば、誰が対処するのだろうか。大体予想は付くが───、


「ここには女の子二人と兵士さんがいるからね。そりゃあ、兵士さんに守ってもらわなくちゃ」


「だろうな!」


ルイがそう叫んだ瞬間、連絡口が乱暴に開かれる。何事かと思い、連絡口の方を凝視しているのもつかの間、ナイフが凄まじい速度を持ち合わせて、荷台へと飛んでくる。


「──────っ!?」


そのナイフは、ルイの顔を間近で通過していき、荷台の壁に深く突き刺さった。あまりの出来事にルイは呆然としていると、


「うるさいです」


不機嫌そうな低い声で、連絡口からこちらを覗くディアナ。彼女は顔を顰めており、お怒りモードといったところか。

ディアナはそう一言だけ言い捨てて、静かに連絡口を閉めた。


「また怒られちゃったね」


微かに笑みを浮かべながらシエナはそう口にする。

これは二度目の出来事だ。前の時も、ルイがシエナの発言に反応して叫ぶと、連絡口からナイフが投げられたのだ。完全に忘れてしまっていた。


「はぁ……」


ディアナには恐怖心しか抱いていない。何故荷台で叫んだだけで、ルイは殺されそうにならなければならないのか。というか、シエナもルイと同じく叫んでいるはずなのに、何故かお咎めが一切ないのだ。

そのことを訴えようにも、最初から無駄なことだと分かっている。

あまりの不公平さに不服を感じて、ルイは大きなため息を吐くと、


「それにしてもさ、ルイくん。昨日のことなんだどさ」


「ん、何だよ?」


「昨日の夜、ちゃんと私の事守ってくれた?」


「あぁ、昨日の夜か…」


そういえば、シエナは夜中に襲われそうだと言って、ルイと一緒に寝るなどと言い出したのだ。

流石に女性と同じベットで寝るのは気恥しいので、ルイはその申し出を断ったが、上手いこと言いくるめられてしまい、シエナと一緒に寝る羽目になってしまったのだ。


これが全ての要因だ。この出来事さえ無ければ、あんな怖い思いをせ体験ずに済んだはずなのに。


「あぁ、ちゃんと守ってやったよ。別になんにもなかったけどな」


思い返してみれば、寝ているシエナを守るのはこれで二回目だ。

シエナと共に森の中へ転移した時も、ルイは気絶しているシエナを守るために、彼女の傍にずっと居て、周囲の状況を警戒していた。どちらも何事も起きなかったのが幸いだ。


「そう、何も無かったのなら良かった。夜中に私のことを守ってくれてありがとね、ルイくん」


「あぁ」


そう笑顔でシエナに感謝の言葉を述べられ、ルイは頭を掻きながらそっぽを向き、恥ずかしそうに返事をした。


何も無かった、というのは少々語弊がある。何か夜中に危険な出来事が発生したという訳では無い。

深夜、シエナは泣いていたのだ。こうして普段は元気で明るくて、常に笑顔であるシエナに、あのような弱い一面があるのは知らなかった。

あの時のシエナは、ただの弱々しい女の子としか思えなかった。どうして、シエナは泣いていたのだろうか。


「あのさ…シエナ。俺も力になれることがあったら協力するからさ…」


今までルイはシエナに散々助けられてきたので、彼女に不安や心配などがあるのならば、今度はルイが助けてあげる番になりたい。

夜中に悲しく泣いているシエナの姿は、もう二度と見たくない。彼女には笑顔でいてほしい。

そんなことを思い、ルイは恥かしさを押し殺して、そう口にした。突然ルイが畏まった口調で話し始めたので、シエナは顔をきょとんとさせていた。そんな彼女を無視してルイは続ける。


「その……まぁ………、頼ってくれていいんだぞ?」


一体ルイは何を言っているのだろうか。人に頼られるほどの人間ではないのに、シエナに自分を頼れと言ってしまった。

羞恥心を味わうが、決して後悔はしていない。これだけはどうしてもシエナに言っておきたかった。

数秒の沈黙の後、シエナは微笑を浮かべながらルイの顔を覗いて、


「急にどうしたの?今のルイくんの言葉、凄いかっこいいじゃん」


「───うるせぇ」


気恥しさに耐えきれず、ルイはそう言い捨て、そっぽを向いてしまった。そんなルイを様子を見て、シエナは再び微笑を浮かべて、


「分かったよ。じゃあ困ったことが起きたら、直ぐにルイくんに頼るね」


「あぁそうしてくれ。でも、魔獣を相手にしろって言うんならやめてくれ。怖すぎるから」


「───急に頼りなくなるじゃん」


あんな怖い思いをするのは二度と御免だ。シエナに白けた目を向けられるが、ルイは心を無にして何とか耐える。すると、シエナは「けど」と前置きして、


「ルイくん。ありがとうね」


「あぁ…」


そうシエナに笑顔で感謝を伝えられ、ルイは頬を赤らめながらそう小さく呟くと、シエナはルイの赤くなった頬を見て、


「どうしたの?頬赤くなってるじゃん」


「気のせいだろ」


シエナはルイの赤くなった頬を興味津々に見詰めている。どれだけ自身に落ち着けと念じても、ルイの頬は赤くなったままだ。

適当に誤魔化そうとするが、シエナの興味は収まることはなく、ルイの頬に手を伸ばしてきて、


「えいっ!」


「─────ちょっ!」


ルイの頬を指先で軽く突いてきた。が、突然の出来事にルイは驚愕し、息を詰まらせて、肩を大きく跳ねさせた。

そんなルイの反応を見て、シエナはとても面白かったのだろうか。


「えいっ!えいっ!えいっ!」


一回だけでは収まらず、シエナは悪戯をしている子供のような笑みを浮かべて、変な掛け声を出しながらルイの頬をちょんちょんと突いてくる。子供に悪戯されている気分だ。

シエナの指の先端が妙にこそばゆく、早く辞めて欲しい。無理やり辞めさせるのも手だが、シエナの体に触るのは些か躊躇われる。

そして何より一番問題なのは距離が近いことだ。このせいで余計に頬が赤くなってしまう。


「えいっ!えいっ!えいっ!」


「ちょっシエナ、ほんとにやめろっ!」


「もう、仕方がないなぁ。特別だよ?」


そうルイが必死の抵抗を見せていると、シエナはそう言って、渋々その手を止めてくれた。その事に一安心して、ルイは大きく息を吐くと、


「ルイくん元気戻ったじゃん」


「無理やり戻されたんだよ…」


そうルイが不満を吐き捨てると、シエナは微笑を浮かべてから「じゃあさ」と話を切り出して、


「元気が戻ったルイくんに聞くけどさ、この先不安?」


「この先か…」


恐らくだがシエナはルイのことを気遣って、先に元気づけてからこの話題を出してくれたのだろう。確かに、元気ではない時にそんな話題を持ち出されても気が滅入る。

その気遣いに感謝しつつ、ルイは今まで遠ざけてきた先のことについて考えることにした。


「不安…と言えば…まぁ、不安だな…。っていうか凄い不安だ…うん」


ルイは顔を俯かせて、途中で言葉を詰まらせながらもそう応える。


不安だ。不安で、不安で仕方がない。今まで遠ざけてきたが、逃げずに向き合ってみると、不安で押し潰されそうになる。


みんな生きているのだろうか。ルイたちがリーカナに到着した時、その真実を知ることになる。ルイの知っている人が死んでいる可能性もあるのだ。もしそうなったら、果たしてルイはその現実を受け止め切れるのだろうか。


「怖いな…」


ルイは自然とそう小さく呟いていた。

今現在、ルイは何も見ていないので、リーカナの生存者は不明だ。

なので、到着しない事には、ルイの大切な人たちが生きているかも死んでいるかも分からない。シュレディンガーの猫と言うやつだ。(言ってみたかっただけ)

それを確かめに行くために、こうしてルイたちは襲撃されたリーカナに向かっている訳だが、直前になって怖気付いてしまっている。


傍から見れば、今更何を言っているのだと思われるが、ルイは真実を知るのが怖い。怖くて、怖くて、たまらない。

自分のこういうところが嫌いだ。何事にも逃げてばかりだ。シエナに現実逃避をするなと言っておいて何なのだが、ルイも現実逃避をしようとしている。


もうこのまま、真実から逃げてもいいのではないのか。ずっと理想を抱いたままでいいのではないのか。

本気でそう思えてきて───、


「ルイくん」


ふと、親愛の込めた声音で名前を呼ばれた。ルイの名前を呼んだのはシエナだ。ルイは隣にいる彼女の方を見ると、彼女はニッコリと笑ってから続けて───、


「私が言うのもあれだけどさ…やっぱり、目の前の出来事から逃げちゃいけないと思うんだよね。嫌な事から逃げたいよね。全部放ったらかしにして、逃げ出したい時もあるよね。だけど、残酷なことに、逃げちゃったら何も変わらないんだよ」


シエナは自身の思い出を遡るため、その鮮やかな薔薇色の瞳で、何処か遠くの方を見ているような気がした。


「ルイくんの怖がっていることは、ちゃんと向き合わなきゃ駄目だと思う。分かるよ。怖い気持ちは凄い分かる。自分の大切な人の安否を確認しにいくのは、凄い怖いし、勇気のいることだと思う。もし、その大切な人がもうこの世に居なかったらって事を知っちゃうと、体の水分が全部無くなるまで泣いちゃう自信があるな。けど、何回も言うけど絶対に逃げちゃ駄目。逃げちゃったら、いつまで経っても弱い自分のままだから。人ってさ、変わっていかないと生きていけないんだよ?」


そうシエナは言い切ったあと、ルイの両手をその温かい手でそっと包み込んで、


「私たちに出来ることはみんなを信じることだから、ルイくんもみんなが生きていることを信じてあげよ?」


「───そうだな」


ルイが今すべきことは、みんなが生きていると信じることだ。

そして、もし望まない結果であったとしても、ルイはその結果から逃げずに、しっかりと受け止めなければならない。

リーカナにいた人たちの方がもっと怖い思いをしているはずだ。ここでルイが怖気付いているのはおかしい。


シエナに諭されたおかげで、自分の愚かさに気がつくことが出来た。そう、シエナのおかげだ。


「あの…シエナ。ほんと毎回ありがとう」


何度ルイはシエナの助けを貰っているのだろうか。本当に感謝してもし切れないぐらい助けて貰っている。

ルイから感謝の言葉を述べられたシエナは、随分と誇らしげに鼻を高くして、


「まぁ、シエナちゃんにかかれば何事も余裕だね」


「あぁ、うん。ありがとう……それよりさ」


ルイは言葉を詰まらせながら気まずそうに話題を切り替えようとする。

それにシエナは「どうしたの?」と小首を傾げて疑問を呈すると、ルイは手元に視線を移して、


「あの、手が…」


ルイの両手はシエナの温かい手で包み込まれている。

ルイの手にはほんのりと熱が篭もり、手と手が擦れ合う感覚が妙にこそばゆくて仕方がない。先ほどまで何とも思っていなかったのだが、意識してみると凄い恥ずかしい。

苦痛という訳では無いが、このまま手を包み込まれているままだとルイの心が耐えきれないので、とにかく早く辞めて欲しい。


しかし、手が触れ合っているのが恥ずかしいとはとても言い出しずらいので、ルイはたどたどしい口調でそう話を切り出すと、シエナは何か察したように手を見て、


「辞めて欲しい?」


「あぁ、早く離してくれ」


「絶対嫌だ!」


シエナはそう言うと、ルイの手を離さないように、握潰さんとした勢いで手に力を込めてくる。

手から骨が軋むような音が聞こえて、ルイはあまりの痛さに声を漏らした。


「ちょっ、まじで。痛い、ちょっ、まじで、まじで、痛い」


ルイは痛みに悶え苦しむが、シエナは全く力を抜いてくれない。寧ろ力を徐々に強めているような気がする。

シエナは痛がるルイの反応を完全に面白がっており、めちゃくちゃ笑っていた。


思わずルイは痛みに叫ぶが、ディアナを怒らせないようにするため、声を押し殺していた。そんな苦痛の時間がしばらく続いた。









眼前、城壁が尽く破壊されており、襲撃の爪痕を残している七大都市の一つ。城郭都市リーカナが見えたのはしばらくしての頃だった。

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