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いつかまた、この花が咲く時に  作者: 月ヶ瀬明。
第一章 『魔女の洗礼』
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第一章26話 『──泣いていた』


「────疲れた」


あの後、ルイは疲労で殆ど食欲も無かったので、主人と軽く世間話をしながら、食事を適当に詰め込んで、水浴びをして体を大雑把に綺麗にしたあと、こうして布団の中に潜って、身体を休めようとしていた。

疲労が重なり合って、今すぐにでも寝付けそうな勢いだ。


因みに、ルイが選んだ部屋は角部屋だ。特に理由は無く、唯一ある理由と言えば、何となくといったところか。

シエナとディアナは二人で一緒の部屋に泊まっている。それだけなら別にどうも思わないが、悲しいことに、二人の部屋も角部屋なのだ。


何故だか分からないが、ルイが角部屋に泊まると言った瞬間、ディアナも角部屋に泊まるの言い出したからだ。悲しいと言う他ない。


「─────眠いな…」


ベットの上にい続けると、身体が沈んでいくような感覚がする。瞼も非常に重く、今すぐにでも寝付けそうな勢いだ。

眠たすぎて、頭が全然働かない。とにかく眠気だけに苛まれている。

このままルイは、ベットに身体を預けて、深い眠りについていき───、


「───ルイくん起きてる?」


刹那、部屋の戸が軽く叩かれ、扉が軋む音を鳴らしながら、ゆっくりと開かれた。

眠気を消し去るために、ルイは目を強く擦りながら起き上がり、扉の方を見ると、そこには半身のみを部屋に入れて、こちらを伺うシエナの姿があった。

彼女はルイが起きている事が分かると「良かった」と嬉しそうに笑みを零しながら言い、そのまま部屋の中に入り、扉を閉めた。


「入室許可なんて出してねぇぞ」


「まぁまぁ、いいからいいから」


何が良いのか分からないが、シエナはそう言いながらこちらへ歩み寄ってくる。

いつの間にか彼女の服装は、薄手の寝巻き姿に変わっていた。寝巻きは黒色を基調とした物であり、相変わらず全身が黒で包まれているが、彼女にはその色が一番似合うような気がした。


「ディアナはどうしたんだよ」


「ディアナちゃんならもう寝ちゃったよ」


「そうか」


ディアナは馬車の運転を村に到着するまで継続していたので、さぞ疲れが溜まっているだろう。明日の事もあるので、彼女にはしっかり休息してもらいたい。

そんな事を思っていると、こちらへ歩み寄ってきたシエナが、寝台の上に座るルイの隣に同じく座った。

何の躊躇もなく、当たり前かのようにルイの隣に座るシエナに、気まずさと羞恥心を感じて、ルイはそっぽを向いた。


「第一、俺のいる部屋にズカズカと入り込んでくるなよ。何かしてたらどうするんだよ」


「何かしてたらって、何をしてるの?」


「──────言わすな」


羞恥心を紛らわそうとして吐き捨てた言葉が、逆に羞恥心を向上させてしまう結果になってしまい、ルイは俯いてそう静かに呟いた。


「ふーーん」


視界の端に、ジト目でこちらを見据えているシエナが見えた。明らかに何か分かっている様子だったが、それ以上追求してこなかったのが、せめてもの救いだった。

ルイは羞恥心を振り切るように首を横に振って、


「────で、何しに来たんだよ」


「ちょっと暇でさ」


「あぁ、そう。なら早く寝ることをおすすめするよ。俺も今すげぇ眠いからな、じゃあ俺は寝るから、おやすみー」


既に眠気が極限まで達していたので、シエナと会話する事が面倒くさかった。

大事な話ならまだしも、暇だからというくだらない理由だった為、ルイは適当に会話を済ませてから、布団に潜り込んで、そのまま寝ようと試みたのだが、


「起きろーーーーー!」


シエナに肩を掴まれて、寝転んでいた体を無理やり起こされる。そして、ルイの肩をブンブンと振り回し、眠るのを全力で阻止してくる。


無理やり体を起こされたルイは、若干の苛立ちを感じながらも、仕方がなく起き上がることにした。


「なんだよ…」


また尋問の開始だろうか。ならば、現在は極限まで眠気が迫っており、馬車の時よりも苦痛を味わうと予想される。

出来るだけ早く話を済ませようと、ルイは面倒くさげにシエナに視線を合わせてからそう言うと、彼女は微笑を浮かべて、


「ルイくんさ、私に好きな人のタイプを訊いたよね?だったらルイくんの好きな人のタイプが訊きたいなぁってね?」


「──────ちょっと…それは…」


人に訊いておいて何なのだが、いざ自分が応えるとなると非常に躊躇われる。

それも、隣にはシエナがいるので余計に応えずらい。ルイの好きな女性のタイプは、ほぼシエナと合致している。唯一違うものと言えば、その性格にある。


ルイは落ち着いた雰囲気の女性が好きなので、シエナの明るすぎる性格とは真逆に位置している。それが、シエナに対しての感情を曖昧にさせている最大の要因だ。

シエナが落ち着いた性格だったら、多分、否、絶対好きになっていただろう。


問いに応えるのを躊躇っているシエナを見て、シエナは痺れを切らせたのか、ルイに距離を詰めて、


「私に訊いておいて自分は応えないってなんだ!おかしいだろ!」


「──────ぅ」


真っ向からド正論をぶつけられ、ルイは唸り声を上げた。

シエナの言う通りだ。ルイがこの問いに応えないのは不公平過ぎる。彼女の不満を買ってしまうのも当然だ。だが、やはり応えるのが躊躇われる。


このまま問いから逃げるのも手だが、絶対にシエナは逃がしてくれないだろう。

この間にも、恐らく魔女に匹敵するであろう圧が向けられている。何ともそれが恐ろしくて堪らない。故に、


「はぁ…分かったよ…」


吹っ切れてしまったルイは、ため息を吐きながらも、その問いに応える事にした。


「えーと、俺の好きな女性のタイプは…あれだ…。好きになった人だ」


「好きになった人…?」


「うん、自分が好きになった人なら、どんな人でもその人がタイプになるかな」


上手く言い逃れたのではないだろうか。隣にいるシエナと、ルイの好きな女性をタイプは殆ど合致しているため、言うのはとても気恥しい。なので、このような曖昧な応えになってしまったのだ。


「へぇー。そう、好きになった人がタイプだ…」


「───なんだよ」


「別にぃ…?」


シエナは訝しげな目を向けながらそう言うので、ルイはその事について問うが、シエナは応えをはぐらかした。

何故か顔に微笑を浮かべているのが非常に気になるが、納得してくれるのならそれでいい。

無事に危機を回避出来た事に、ルイは安堵して大きく息を吐いた。


「もう、終わりでいいよな…?」


これ以上シエナに追求され続けると、ルイが精神的に堪えてしまうので、確認のために恐る恐るそう問うと───、


「私はこれで別にいいけど…ルイくんは何か私に聞きたいことってあるんじゃなかったっけ?」


「え?あ、あぁ…そうだな」


そうシエナに言われた時、ルイは先程聞きそびれた事柄を思い出した。あの時は疲れていて後回しにしていたが、いま機会が設けられたので、改めてシエナに訊く事にした。


「なんでシエナは、理由もないのに魔女がいるって断定出来るんだ?」


シエナは真剣な物言いで、魔女の存在を断定したのだ。だが、理由も特に何もないらしい。

その矛盾を解消しようと、ルイは再びシエナに問うと、彼女は片目をつむり、指を口の前に当てて、


「ひ・み・つ!」


「結局かよ!?」


自分から言い出したので、流石に応えてくれると思ったのだが、その期待は直ぐに打ち砕かれた。

結局、シエナに対して抱いた疑問を解消する事は殆ど出来ていない。謎多き少女と言ったところか。

ルイはため息を吐いてくら、横目でシエナを見て、


「応えてくれないんだったら自分で言うなよ」


そうルイは愚痴を漏らすと、シエナは「ごめんごめん」と笑いながら謝罪した。

そして、何故かシエナはルイに少し距離を詰めてきて、


「そんなに知りたいの?」


「───まぁ、そうだな」


シエナの異常な距離も詰め方に、自然とルイの頬は赤く染まっていった。

それを見てシエナは、口に手を当てながら含み笑いをして、


「そんなにシエナちゃんの事が知りたいんだったら、別にいいよ?」


「なんか話の路線が微妙にズレてる気がするけど…」


今ルイが知りたいのは、魔女の話なのだが、他にもシエナの事について色々知りたいことがあるので、ルイは特に言い返すことはせず、受け入れる事にした。


「で、教えてくれよ」


気を取り直して、再度シエナに問いを投げかける。すると、シエナはルイの顔を覗いて、片目をつむりながらそう言った。


「まぁ、ルイくんがそこまで言うなら、いつか機会があったら教えてあげてもいいんだよ?」


「それ何回目だよ…」


何度も耳にした台詞だ。シエナはいつか教えると何度も明言しているが、その明確な時期は分からず、いつまで経っても教えてないままだ。

本当にシエナの秘密を教えてもらう日は来るのだろうか。そんな事を頭の中で思っていると───、


「大丈夫、ルイくんには絶対話すから」


ふと、シエナの甘い声音がルイの鼓膜を打った。先程と同じように、彼女は真剣な物言いだった。

だが、何故かは分からないが、そう小さく呟かれた言葉には、あまりにも深い執念と慈しみが込められているように感じられた。


「わかったよ。だけど、絶対に話せよ?シエナに訊きたい事山ほどあるんだからな?」


「受けて立ってやるぞ。だけど、ルイくんにも訊きたい事が山ほどあるから」


「おいおい嘘だろ…?あれだけ馬車の中で訊いておいてまだあんのかよ。もう質問攻めは辞めてくれよ…」


「嫌だね。ルイくんが苦しんでたり困ってるところ見るの好きだから」


「くそドSじゃねぇかよ…」


そうルイが呟くと、暫しの沈黙が流れた。別にどうってことないただの沈黙だ。だけど、その沈黙が何だかおかしくて。


自然と笑いが込み上げてきた。それはシエナも同じだったようで、シエナも笑っていた。

互いに暫く笑いあった後、シエナは息を吐いて、


「私もそろそろ寝ようかな。明日の朝も早いし」


「だな、明日の備えておかなくちゃ行けないからな」


「だね」


そう軽く返事したあと、シエナは寝台から立ち上がり、そのままディアナのいる同部屋に戻っていくと思われたが、


「いいや、ここで」


「───え?」


そう言って、シエナは寝台のある方へと振り向いた。呆然としているルイの事はお構いなしに、そのままシエナはベットに横たわり、布団の中に潜り込んだ。


「え?何してんの?シエナの部屋はここじゃないよ」


「そうだけどさ、あそこの部屋まで行くの遠いから時間かかるし、歩くのめんどくさいです」


なんと言う怠けぶりだ。確かに、角部屋同士なので多少の距離はある。だが、歩けば三十秒も掛からないほどの距離だ。それをシエナは遠いと言っている。

おまけに、歩くのが面倒臭いと言って、ルイのベッドを占領してきたのだ。


「はぁ…分かったよ」


ルイは大きくため息を吐きながらも、渋々了承した。

ベッドを占領されても問題はない。主人の話によると、この宿にはルイたち以外の客は来ていないので、残りの部屋は全て空き部屋なのだ。なので、ルイは他の部屋に行ってしまえばいい話なのだ。

故に、ルイは別室に向かおうと、その場から立ち上がった。すると───、


「ルイくんどこ行くの?」


そう訊いてくるのは、布団から顔だけを出してこちらを伺うシエナだ。


「どこ行くって、シエナが俺のベッドを占領したから、隣の部屋に行って寝るんだよ」


「───待って」


ルイも早く寝たかったので、適当な返事をしつつ、そのまま部屋を出ていこうと歩き出したのだが、突如シエナに静止される。

特に静止される理由も無いはずだが。そんなことを思いながら、ルイは「何?」と首だけを振り向いてそう言う。

すると、シエナは微笑を浮かべて───、


「一緒に寝よ?」


「───え?」


シエナの唐突な意味不明な発言に、ルイは首だけではなく、全身を振り向かせた。何を言っているのかさっぱり分からない。脳が理解不能な極地に追い込まれて、ルイはその場で立ち尽くしていると、


「だから、一緒に寝よ?」


再度シエナはルイに同衾を求めてくる。脳の処理が一向に追いつかず、尚もルイはその場で立ち尽くしていた。

同衾するまでの仲に至った記憶はない。夫婦でもあるまいし、出会ったばかりのルイにそう言ってくるのは謎だ。


「なんでシエナと一緒に寝ないといけないんだよ…」


ルイは赤らめた頬を指で掻きながらそう言い返した。シエナと一緒に寝れるのは嬉しいこと極まりないのだが、やはり恥ずかしい。

というか、こんな事を平気で言ってくるシエナには、恥ずかしさという物がないのだろうか。


「だって、夜中に襲われちゃうかもしれないじゃん。だからルイくんに守っててほしい」


ルイの問いを受けたシエナは淡々と理由も説明するが、尚も理解不能のままだ。そもそも───、


「夜中に襲われるかもしれないって、怖いなら扉の鍵掛けとけばいい話だろ。あと、なんで俺に頼むんだよ。俺じゃなくてディアナに頼めよ。そっちの方が安心だろ」


「ディアナちゃんは駄目なの!ルイくん兵士でしょ?だったら、シエナちゃんが夜中に襲われる可能性もあるんだから、しっかり守ってよね?」


「は…はぁ…」


ディアナもそうだが、彼女たちから兵士という言葉を乱用されている気がする。シエナが夜中に襲われる可能性も少なからずは存在している。だが、部屋を施錠しておけばいい話だ。寧ろ、ルイに襲われる可能性の方が高い。勿論、そんな気は微塵もないが。

シエナはそんな心配はしていないのだろうか。だとしたら何故だ。ルイはそこまで信頼に値するのか。


「私の近くにいないといざって言う時守れないでしょ?だから早くこっち来てー」


「───分かったよ…もう…」


変な理屈を述べつつ、同衾を急かしてくるシエナに、これ以上話し続けてもキリがないと理解したルイは、渋々ながらも了承する事にした。

それ以外にも、単純にシエナと添い寝したい気持ちもあるにはあるのだが。


ルイは気恥しさに頭を掻きながら、シエナの寝ているベッドの前へと辿り着く。

そして、ベットの横にある小さな机の上に置かれている灯りを消して、若干躊躇しながらも、布団の中へと入り込んだ。

枕は最初から二つ用意されており、寝台も普通のよりかは大きいので、二人が寝ても十分だった。


ルイの隣にはシエナが寝ている。シエナの存在感が非常に大きく、布団の中と言うのに居心地が悪すぎる。

ふと思ったのだが、この状況を俯瞰して見ると、まるでルイたちは───、


「なんか…夫婦みたいだね」


「─────、──────。だよな」


どうやらシエナも全く同じく事を考えていたらしい。それにルイは照れくさいながらも共感すると、シエナは微笑を浮かべて、


「おやすみ」


「──────おやすみ」


そう寝る前の挨拶を交わしあってから、ルイは瞼を閉じた。



ღ ღ ღ



───寝れない。寝れるはずがない。寝れるわけがない。


先程から全力目を瞑って、何も考えずにひたすら寝ようと試みているのだが、一向に寝れる気配がない。

あの極限まで達していた眠気はどこに行ったのやら。今となっては愛おしい存在だ。


こうしてルイは全力で寝ようと試みているのに、隣にいるシエナは早いうちに寝てしまった。非常に腹が立つ。


寝れない理由を探ってみるまでもない。紛れもなく隣で寝ているシエナのせいだ。彼女が傍にいるせいで気持ちが落ち着かず、安心して眠ることが出来ない。

チラりと隣を見ていると、シエナはスヤスヤと寝息を立てて眠り続けている。益々腹が立ってきた。


どうすれば寝られるのだろうか。そもそも、ルイが寝れないのはシエナのせいだ。彼女が隣で寝ているのか原因なのだ。

この状況を打開する方法を考えると、その答えは直ぐに思い浮かんだ。


つまり、隣にシエナがいなければいい話なのだ。なので、単純にこのベッドから抜け出してしまえばいい。

寝床は占領されているので、本来なら床で寝る以外選択肢はないのだが、幸いなことに、この宿にはルイたち以外の客は来ていないらしい。二部屋以外は全て空き部屋なので、勝手に部屋移動しても問題ないだろう。

もしバレたとしても、恐らく主人なら許してくれるだろう。


早くこうするべきだったと内心後悔しつつ、ルイは隣の部屋に向かおうと体を起き上がらせ───、


「─────っ」


刹那、体に軽い衝撃が伝わり、ルイは息を呑んだ。

何事かと思い、ルイは衝撃が加わった要因をすぐさま探すと、その要因はシエナのものだった。

彼女は寝返りを打って、ルイの体に衝突したのだろう。

にしても距離が近い。ルイとシエナの体ほぼ密着している状態だ。彼女の熱が肌から伝わり、自然とルイの頬は赤くなっていた。


動きたいのは山々だが、こうして密着されては動くようにも動けない。無理やり体を動かせたら起こしてしまう可能性もある。


「─────?」


何故だか分からないが、妙に懐かしいような感覚がした。

こうして、シエナと添い寝するのは初めてだ。勿論、他の女性とも一度たりともしていない。

だが、何故か懐かしいような感覚がするのだ。まるで、いつかあった出来事かのような。


そんな妙な感覚に、ルイは違和感を覚えていると、


「──────?」


静寂を保っていた室内に、突然何者かの声が聞こえた。

声と言っても、それは言葉として認識出来ないものだ。そして、その声はルイの耳元付近で聞こえたような気がした。


再度、声のようなものが聞こえた。

耳元で聞こえたので、てっきりシエナが寝言か何かを言っているのだと思ったが、これは寝言ではない。間違いなく嗚咽だ。



────シエナはルイの胸に顔を埋めて泣いていた。泣いていた。



徐々に嗚咽が大きくなってくる。シエナが寝ながら泣いているのだと、はっきり理解出来る。


静かな暗い部屋の中に、シエナの泣き声が響き渡る。

いつも明るくて元気なシエナの姿は何処にもなく、今はルイの胸に顔を埋めて、嗚咽を漏らしながら泣いている。

なんて弱々しい泣き声なのだろうか。今のシエナは、ただの弱々しい少女にしか思えなかった。


そんな弱々しい姿の少女を、ルイは守ってあげたくて。


胸に顔を埋めて泣き続けるシエナの頭を、ルイは優しく撫でてあげた。

怖い夢でも見ているのだろうか。泣いている理由は分からないが、とにかく悪いは泣き続けるシエナの心を、少しでも安心させてあげようと思い、優しく頭を撫で続けた。


泣いて、泣いて、泣き続けて。やがて、シエナの泣き声は聞こえなくなり、静かな寝息が聞こえてきた。

そんな様子をシエナを見て、ルイは安心して、ホッと息をつくと同時に、ある使命感に奮い立たされた。


ここにいるのはただの弱々しい少女だ。ならば、必ずルイが守らなければならない。


そう心の中で宣言して、ルイはシエナの事を守ると、改めて決意したのだった。






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