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前世の記憶
「黒ばらさま、お気をたしかに!」
甲高い声がして俺は目を覚ました。
視野がくるくるまわっている。
「ああ、目を覚ましてくださったわ!」
「お医者さまを……」
にわかに、周囲が騒がしくなった。
俺は声のほうを見る。
黒いワンピースに、白いエプロン、白い帽子の集団が居た。
全員が、俺がそちらを向いたことに喜んでいるみたいで、表情をやわらげる。
「黒ばらさま、ああよかった……」
「ご実家へ、はやくお伝えして」
「はい!」
黒ばら……。
ふわっと、これまでの記憶がよみがえってきた。
俺はどうやら、乙女ゲームの主人公に転生したみたいだ。