潜水艦について
米国海軍高官は、日本の海上自衛隊の潜水艦の静さについて、こう述べている。
「米国海軍の潜水艦はクワイェット(quiet)だが、海上自衛隊の潜水艦はウルトラ・クワイェット(ultra・quiet)である。」
潜水艦には現在3タイプがある。旧来のディーゼル機関型(内然機関)と、原子力動力(原子力潜水艦)と、AIP(非大気依存推進型)外然機関の3つである。形状も、「水上船型」→「涙滴型」→「葉巻型」と進化を遂げている。
AIPについて、捕捉しておくと燃料電池型とクローズドサイクル・ディーゼル型等いくつかの型があるが、海上自衛隊が採用しているのは、スウェーデン海軍が開発した、スターリングエンジン型で、川崎重工が改良してライセンス生産したものである。
基本的に作戦行動中の潜水艦は、常に潜航しており、充電の為に海上に突き出したシュノーケルから空気を取り入れてディーゼル機関を動かし、それで得た電気を充電すると共にモーターに送電し、スクリューを回している。しかし、敵と遭遇する恐れの高い敵勢力圏内では、シュノーケル航走をするわけにはいかないので、蓄電しておいた電池の電気を使う事になる。
しかし、高速航行しようものなら、電池はたちまち消耗してしまう。そこで開発されたのがAIPである。液体酸素タンクから供給される酸素とジェット燃料にも使われているケロシンを燃焼させて、発生させた800度の熱を熱交換器でヘリウムガスに伝えて加温する。そのヘリウムガスの膨張力と、ヘリウムガスを海水冷却する時に生じる圧縮力を利用して、ピストンを動かし発電すると言う仕組みで、シュノーケルを海上に出して空気を取り入れ無くても、(つまり深く潜航したまま)発電し、スクリューを回す事が出来る方式が、スターリングエンジン型である。また、近年は燃料電池を使ったタイプも登場しており、潜水艦の技術進歩も日進月歩である。スターリングエンジン型を搭載した「そうりゅう」型は、スターリングエンジンを4基と通常のディーゼル機関2基を装備しており、2種類のエンジンを組み合わせて航行する。
その結果、低速航行でも数日が限度だった水中持続力を2週間まで、大幅に伸ばす事に成功しており、今までよりも密かに各国海軍の潜水艦の動向を注視する事が出来る様になった。尚半永久的に潜っていられる原子力潜水艦は、日本国憲法の規定に基づいて保有する事は出来ないが、このAIP技術は革新的な技術である事に変わりはない。