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Red brick story~赤レンガの青春~  作者: 佐久間五十六


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遠洋航海へ

 真新しい1~3等海尉の制服が輝いている。赤鬼・青鬼の伝統の一喝を貰い、いよいよ幹部候補生学校(江田島赤レンガ)に別れを告げる。音楽隊が奏でる「軍艦マーチ」の中、赤レンガの正面玄関から一列縦隊で敬礼をしつつ、行進。教官や家族の前を通り、幹部候補生学校の正式な正面玄関である桟橋へと向かう。

 海上幕僚長、学校長以下見送りの人々の「帽振れ」により、練習艦に乗り組み出港する。練習艦隊は旗艦「かしま」と随伴艦二隻(35から始まる4桁の練習艦)の計三隻で編成される。航路は4コース。①世界一周②太平洋③北米④南米とあり、海野の学年は南米コースを選択した。遠洋航海実習は卒業後直ぐに向かう為、修学旅行と勘違いする学生もいるが、そうではない。

 初任幹部自衛官に任命されて直ぐに向かう「遠洋航海実習訓練」であり、お気楽な学生の修学旅行とは、一線を画す。航海を支えるのは、赤鬼・青鬼にも負けない歴戦の強者が配置され、浮かれる新任幹部自衛官の手綱を締めている。

 海野にしてみれば、まだやっと自衛官としての生活がスタートしたようなものであり、これから立派な海上自衛官になる事が、江田島赤レンガを卒業したものの責務である。

 大海原に飛び出して行く、この白き制服を着た海の防人が、日本の領海防衛の中核を担う事になる。前途は多難だ。しかし、この江田島赤レンガは、100年以上の歴史と重みがある。それを幹部候補生達は、一年と言う短期間ではあるが、肌で感じたはずである。

 約束された安定などある筈もなく、日々変わる国際情勢に、敏感に反応しなければならない。ここに紹介したのは、そんな国防の一翼を担う者達の氷山の一角に過ぎない。漕ぎ出したオールを新任幹部自衛官は止める事無く、今日も日本の領海内で訓練に励んでいる。


 赤鬼・青鬼の訓示

 「お前ら。今日ここを出ていくが、俺達教官もここを去る。来週には正式な異動の辞令が防衛省から出るはずだ。毎年毎年目に見える物はいずれ失われるし、新しくどんどん姿を変えていく。けれど、この江田島赤レンガで俺が、或いはこの学校がお前達に伝えたかった事は、目に見えない事の方が大切だと言う事だ。お前らが将来幹部自衛官になるに当たって、目に見えない大切な物。それが何だったのか気付くのは、そんなに直ぐじゃない。多分シバかれた記憶が生々しい今じゃない。鬼の俺だって4年前はお前らと同じ幹部候補生だった。たまたまこの仕事を頑張っていてようやく、その大切さを知った。まぁ、いずれお前らもつまづく時が来る。その時、鬼の言ってる意味が分かって来る。花びらは散る・花は散らない。以上、解散。」

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