海上自衛隊幹部候補生卒業式
第26部~第28部で紹介した流れ通り、海上自衛隊幹部候補生の卒業式は、行われていく。海野は残念ながら優秀者表彰の受賞を逃してしまったが、皆勤賞で幹部候補生課程を修了した事を密かに喜んでいた。海野は思う。
ここで学んだ事をベースにして、これから活躍する事が、幹部候補生に期待されている役割なのだとすれば、それはまだスタートラインに立ったに過ぎないのかと。
今日をもって幹部候補生としての生活は一区切りである。遠洋航海実習からは、初任幹部自衛官として、任官する事になる。人の上に立つ事の責任を感じずにはいられないだろう。勿論、今日までこの赤レンガでやって来た事がベースになる事は言うまでもない。
苦しく辛い日々が続いたかもしれない。受け取った卒業証書と初任幹部自衛官任命の書は生涯の宝物になるに違いない。これ等は誰もがもらえる物ではない。選ばれし者にしか与えられない証である。それを実感する事が出来たのも、成長と言えるかもしれない。
幹部候補生学校卒業式には、家族の参列が許可されており、海野の両親と妹もこの兄の晴れ舞台を見るために遠路はるばる駆けつけていた。親元を離れたのは、高校卒業後してからすぐ。防衛大学校で4年間、赤レンガで1年間。計5年間をかけて成長した息子の姿に、父陽一郎は感激していた。新任幹部自衛官となった兄の勇治も見つめる。卒業式後の昼食会で、家族とはしばし離れ離れになる。何故なら卒業式直後の遠洋航海実習が伝統になっているからである。
「皆、今日は来てくれてありがとう。遠洋航海実習が終わってから話そうと思っていたけど、遠洋航海実習が終わったら結婚したい相手がいるんだ。」
「将光…。」
「そっか、良かったね。お兄ちゃん。」
「挨拶は遠洋航海実習が終わってからにするよ。大事な初任幹部自衛官研修だからさ。」
「将光、あんたの好きになさい。もう大人なんだし。」
このカミングアウトは、海野将光の一生一度きりのサプライズであった。海野は忙しいながらも、ひっそりと愛を育んでいた。広島県在住の光代と言う一年上の女性である。それはさておき海上自衛隊幹部候補生卒業式は無事に挙行された。




