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Red brick story~赤レンガの青春~  作者: 佐久間五十六


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初めての"台風"

 海野は、この日海上自衛隊幹部候補生となって初めての、洗礼を受けた。日課であるカッター訓練を終えて、部屋に戻ってみると、何と凄まじい惨状になっていた。しまってあったはずの衣類や荷物は床にぶちまけられ、貯めてあった非常用食糧は全て窓の外に投げ出されていた。ベットのシーツは見事に剥がされて、修復する為にはとても10分や20分では無理だった。同室の隊員がこうぼそっと呟いた。

 「こりゃ、江田島名物の"台風"だな。」

 海野は、ふと思った。江田島の"台風"と言えば、入校時のオリエンテーリングで、聞いた様な記憶が微かにある。しかし、あれはあくまで人事であり、自分の身に起こるとは思っていなかった。

 後にこの"台風"が何故実行されたのか、理由を知る事に成る訳であるが、それを知った時はカルチャーショックのようなものを受けた。理由はどうと言う事はないケアレスミスだった。自分の使ったタオルを洗面所にそのままにしていた事が原因だった。勿論、世間の感覚からすれば、やり過ぎなのかもしれないが、しかしながら海上自衛隊幹部候補生の身である者としては、日常の細かなミスも許されないのである。何故なら集団生活を行っているからであり、幹部自衛官として模範を示さねばならぬからだ。そうした意味では、"台風"の伝統文化は戒めとしてあっても良いだろう。

 いや、寧ろこのくらいの荒療治をしなければ、長年染み付いた習慣と言うモノは改善されない。現場では小さなミスや欠陥も軍隊においては、命取りになりかねない。どんな些細な事にも、気を使う習慣を身につけさせる為に、先人が生み出した知恵なのかも知れない。

 ただ、この日海野に実行された"台風"は、序ノ口だった。酷い者はベットのパーツまで解体されていたりもする。それら"台風"の度合いは、恐らくきっと、担当自衛官の気分や幹部候補生側の落ち度(過失)の大きさによるものなのかもしれない。その辺りは良く分からないが、とにかく大なり小なり、"台風"を食らうと言う事は、幹部候補生側の落ち度があるからだ。何回も食らう者もいれば、全く食らわない者もいる。まぁ、その辺りはスマートにこなして欲しいものである。

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