赤レンガへの憧れ
さて、海野の赤レンガへの憧れについても語ろうと思う。海野だけではなく、海上自衛隊の幹部を目指す者は、必ずと言って良いほど、赤レンガの存在を知り、少くない尊敬と憧れの念を持っている。
幹部候補生として入学するまでは、赤レンガの存在を知らないと言う者もいるかもしれないが、それは少数派である。赤レンガにおいて、幹部教育が行われていると言う事は、幹部候補生を目指す人間にとっては、常識と言っても過言ではない。
個人差はあるが、帝国海軍と海上自衛隊の歴史を知り、赤レンガへの憧れが一つのモチベーションにもなる。赤レンガで学べる幹部候補生は、ごくわずかである。前述の通り、海上自衛隊幹部候補生として赤レンガへの入学が認められるのは、防衛大学校で海上自衛隊を志願した者と、一般大学や大学院を卒業し、高倍率の一般幹部候補生試験を潜り抜けた者だけである。
いずれにせよ、どちらのコースもモチベーションが低い者はふるいにかけられる。帝国海軍の士官も海上自衛隊の士官も、その多くの人が、この江田島にある赤レンガの出身である。広島県江田島市に海軍兵学校が出来てから早150年以上が経過している。敗戦を経ても尚、海上自衛隊の幹部候補生を教育・養成し続けている。
憧れと言うよりは、赤レンガで学びたいと思いが強い者もいる。赤レンガで学べる事は大変な栄誉である。言うなれば限られた精鋭であり、海軍士官にとっては聖地である。赤レンガで学ぶ事を、目標にしている人間も少くない。
伝統ある赤レンガでの教育によって、立派な海上自衛官の幹部になる事を、目標にする事は決して悪い事ではない。それに在学中に変わるかもしれない自分の将来について、じっくり考えるのもありだろう。海上自衛隊幹部候補生課程は1年で終わる。短いかもしれないが、その1年をどう過ごすかは、幹部候補生達の裁量に任せられている。海上自衛官としての、一生を左右する重要かつ貴重な時間を無駄にする事の無い様な、行動を幹部候補生達にはしてもらいたい。だが、ここまでの激しい競争に勝ち抜いて来た幹部候補生ならば、とやかく言う事ではなくイージーな事だろう。




