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Red brick story~赤レンガの青春~  作者: 佐久間五十六


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兵学校入学以来の士官精神

 海軍兵学校の時代には、兵学校入学以来の士官精神と言うものがあった。「指揮官先頭」と「率先垂範」である。どちらの言葉も指揮官たる士官が、先頭をきって作戦に従事するという意味で、海軍士官として必要な心構えを説いている事は確かである。

 部下の見本であり、指揮官たる士官が、リーダーシップを発揮せねばならぬと。元々はリーダーシップと言う言葉は、軍事用語である。戦前日本国民は、軍事には一切関知すべからずと言う事になっていた。軍事予算については、国会で審議するが、軍の方針や部隊内部のリーダーシップ等については、部外者が議論するなど有り得ない。その為、軍事学や安全保障に関わる講座があった大学はなかった。帝国海軍にすら無かった。

 ところが、戦後にやたらと「リーダーシップ」と言う言葉が流行り出した。この場合のリーダーシップとは、ビジネスの世界で使われ始めた事を専ら指している訳だが、軍事学の用語や考え方を、ビジネスの分野で応用する事は、米国ではしばしば行われていた。それが日本に持ち込まれて、日本人もありがたく拝聴したと言う訳である。「ビジネス戦略」などと言う言葉があるが、これは「戦略」、「戦術」と言う純粋に軍事用語として作られた言葉がそのまま使われている。

 戦後になるまで、一般庶民には無縁だったリーダーシップ論であるが、日本の軍隊が何も研究してこなかった訳ではない。言わずもがなとは学や思うが、陸軍では明治以来参謀本部が軍事学の研究を行っていた。参謀本部と言うのは、作戦を考え、その命令を出す陸軍の所謂軍令機関の総本山である。海軍では、軍令部がそれにあたる。

 明治時代の参謀本部の中に「戦史課」と言う部署が置かれて、戦国時代の戦史を調査・分析を主な研究対象とした。それぞれの今戦の戦略・戦術はどんなものであったとか、築城技術・兵器・装備の詳細、また軍政についても当時の史料から研究している。時代が進むにつれ、研究対象は、日清・日露戦争や日支事変まで及んだ。

 その中から、「指導者はいかにあるべきか」と言う事を引き出そうとしていた。その集大成の一部が易しく書き直されたのが、「旧参謀本部編集」の中の「日本の戦史」シリーズ(徳間文庫)として、今でも刊行されている。日本人は近代以降、リーダーシップについてきちんと考えていたのだ。

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