卒業式①
こうして、江田島の1年はあっという間に経過して、卒業の日を迎える事となる。幹部候補生の顔つきも全く別のモノになっている事であろう。
卒業式はまず海上自衛隊のトップである海上幕僚長を出迎える所から始まる。幹部候補生の誰一人として浮わついた者はいない。出迎えを終えると、大講堂に入って行く。国家斉唱を行い、慌ただしく卒業証書が、一人一人の幹部候補生に渡される。
それが終わると優秀者表彰がある。優秀者とは、成績上位者の事で、日本海軍の時代には軍刀や恩賜品が与えられたりした。これはエリートの中のエリートの証と言う事で、出世に大きく影響した。その名残が今も残っているようだ。
普通の幹部候補生は、上手から登壇し、卒業証書を受け取って、下手から降りるのだが、続いて行われる成績優秀者表彰では、正面階段の赤絨毯から登壇する。そして、証書を受け取って降壇する際も、体の向きを全く変えず後ろに下がって降りる。一見簡単そうだが、全く後ろを見ず階段を踏み外さないで降りるのは、普通は出来ない。
それが終わると、いよいよ幹部自衛官の任命が行われる。大学院を卒業している幹部候補生は、Lieutenant Junior Grade=二等海尉(諸外国の中尉相当)、防衛大学や一般大学卒業の幹部候補生は、Ensign=三等海尉(諸外国の少尉相当)にそれぞれ任命されるのである。
総代の宣誓の言葉には、「事に臨んでは危険を顧みず身を以って責務の完遂に努め、以って国民の負託に応える事を誓います。」とある。
この日を持っていよいよ幹部候補生ではなく、幹部自衛官になるのである。勿論、まだまだケツの青い若人ではある。それでも中尉や少尉と言えば、立派な士官であり、部隊の中では中堅クラスに位置する。部下もそれなりにいる。その分責任も伴う。人の上に立つとはそう言う事である。
この1年間で学んだ事は間違いなく幹部自衛官になってからもいかされるだろう。しかしながら、これからが本番だ。これから困難な国防と言う任にあって、そこで学ぶ方が寧ろ多いであろう。卒業はプロセスであり、新たなスタートでしかない。海上自衛隊の幹部自衛官になる自覚と誇りを持って、困難な任務をこなしていくスタートラインに立ったと言うだけの事である。




