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Red brick story~赤レンガの青春~  作者: 佐久間五十六


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江田島台風

 「江田島台風」は赤レンガにおける"名物"である。外から幹部候補生が帰ってくると、毛布がきちんとたたまれていない。ロッカーの施錠ミス等のeasyミスを赤鬼・青鬼は見逃さない。そんな理由でベットがひっくり返され、ロッカーの中の私物は全て床に散乱させられる。

 まるで台風だ。そこからこの名がついている。「江田島台風」を発動するのは、何も赤鬼・青鬼だけではない。その他の教官に見つかっても発動される。酷い時には、ベットが丸々分解されて窓の外に放り出される事もあると言う。「江田島台風」を発動された幹部候補生は、この惨状を速やかに回復させて、しかも次のスケジュールに絶対に遅れてはならない。

 であるからこそ、パニックになる。この「江田島台風」は一見すると理不尽なのかもしれないが、優秀な幹部を育成する為には、必要な"訓練"である。この「江田島台風」は、現場でも「台風」の名で普及しており、幹部がだらしない下級隊員の教育的指導として行われている。

 台風をくらってしまった原因は何処にあるのかと言う事を考えると共に、自分に落ち度がなければこの惨状には理解出来ない訳で、この様な事にはならなかった。海の上では小さな事が命とりなる。いや、陸海空問わず小さな事が死を招く。そんな危うい世界にいると言う事を幹部候補生に知らしめる為のもので、いじめや制裁ではなく"教育"なのである。

 やっている事は嫌がらせに近い。この様な事を民間会社がやったらパワハラと捉えられてもおかしくはない。しかし、ここは海上自衛隊幹部候補生学校である。国家国民を守る為の海上自衛隊幹部を育成する組織なのである。これから1億2千万人の日本人とその領海を守る人間が、ロッカーの施錠すら出来ない。ベットの毛布をきちんとたためない。それでは国民や部下に示しがつかない。

 戦術がどうとか、スキルがどうと言う以前の問題なのである。戦場で命運を分けるのは、どの様な微細な事でも、見逃さずに対処出来るかと言う事にある。士官・将官たる幹部自衛官が、小さな事を見逃して大局を見失う事は、愚の骨頂である。「江田島台風」が、教えてくれる事は"常在戦場"の気持ちで油断するな。その様な幹部自衛官であって欲しいと言う願いが込められている。

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