短艇訓練
短艇訓練とは要するに、カッターと呼ばれる小型船舶を使用した訓練の事であり、船乗りの基本として海軍兵学校時代から受け継がれている伝統である。このカッター訓練は全員が一致団結して船をこがなければ、決して前には進めない。全員をまとめるリーダーシップも同時に養われる。
カッターと言う船舶は、とにかく息を合わせてオールを漕ぐしかない。カッターの役割は重要であり、連絡用渡し船として使われたり、非常時には脱出用船舶として、軍艦に搭載されている。エンジンを搭載していない為、とにかく体力の続く限り漕ぐしかない。訓練ではカッターの操舵の難しさと厳しさを知る。軍艦に搭載されているカッターは、訓練用より漕ぎやすいが、一般的な船舶を漕ぐのとは訳が違う事に変わりはない。
一般的には認知度の高くないカッターではあるが、仕組みはボート競技のシングルスカルやダブルスカルと同じである。何故このような厳しい事をするのかと言えば、海上では何が起こるか分からない。いついかなる時においても、艦上でハプニングが起こると言う事を想定しておかねばならない。そうする事で、何が起きても冷静に対処出来る一面はあるだろう。
船乗りとして、大切な事は慌てないと言う事に尽きる。特に多くの部下を持つ幹部ならば、冷静かつ適切な判断をする事が求められる。訓練してないから出来ませんでしたでは済まされない。だからとことん訓練する。そう言った要素も短艇訓練には含まれているのである。大切な事は、海上では如何なる危機も発生するものだと思い行動する事である。海上自衛隊の幹部になるなら、部下だけではなく自分の命も守れる備えをしておく事が大切である。
そう言った意味で、多少の厳しさはあるかもしれないが、短艇訓練は海上自衛隊幹部候補生の為には、必要な訓練として、これからも行われていく事だろう。たかが、手漕ぎボートの操舵かもしれないが、これを舐めるとロクな事にならない。日本海軍から海上自衛隊へと組織が変わっても、この伝統がある短艇訓練の重要性は変わる事はないであろうと思う。




