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魔の森のある世界に生きている

婚活令嬢 王子様がいないなら見つければいいじゃない?カエルの王子様は実在します!キリッ!

前作と同じく魔の森シリーズです。今回は異世界転生してる令嬢が主人公です。

Rカエル です。カエルにキスとか無理!な方はごめんなさい。

 私には異世界での記憶があるらしい。


 そう気づいたのは10歳の頃。


 良家の子女が集められるというノルド王国の王立学園で新入生として学びだしてすぐ、今まで感じていた違和感の正体を理解した。




「聞かれまして。お隣のオスト王国の髪長姫のお話?」


「もちろんよ。最近では芝居小屋の演目にまでなっているじゃないの。ラプなんとかというお名前だったかしら」


 さえずるような同級生の令嬢たちの会話をなんの気もなく耳にしていた私は思わず動きを止めた。




 髪長姫……ラ……ラプンツェル!!


 超有名童話のお姫様の名前を思い出したとたん、私カロリン・バイセベアグ侯爵令嬢ではない記憶が溢れ出した。今まで見たこともない景色に一瞬だけくらりとしたけれど侯爵令嬢として優雅に見えるようにピンと背筋を伸ばし上品なアルカイック・スマイルを浮かべる。


 どんなときにも侯爵令嬢というものは付け入るすきを見せてはならないのです。そう言った、常にキリリとしていた家庭教師の彼女に既視感を感じていたんだけど、今ならわかる。かわいいアルプス出身のハイジに冷たくあたったあの侍女だわ!あれ?名前がでてこない。




 まあいいわ!鉄でできた乗り物が空を飛び、地を駆ける。貴族と平民という身分制度はほぼ形骸化した世界で私は生きていた。黒髪黒目の人々が多く住む地域で、黒髪黒目の女性として生きて死んだ。その時の記憶はややぼんやりとして全て思い出せはしないが、彼女は電化製品を使いこなし、便利な文明生活を享受していた。無機物が電気で動く不思議な世界。そして最も重要なのが、魔法はおとぎ話の世界のことだったのだ。




 そう、おとぎ話の世界。だが私は知っている、魔の森で眠り姫が見つかったことや、7人の小人と暮らしていた少女が死の淵から蘇ったとか、氷の城にただ一人で住む引きこもり女王の話は隣国の歴史を学ぶ上での近年起こった怪奇事件として家庭教師から習っている。




 そしてラプンツェル!!名前と身体的特徴から私の知っている彼女に違いないことを確信する。


 そして今まで起こった怪奇事件に彼は居なかったはず。


 はっ!これなら絶対に彼が居る!!この世界のどこかで私を待っている!!


 ふ、ふ、ふふふふふふふふ……


 どうやら私は絶対唯一のラブロマンスをつかむことができそうだと、学園の片隅でニヤリと笑った。


 まってて私の王子様!!


(もちろん姿勢はくずしません!きりっ!)




 私の今いるノルド王国は魔法というものは当たり前のもので、その力の強い者が支配階級として君臨している。一番魔力が強いのが王家、そして四大侯爵家、高位・中位・下位貴族そして多数の平民と絶対のヒエラルキーがこの王国の序列である。


 通常魔力の強い両親からは魔力の強い子供が生まれるが、まれに魔力の弱い子供も生まれることもある。逆もまた然り、平民に魔力持ちが生まれることもあり、その場合は速やかに貴族との養子縁組が組まれ支配階級に組み込まれる。




 各貴族家としては今ある魔力量を減らすことのないよう出来るだけ釣り合いの取れた家、もしくは少しでも魔力量の強い家との結びつきを望んで縁組をする。魔力の増減はその家の将来を左右する、貴族にとって死活問題なのである。




 私、カロリンは王族との血縁関係のある公爵家に次ぐ高位貴族であるバイセべアグ侯爵家の一粒種として生を受け、蝶よ花よと可愛がられてきた。




 魔力の強さを保つため、魔力の強い家同士が結びつくことで魔力血統を保持するための政略結婚が当たり前の貴族階級ではほんっとうに珍しい恋愛結婚至上主義のバイセべアグ家は変わり者としての地位を確立している。


 とはいっても出会わなければ恋に落ちることもないので、恋愛相手はあくまで貴族、お父様が選び選ばれたお母様も辺境伯令嬢でれっきとした貴族である。


 二人共にかなりの魔力量であったそのおかげか私の魔力は当代の貴族令嬢たちの中ではぶっちぎりのトップレベル。なんなら貴族令息たちもぶっちぎれてしまう。


 そう、私の魔力はぶっちゃけ王族レベルなのだ。望めばどんな婿も取り放題。


 ただ、一つだけ問題があるとすれば、私の魔力になんとか釣り合う結婚適齢期の男性が全く居ないということである。


 そもそも貴族というものは当代の王族の妊娠出産にあわせて子供を作るタイミングを合わせようとするものである。王太子の級友になることは男子であれば将来の側近候補としての近道であり、女子であればお后候補、言うまでもなくそれは権力への近道でもあるから。




 だが、変り者のバイセべアグ家、そんなことはしったこっちゃないと当代の王が結婚したときにもまだ婚約者もおらず、王太子が生まれたときにやっとお父様とお母様が恋に落ちていた。タイミング、逃しまくりである。そして二人の仲が良すぎたのか結婚10年目にしてやっと私が生まれた。それはお父様40歳お母様25歳のときのこと。


(ええ、年の差婚ですの。ぽっ)




 同級生に王太子も第二王子も居ない、でも魔力の低い男性陣はゴロゴロしている環境で私はぼんやりと日々思っていた。どこかに私の王子様がいるんじゃないかしら?ひょっとしたらこの国ではないどこかに?少女にはよくある妄想だけれど、この国ではないどこかに私が嫁ぐことは出来ないこともわかっていました。


 だって私は家付き娘。どこにも嫁に行けないし、バイセベアグの変わった家訓、結婚は恋愛結婚で!これは守らなくてはいけない、破れば恐ろしいことが起きる。というエピソードつきなので、我が家ではご先祖様も絶対に守ってきた。


 多分ご先祖様の好きな人と結ばれたいなーなんて他愛のない願いを叶える手伝いをした精霊とか神様とかが、じゃあせっかくだからお前の子孫も俺の加護つけてやるよ。好きなやつ以外と結婚とかしたら絶対不幸だろ?ってか不幸になるからな。って感じののりでこの事態が引き起こされたことは想像に難くない。


 精霊だとか神様だとかかなり迷惑なものなのだ。関わり合いにならないのが一番だ、と数々の伝説が教えてくれている。万が一にも関わった際には絶対に怒らせてはならない。


 絶対だ。




 そして、今日も王立学園で学ぶ級友のお嬢様方の可愛らしい声でさえずられる噂話。10代の少女とはいえ貴族である。うわさ話も社交のうち。彼女たちは暇を見つけてはさえずっている。


 6年前に話題になった髪長姫の話がまた彼女たちの口の端に上っている。



「聞かれまして。お隣のオスト王国の髪長姫のお話?ついに王子様をご出産ですって」


「もちろんよ。」


「王子様の髪は髪長姫の御髪と同じでそれはそれは美しいそうよ。白金のようなその御髪は光を受けると7色に輝くのですって」


「まぁうらやましいわ。私の髪なんてどんなに櫛を入れても一晩眠ると収まりがつかないの。」


「わたしもそうよ。髪長姫のような美しい髪があれば私も王子様に見初められたかしら」


「どうかしらね。オスト王国は我が国より随分身分制度がゆるいと聞くもの、うちの王家では身元もわからない塔に閉じ込められていた娘なんて絶対に結婚なんてしていただけないでしょう。私達のような魔力の少ない男爵家の娘では髪の美しさだけでは王子様のお相手なんて夢のまた夢よ」


「それもそうね。私達は婚約者が居るだけいいと思わなくては、だってねぇ」


「ええ、そうね。自分で選んで良いって言われても、選んでほしいって言ってくださる方が居なくてはね」


「ほんとうに、大変よね。自分で見つけてこいだなんて」


「いくら魔力がつよくても……お気の毒に」




 男爵家といえば下位貴族であるのに、彼女たちの態度は大きい。私をこっそりと横目で見てくすりと笑う姿は優越感に浸っている。それもそのはず、今のノルド王国では貴族家の男余りが甚だしく、高・中位貴族の侯爵・侯爵・伯爵家において三男・四男・五男と自分の力で家を起こす程の手柄をたてねば貴族としての地位の危うい崖っぷちの男たちがやたらといるのだ。




 家を継ぐ長男、もしものためのスペアとして次男は生家に残されるが、それ以外の男たちは学園を卒業すると家から出されることが多い。そんな男たちが狙うのは下位貴族でも自分の魔力の高さを買って家に入れてくれる家付き娘たち。学園で学ぶ10歳から卒業年の16歳まで彼らの必死のアプローチが繰り広げられる。今の貴族界、家付き女というだけでどんな娘でもモテる。そう、性格が悪く見た目が十人並みであっても将来家を継ぐ彼女たちにはそれを上回る魅力があるので。




 この男爵令嬢たちも高位貴族の子息を婿に入れることが出来るいわゆる結婚成り上がり組なのだ。次代の子どもたちは父親の魔力の高さを引き継いで男爵家や子爵家の魔力量を増やし、さらに魔力量の多いとの結びつきを望むことが出来るだろう。将来的には更に上の家との繋がりをしていけるだろうと、取らぬ狸の皮算用をしているのだろう。




 私のように魔力が強く貴族としての身分も高いとはいえ父母の自由主義によって結婚相手を自分で探さなくてはいけない婚活女子とは違うのだ。


 もちろん私は家付き娘としてはぶっちぎりの優良物件、入学当初は同学年から最高学年まであらゆる学年の男子から毎日毎日手紙や花束が届けられて、女子寮の部屋もプレゼントで溢れかえっていた。


 なつかしくて、遠い目になってしまう。




 でも、そんな彼らも私のことを知ると距離をとってしまう。毎年新入生が入ってきては何も知らない次男以下の男子が私に近づいてきた。だが、そんなことも今は昔、私はいつの間にやら最高学年、夏には王立学園での学びも終わり、女侯爵としてお父様の後を継ぐために実務を学ぶために領地に帰ることが決定している。


 今は新年開けの最終学期が始まったばかりとはいえあと半年もすれば卒業前のイベントが立て続けにある、パートナーが居ない最高学年の生徒なんておそらく私くらいのものだろう。




 でも私は諦めることが出来ない。


 前世で読んだあの絵本。優しく可憐なお姫様にキスをされて呪いのとけた王子様の姿。


 だから6年前ラプンツェルの話を聞いて国一番の探しもの魔法の専門家に依頼したのだ。

 結果、呪いのせいで場所は絞れないけれどもこの国の中にカエル王子は絶対にいると断言された。


 この国にいるのなら草の根分けても探し出す!そう誓った私は6年間彼のことだけを探してきた。


 ラプンツェルが物語と同じ姿ならば私のカエル王子だって、金髪碧眼のうるわしいかつ優しく優美な美男子に決まっている。そう、私は自国の王子様と結ばれることは出来ないのならば、理想の王子様を見つけ出す方に青春を全ふりしている残念令嬢なのだ。


 つまり私はカエルの尻を追いかけ回す不思議残念令嬢。(注・姿勢はいいです!)


 そりゃあれだけ寄ってきていた貴族令息も一人も居なくなるというものである。


 だが、諦められない。




 というわけで、私は日常の散歩だけでなく学園の長期休みや週末にも必ず森や湖に出かけカエルを探した。


 最初のうちはカエルが話しかけてくるのではとカエルの前で大事な帽子や毬やその他色々を落としてみたりして困ったふりをしてみたりしていたが、カエルもなかなかしゃべらないし、流石に埒が明かないのでここのところは見つけたカエルを採取して部屋へ連行、一緒に食事と寝床をともにするという荒業に出ていた。


 もう狂人奇人の所業である。部屋付きの侍女には泣かれたが、詳しくは言えないが運命の人に会う婚活のためだというとバイセベアグ家の家訓を知る侍女はしぶしぶ協力してくれた。




 そして私は考えた。前世で読んだお話は何パターンかあり、カエルが王子様に戻るというのはカエルを壁にぶつけたり、寝床に入れたり、キスをしたりという行為で呪いが解けていた。


 おそらくカエルに毬をひろってもらったり、食事を一緒にしたりは重要ではない。


 じゃあ、もう最終手段を使ってもいいのではないのか。




 多分私は6年間の婚活に疲れていたのだ。同級生たちは婚約者を見つけて幸せそうにしている。彼女たちの笑顔に私への優越感を見つけるたびに私は荒んでいったのだ。なんだか前世の黒髪だったころの記憶にもにたような寂しくてドロドロした気持ちを感じた事があると思い出された。


 そしてついに最終手段にでた。


 今までにも何度もきた学園そばの泉のほとりでカエルを待つ。作戦は簡単だ。キャッチ、キス、リリース!時間もないし数をこなさなければならない。侍女には一人にしてほしいと言っておいたが彼女が待てるのもせいぜい日の高い間。勝負は今から半日といったところだ。キャッチ、キス、リリース!行くわ!私はカエルたちがプカプカと日向ぼっこするのどかな泉にそっと捕獲網を差し込んだ。


 魔法で軽く電撃を流すとあっけなく大量のカエルが浮かぶ。私は喜々として捕まえた。




 そして勇気を振り絞った1匹目。キス。ヌメッとした感触が唇に残り思わず放り投げてしまった。ごめん。王子さま!ではないカエル。


 一度も二度も同じこと、そこからは100匹までは覚えている。大きいカエルも小さいカエルも、つるっとしたのもモコッとしたのももうぜーんぶお相手した。


 結論としては、どれも気持ち悪い!




 はぁ……


 もういい加減疲れた私はよく見もせず傍らに伸びているカエルに手を伸ばした。


 キス、アンド、リリース!!


 慣れた手付きで泉に放り投げたところそれは起こった。


 投げたカエルが空中でみるみると大きくなり成人男性ほどにまでなって、泉におちた。


 泉の中には高級そうな服をまとった若い男性があっけにとられて私を見ていた。


 頭からずぶ濡れで。


 あ、投げたのはまずかったかな……


 あちらも驚いているがこちらもびっくりである、まさかこの方法で本当に王子様を見つけ出せるとは。


 しかも学園から一番近い泉で!灯台下暗しもいいところである。




 まじまじと麗しの王子様を見つめていると彼が泉から出てきた。


 金髪で碧眼。物語の通りのいい男である。

 顔だけで惚れる!素敵だ!


 これなら家訓に沿った結婚が……と思ったとき、


「まずは呪いを解いてくれて礼をいう。助かった。だが……」


 彼にギロリと睨まれる。


「なんなんだよお前。カエルと見れば手当り次第口づけしやがって。お前みたいな変態女、絶対にごめんだ」


 水も滴るいい男が激おこである。


 きかずともはっきりとわかる。私と恋に落ちたようすはこれっぽちもカエルの水掻きほども見られない。


 運命の相手に出会えた瞬間振られた。


 世間の皆様にはカエルに魅せられた変わり者として認識されている。




 ……私の婚活つんでない?

最後まで読んでいただきありがとうございます。

面白かったよと思ったら評価していただけると星1つごとにカエルが鳴きます。

ケロ♪ケロ♪クワッ♪クワッ♪クワッ!!



婚活は異世界でも大変。大丈夫、カロリンちゃんは異世界の知識を生かしてたくさんいい男を見つけられますから。前向きに行きましょう♪

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