2、信じるか信じないかはあなた次第です。
「早乙女さんはパラレルワールドとか信じる?」
たまたま、同じバスの前後の席になり松本千尋に突然そんな質問をされた。
色素の薄い髪に、長い睫毛。どこか憂いを含んだ綺麗な横顔・・・。
正直クラスで、女子を抜いて一番の美人だと思う。
「・・・いきなりね。松本君?私たちまだそんなに話したことないのに・・・。」
晴夏は、その時、大好きな歴史小説を読んでいるところだった。
バスで読むと酔ってしまうと思うものの、続きが気になり、ページを捲らずにはいられない。
「・・・いや、何となく、歴史小説とか読む人は、やっぱりその時代に行きたいのかな?と思って。」
そう言い、いつの間にか晴夏の隣の席に移動してきた。
「・・・・・・・・・何読んでるの?」
たまたまその口が晴夏の耳元にきていたために、その息が耳に当たりぞわぞわする。
つい赤くなってしまったが、彼は、本のページを見ていてそんな事には気付いていないようだった。
「・・・徳川家光・・・。」
「面白い?」
「私は、面白いと思う。・・・家光の乳母の春日局が好きだし。」
「そうなんだ。」
・・・随分人との距離が近い人だな・・・と思いつつ、まんざらでもない自分がいて、
晴夏は少し恥ずかしくなった。
「ねえ、こうゆう本、他にも沢山あるの?」
そう問われ、晴夏は
「参考書や教科書以外はほとんど、こうゆうのばっかりよ?色気ないでしょう?」
と、笑ってくれればいいなと、軽く思い言うと、千尋は真顔で、
「え・・・?でも早乙女さん色っぽいじゃん??」
と、不思議そうに返してきた。
思わぬ返しに、晴夏は口を開き、固まった。
「・・・俺も、ちょっとこうゆうの読みたいな。おんなじバスだし。今度なんかお勧め貸してよ?」
千尋にそう言われるも、まだ先程の言葉が晴夏の心臓をせわしなく叩いて、返事がすぐには出ない。
「・・・・・・い、いいよ・・・わかった・・・。」
「じゃあ、約束」
そう言って、千尋は「んっ?」と、小指を差し出した。
晴夏はおずおずとその指に自分の指を絡め、千尋と一緒に
「「指切りげんまん嘘ついたら針千本飲~ます。指きった♪」」
と口ずさみ。指を離した。
・・・なんて、あっという間に距離を詰めてしまうんだろう。この人!!
晴夏は、ドギマギしつつ。
何となく、その指切りから、千尋の事を意識するようになり、もっと知りたいと思うようになっていくのだった。