6 葉っぱ仮面
それから、「ギビマルっ、だいじょうぶっ」ポンバはサソリ熊が放り出したギビマルにかけよった。
「平気、平気…」とギビマルは地面に横たわってぐったりしていたが、かぼそい声で言った。
ポンバはギビマルをかかえると背中におぶって、町の病院に向かった。
幸い、どこにも異常は見られなかった。でもさくら牛のお医者さんは、「念のためきょうは安静にしていなさい」と言った。
ギビマルは「もう元気になった。歩いてく…」といったが、ボンバは、ギビマルを背負って、丘の斜面をのぼっていった。ギビマルの家は丘の向こうの森の中にぽつんとあった。小さな黒っぽい小屋だった。小屋にはだれもいなかった。「おとうさんもおかあさんも、シゲンに働きにいってるの、いつも遅いんだ…」といった。
「シゲン」のことはポンバも知っていた。町のはずれにあるごみがたくさん集められるところだった。「サッソリクーマ・リサイクルパラダイス」。にこにこわらったサソリ熊のイラストがついた大きな看板が立っている。ビーダンスケの親の持ち物と聞いたことがある。
この町の人たちは、ほとんどといっていいほど、ビーダンスケの親が経営している会社とか店に働きに行っているのだった。
ポンバはギビマルをしきっぱなしのふとんに横たわらせた。
ポンバはギビマルのことを心配していたが、次の日、ギビマルは、丘の岩のそばにいたポンバのところにやってきた。
ちいさな声ではあったが、とつぜん、後ろから「ばあ」といって、ポンバはびっくりしてとびあがった。へんてこなみどりの顔がすぐそばにあった。よくみると、ギビマルが大きなはっぱを顔にくっつけているのだった。目のところだけくりぬいて、仮面かなにかのつもりらしい。茎をひもにして顔につけているのだった。
「うちゅうじんだどっ! 」ギビマルは短い羽根をばたばたさせて、かんだかい声でさけんだ。「地球をわたすのだっ!」
さいしょのころは何か一言しゃべるたびに、ポンバのからだをよじのぼって、みみもとでささやくようにしていたのに、いまではずいぶんと大きな声で話すようになっていたのだった。
仮面ごっこが好きなようで、ギビマルはくるたびごとに大きなまるっこい葉っぱや、ふちにぎざぎざのある葉っぱだとかいろんな葉っぱを顔につけてやってきた。
仮面ごっこにあきると、その葉っぱで船をつくって小川や池に浮かべたりした。
ほかにもいろいろな遊びをした。石をどれだけ高く積めるかとか、木につかまってミンミンとかジージーとなく「せみごっこ」をしたりもした。