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-巨大ゴーストと魔女鍋

アメフラシのポンバはおかの上からぼんやり町のひろばをみおろしていた。ほんらい、アメフラシは海にいるものだが、ポンバは「おかアメフラシ」といってりくにいるタイプなのだった。

ひろばでは、こどもたちが「しっぽタッチごっこ」をしてあそんでいる。ほかの子のしっぽをさわる遊び。

子パンダはほとんどしっぽがないのに、「きゃーきゃー」さけびながら、ひっしに逃げまわっている。

とかげの子がしっぽをさわられるしゅんかんに、自分でしっぽを切った。「ずるい ずるーい! 」とみんな、とかげをゆびさして口々にさけんでいる。スカンクはしっぽをタッチされそうになると、ぷう!とおならをした。毒ガスみたいなおならがあたりに漂っているのだろう。みんな「うわあ」とさけぶと、顔をしかめて倒れてしまった。

ポンバも手をのばして自分のぬめぬめしたしっぽをつかんでみた。「つかまえたっ」とさけぶ。それからしっぽをはなし、またつかんだ。あまり、いやぜんぜんおもしろくなかった。

いっしょにあそびたいのに、ポンバはなかなかひろばにおりていくことができない。みんなあまり、ポンバとなかよくしてくれないのだ。

「ぐねぐねぶよぶよしてきもちわるい」、「のろくて、なんかいらいらする」という人もいた。

たまにあそびにいれてくれてもあまりうまくいかない。たとえば、おにごっこのときはすぐにつかまって、いつも鬼だった。

そして鬼になっても、逃げる子をぜんぜんつかまえられないので、いつまでたっても鬼のまま。そのうち、ほかの子たちも、「とろおに、ポンバじゃつまんなーい」と言い出すのだった。とろおに、とはとろいおにということだった。それでやっぱりあまりさそってもらえなくなるのだった。

そんなことを思い出して、ポンバはためいきをつき、うつむいた。

すると、ううん、ううんとうなる小さな声がきこえてきた。あれ、どこだろう、ポンバはきょろきょろあたりを見まわした。けれど、声の主はみあたらない。「ん」ようやく、あしもとの地面からきこえてくることにきづいた。

それはいっぴきのアリだった。左側の触角しょっかくが右側より長く、へなっとまがっている。

アリは、なにかをけんめいに、はこぼうとしている。しゃがみこんでよく見ると、それはチョコレートのかけらのようだった。アリには大きすぎるようだった。

アリはうーんとうなってひっぱっては、手を放ししりもちをついている。そのうちとうとうあきらめて、ねころがってしまった。ポンバはアリがかわいそうになった。

チョコレートをもっと小さく割ってあげようかとも思ったが、ポンバは力がないし、やわらかいぐねぐねの手ではとても割れそうにない。歯がほとんどないので、かみくだいてあげることもできなかった。

でもポンバはいいことを思いついた。アリに向かいやさしい声で、

「ねえ、それ、どこに運んでいくの、てつだってあげるよ」といった。

 チョコはこびに夢中になっていたアリは、びっくりしてポンバをみあげた。ポンバはほほえみながらアリの前に手のひらをさしだした。二本の触角がうたがわしげに、ぴこぴこと、せわしなくうごいている。

ポンバはもう片方の手で、チョコレートをかかえたアリをそっとつまんで手のひらにのせた。それから、

「どこにもっていくの」とやさしくたずねた。

アリは、短いほうの触角をぴんと伸ばして、二メートルほど離れた背の低いずんぐりした木をさししめした。

ポンバはいそいでその木に向かった。けれど、その動きはのろく、なかなか木にはたどり着けなかった。だがようやく着くとその木の根元の地面に穴があいていることに気が付いた。どうやらアリの家のようだ。

ポンバはそっと穴のふちにアリをおろした。アリは、触角をふって、ていねいにおじぎをした。それからチョコレートのかけらを何とかひきずって、穴の中へと落ちるように入っていった。

「よかったね、きょうはみんなでごちそうだね…」

明るい声でいうと、ポンバはのろのろと、また丘の岩のところにもどっていった。

そしてこどもたちがあそんでいる広場をみおろした。

「しっぽタッチごっこ」は終わって、みんな、輪になって地面をみつめている。ここからでは小さくてよく見えないけれど、輪の中にはいろいろな色や形の木の実や小石が並べられているようだった。それらに自分がもった木の実や小石をぶつけて、うまく当たればもらえる遊びだろう。


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