表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/16

2-3


「金サクラすごい! ものすごい大金だよ~」


 一個で家が建つほどの【金サクラ】が22個も手に入った。

 とんでも大金だ。


 そしてそれを【冒険者ギルド】で換金した。


「ふふ……でもマーシャが加護持ちなんて、驚きました」


 ミアは曖昧に笑って、そう言う。


「む? もしかして、あんまり大金だと思っていない?」


 ミアは口をつぐんでニヤけるをこらえるような表情を作りながら、こちらを見つめる。


 やっぱり。

 ミアはあまり大金だと思っていないようだ。


 ……でも、仕方ないか。


「Sランク冒険者様だもんね」


 ミアの金銭感覚がおかしいことくらい、当然かも。


 そこでミアの雰囲気に少し違和感を感じた。

 しかしなぜ違和感を感じたか、その時のあたしには分からなかった。


 ミアは苦笑いしながら言う。


「でもマーシャならSランクくらい、すぐになれますよ」


「ん~、Sランクかぁ……」


 冷たい秋の風が吹いた。


 もう夕方だ。


 2人で王都の大通りを歩く。


 屋台でいろいろ買って食べ歩きながら、あたしの家へ向かう。


 ミアは今日の予定はないようなので、あたしが家に誘ったのだ! 

 友達だし?

 そして、今日は一緒に寝るのだ!


「そろそろあたしの家に着くよ」


 家まであと少しというところで、なにやら家の周りが騒がしいことに気付いた。


「あれ? 何だろう?」


 あたしの家の周りにたくさんの人がいるようだ。

 がやがやと何やら騒いでいる。


 近くの人に聞いてみる。


「あの、何かあったんですか?」


 あたしが聞くと、お婆さんはもう水を得た魚のように無茶苦茶に喋り出した。


「ああ、ここはテルムント家の屋敷って知ってるかい? ここいら近辺じゃ有名な話だわ。テルムント家の領主様が住んでるって。王宮の近くのいわゆる貴族街じゃなくて、こんな普通の平民が暮らすような場所に住んでるからってあたしゃ好きだったんだけどねぇ。

 きんのう、ゴーレムが暴走した話知ってるかい? 豊穣祭っていうのに大惨事でねぇ、並んでたゴーレムが一斉に人々を襲い掛かったのさ。もう人々はてんやわんやの大混乱。あたしゃもそのとき遠くから見てたんだけど、もう人が逃げてくるわ逃げてくるわ。死んだ人もいっぱいいるって、みんな言っとる。

 桜色の髪を持つ少女のお陰で被害は最小限に済んだらしいが……よく見ればお前さんも桜色の髪じゃ。もしかすると?」


「たまたまです」


 あたしは咄嗟に嘘をついた。


「ま、そうじゃろうね。お嬢ちゃんは『箸より重いものを持たない』って感じだもんねぇ……

 で、今さっき国の馬車がやって来て、ここの領主様を捕まえたみたいだねぇ。あとここだけの話なんだけどさ、王様がゴーレムに殺されたんじゃないかって。もうみんな噂話で大盛り上がりで、こっちが本当のお祭りみたいだわ」


 ちょっと聞くのに疲れたよ。


 でも、お父さんが捕まった?

 確かに、仕方ないかもしれない。お父さんがゴーレム制作のトップだし。


 ……それにお父さんが協力しないとゴーレムは暴走しないはずだ。

 昨日は家に帰ってこなかったけど、あたしが冒険に行っている間に帰って来たのだろうか?

 でもお父さんがそんなことするなんて、信じられない。


 あと王様は死んでないと思う。世界最高峰の実力を持つあたしからみても、近衛兵はかなり強いから。

 ただの噂話だろう。


「ありがとう」


 お婆さんにお礼を言った後、家に帰ろうとするが、よく考えると群衆がいて前へ進めない。


「ん……どうしよ」


「上、屋根を使います?」


 ミアの提案に従い、あたしたちは軽快に近くの民家の屋根に移り、ささっと駆ける。


 うわ~、入り口の門ギリギリまで人がいるよ。


 姿が見られたくないので裏口から入ろうかと思ったが、兵士の方が玄関の前で立っているのに気付いてやめる。


 さっとミアの手を取る。そして玄関前の芝生にすたっと降りた。

 兵士の方はこちらに気付いて「おおっ」と声をかけてくる。


「君がマーシャ・テルムントで合ってますかね?」


 あたしの髪をチラリと見て、声をかけてくる。

 この桜色の髪を見て判断したな、って思いつつ、頷く。


「報告しますね。君のお父さん、ミラムダ・テルムントは捕まり王宮の牢に送られました。罪状はゴーレム暴走です」


「刑は?」


「それはまだ未確定です。今のところゴーレムの暴走がなぜ起こったのか分かっておりませんので。ただ……」


「ただ?」


 問うと、兵士は口に手を当てて小声で言う。


「これは秘密なんだけど、王様が死んだって」


「え? 死んだって、ホントに?」


「しーっ、これはまだごく一部の人しか知らないトップシークレットなんだから」


 そのとき初めてその兵士の右胸辺りの紋章が目に入る。“近衛兵”と呼ばれるエリートの証だった。


「だから多分、原因がどうであれ刑は軽いものではないと思う。つらいかもしれないけど、心の準備はね……」


 その近衛兵はそう言って、群衆の中をかき分けて去って行った。


「えっと……私が聞いて良かった?」


「う~ん、どうなんだろう? ま、入ろ」


 トップシークレットと言いつつあの近衛兵あんまり隠す気ないのでは?? って思った。

 だってミアが誰か知らないはずなのに、普通に言っちゃったし。

 それにあたしの判断も髪の色だけだったよね??

 まあこの家は特別だから、それだけで十分と言われれば、そうだけどさ。


 この家はあたしのお父さんが作ったもので、流石は世界一のゴーレム職人の作った家だと思う。お父さん曰く『もうこれは家でありながら、半分ゴーレムみたいなものだ』と言っていた。今こうしてミアと手を繋いでいるのも、そのためだ。家の敷地内に登録されていない人が入ると、勝手に迎撃されてしまう。多分さっきの近衛兵が攻撃されてなかったのは来客指定がされていたからだけど、来客指定は1時間ごとに更新しないといけないので、あのままいたら確実に攻撃喰らってたと思う。まああたしが早く帰ってきてよかったね、と思ったり。


「あ、そこの水晶に手をかざして」


「うん」


 ミアには住人登録をして貰う。


「ちょっと外がうるさいね」


「う、うん」


「防音するね」


 この家は半分ゴーレムというだけあって、なかなか高機能である。

 防音の他にも、暖房や冷房、冷蔵、冷凍。コンロや風呂、照明も魔力で動く。


「どうする? ご飯食べる?」


「う、うん」


「あ、でも屋台で食べたからあんまりお腹減ってないよね?」


「う、うん」


 あれ? ミア、さっきから調子が変?


「ミア、どうしたの? 具合悪い?」


「ううん、違って……」


 と首を振った後、ミアは小さくささやくような声量で何かを呟いた。「こんなつもりじゃ」と言ったように聞こえたけど……


 何のこと? って思いつつ、何と言えばいいか言葉が出てこず迷っていると、ミアの明るい声が聞こえた。


「あ、でも私は大丈夫。私は」


「そう?」


「うん。お父さんが捕まって、マーシャが心配」


「ありがと……えっと、どうする? ご飯にする? お風呂にする? それとも、あ・た・し?」


 ミアははにかんで「お風呂」と答えた。




 次の日、自分が揺すられているのに気付いて目を覚ます。

 目の前には黒髪セミロングの美少女がこっちに向けて微笑んでいる。


 昨日はお風呂に入った後、軽めの料理を二人で作って食べて、で一緒のベッドで寝たんだ。


「ミア、どうしたの?」


 窓からは日が射しているが、あまり強くない。

 あたし的にはまだ寝てていい時刻なんだけど、ミアは早起きなのかな? 夜更かしして本を読んで日が昇ってから寝ることも珍しくないあたしに比べれば、絶対に早起きだとは思うけど……


「えっと」


 ミアは視線をずらして少し考えた後、


「あの、やっぱりおかしいと思います」


「え、何が?」


「マーシャのお父さんのことです。何も悪くないのに王様殺しの犯人にされるなんて」


 その言葉に少し違和感を感じたが、あたしも同じことを思っていた。


「あたしもそう思う……でも、大丈夫。あたしのお父さんはそんなことしてないし、真犯人が捕まればお父さんは釈放されるから」


「違うと思います」


「え?」


「計画的にゴーレムを暴走させ王様を殺した“黒幕”がいます。そして黒幕は計画的に罪を擦り付ける」


 黒幕……その黒幕が罪を擦り付ける?


「それは、お父さんに?」


「うん。この事件はすべて計画的だから……」


「え? なんで?」


 そう聞き返した瞬間、はっとした。


 そうか、計画的で黒幕がいるのか。

 言われてみれば当然だ。なぜ気付かなかったのか。


 そして考えてなかったんだから気付くはずない、と思い至る。


 《剣の加護》のこと。

 婚約破棄のこと。

 ミアとの出会い。

 お父さんの逮捕。


 短い間にいろいろなことが起きすぎて、考える間もなかったんだ。

 昨日はずっと、ミアとお話してたし。


 ちゃんと考えてみよう。


 まずゴーレムが一斉に暴走する時点で、制作側のミスではなく誰かが意図して行っている。


 それに、いくらゴーレムが暴走したからと言って、それだけで王様が死ぬとは思えない。近衛兵は強い。近衛兵たちが命を賭して守れば、お父さんのゴーレムがいくら強くても王様が命を落とすことはないだろう。

 なのに王様は死んだ。

 だからゴーレム暴走の最中、混乱に乗じて何者かが計画的に(・・・・)王を殺したと考えるべきだ。


「確かに計画的……」


「犯行理由は分かんないけど、黒幕の計画はマーシャのお父さんに罪を擦り付ける気……だと思います」


 ベッドで横になって、こんな話をしていることにちょっと今更ながらにおかしいと思った。

 よく考えると寝起きだった。

 でもすでに目は完全に覚めている。


 あたしは体を起こして呟くように言う。


「だから、このままだとお父さんは重い罪を背負うことになるってこと?」


 ミアは小さく頷いて、「多分、死刑」とぼそりと言った。


「そんなの、おかしいじゃん……」


 あたしは絶望に突き付けられたかのような気持ちになった。


「でもここまでは“黒幕”の計画通りだと思います。だからこのままだと、やっぱり……」


 ミアの言葉は正論だ。


 このままだと死刑。


 でも、どうすれば?


「そうだ……“黒幕”を見つければ……でもどうやって……」


 呟くあたしに、ベッドから降りたミアは一回転して「大丈夫、そんなことしなくても。加護があるから」と笑顔で言った。


「え?」


 ミアの言葉の意味が分からず、聞き返す。


「実力行使です」


「え?」


「牢に侵入して連れ戻すんです」


 そんな手があるのか、と目から鱗が落ちるような気分になる。

 同時に、そんな手を使ってもいいのか? と良心が責めるのを感じた。


 でも最初にルール違反をしたのは“黒幕”だ。


「じゃあさ、ミア、もし、もしだけど……」


 あたしは勇気を出して、言う。


「お父さんを連れて、あたしと一緒にこの国から逃げて、って言ったら?」


 ミアはそれは嬉しそうに微笑んで、「一緒に逃げます」と言ったのだった。

 まるであたしがそう提案するのを待っていたかのように……


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ