ほんと、どうしようこの方たち。。。。
「とりあえず脱出不可だし、前に進もっか!」
なんの悪びれた様子もなく、勇者は「さぁ、レッツゴー!」と歩を進めはじめる。
それに対し、妖精に語りかけて灯りを灯してもらい、何の疑問もなくついていこうとするアーチャーさまも、アーチャーさまだ。
やばい、まともな思考回路の方がいない!
だれか!誰かまともな方はいませんか?!このダンジョンにまともな方は?!?だめだ!今ここにヒーラーさまや魔法使いさまがいたところで、彼らもまたいまいちまともではない!この冒険者たち(パーティ)まともがいない!!
「ちょちょちょちょっとまってください!」
慌てふためく私に、勇者さまは振り返ると、にっこりとイケメンスマイル。
「あぁ、モナはダンジョンはじめて?大丈夫、大丈夫!俺もいるし、アーベル・チャーストカもいるし!」
どの口がいってやがる!お前の船は泥舟だバカヤロウ!!
不安しかない私に対し、アーチャーがぽんっと肩に手を置いてくる。
「大丈夫、モナ。ユーは、こうみえて、セントラルの、剣術学校を、首席で合格、レベルだ」
そうなんだ!それは頼もし••••••••••••じゃねぇわ!
合格、レベル、とは?
合格、ではなく、合格と同等だと?
いや、真偽もわかんねーし余計に不安しかねぇよ!
遠足かのように鼻歌まじりにサクサクすすんでいく勇者と、それにのんびりと続くアーチャーに置いていかれるわけにもいかず、私は半べそで彼らを追う。
ダンジョンなんて元モブにはもちろん初めてである。
酒場には様々な冒険者が立ち寄ったため、彼らや彼女らが語るダンジョンの話だけは良く聞いていた。
広々とした遺跡のようなダンジョンや、宝石が一面に埋まった光り輝くダンジョン、森林が迷路のようになったタイプなど形は様々だ。
私たちが迷い込んだダンジョンは、横幅は3人がゆったり並んで歩ける程度の広さではあるが、天井はさほど広さはなく、もちろん明かりは妖精が発する柔らかな光のみである。
ゴツゴツと突き出した岩肌はジトッと濡れたようにやや光っているし、湿度も高く、カビくさい香りと、襲いくる圧迫感や不快感に目を細める。
「勇者さま?このダンジョンは、モンスターはいるのでしょうか?」
「どうだろ。まぁ出てきてもサクッと倒すよ!」
最早ツッコむエネルギーも尽きてくる。
冒険者の語るダンジョンにはよくモンスターも出現していた。
小型の軟体から、中型のトーテムポール的な軟体、巨大な軟体の王もいるらしい。(話によると軟体の王は大量にいるらしく、軟体モンスターの中での「王」のカテゴリーは「巨体で王冠所持であれば王」という分け方らしいのでもはや王とは??)
宝を守る門番的なガーゴイルが少数のみのパターンや、モンスターの巣になっていてあまりの数に逃げ帰らざるを得なかった話、またダンジョンの主として巨大なギガースがいた話も聞いた。
この狭さで、このパーティでなんらかのモンスターに出くわし、挟み撃ちにでも会えばひとたまりもない。
3人いるとはいえ、実質戦闘参加人数は2人である。たかだか一度無意識に回復しただけの私が、何の役に立つわけでもない。
あの巨大なワイバーンを倒したとはいえ、私はまだまだ彼らの力をほとんど知らないので、いくら彼らが大丈夫といえど、不安しかない。
「アーチャーさまは弓以外は何が得意でらっしゃいますか?
こうもあまり広さのない場所ですと、アーチャーさまの弓矢は封印ですし」
「え?何をいってるんだ、モナ。弓矢は、突き刺すもの、だろ?」
やべぇ、ガチでだめだこいつら。
私は頭を抱える。
「弓矢は射るものです、アーチャーさま」
「あっはっは!アーベル・チャーストカは、弓は射ったことないね!」
ほんと、どうしようこの方たち。
抱えた頭がガンガンと痛むのを感じながら、私は途方に暮れた。