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皇国転移  作者: 金剛ジャック
第一部 日本国の動揺
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第一章 10

 太陽暦のひと月は通常31日に対して小の月は30日で、()()()()(さむらい)小の月で2月は小の月なので2月は30日だけど、このままでは2月30日中に書き終わらなそうで活動報告で宣言した通りの2月中投稿が難しいので、ロシアのウクライナ侵攻のせいで終末時計がマイナスになって時空がバグって閏年になった体で、前半になる予定だった日本情勢解説だけ投げてお茶を濁す次第(汗)


 世界は大変なことになってしまいましたが、そのあたりについては活動報告で。

 今日は2月29日なのでギリギリ2月中投稿です!間に合いましたぁ!!!(アヘ顔)

西暦2022年1月


 日本海の呼称について、大論争が巻き起こっている。「東海(トンヘ)」だとかいう、一ヶ国でしか用いられていない呼称を世界標準にしようとかいう話ではない。実に皮肉なことに、自国での呼称を国際社会にゴリ押しして「日本海(Sea of Japan)」という名を消滅させようとしていたまさにその国が、大陸諸共消滅してしまった(日本視点)ことにより、日本海という内海が北極まで続く広大な外洋に化けてしまったのだ。各種世論調査などのデータから鑑みるに、かの国々に消えて欲しいと一度も少しでも思ったことのない日本人は少数派だろうが、本当に消えてしまった結果「日本海」が定義上の危機に晒されたのである。

 そのため、この海は「日本海」なのか「北極海」なのか、最早どう見ても内海ではなく外海であるのだから「日本洋」もしくは「北極洋」が適切なのか、あるいは新しく「北洋」という名を付けるか、そもそも日本は島であるのだからここで海が分かれているとは考えず「大洋(新太平洋)」が続いているとするべきか、その上で「北大洋」とすべきか…といった具合である。

 現状、「今まで日本列島を境に海の呼称が変わっていたのだからこれからもそれでいい」ということで「大洋(新太平洋)」を推す意見は少なく、せっかく国の名を冠しているし、名称変更に伴う国内の諸々の混乱を避けるためにも「日本海」を引き続き用いる派が最も多く、転移し(て面倒な隣国がまとめていなくなっ)たことだし心機一転、定義的にも正しい「北極洋」「日本洋」「北大洋」「北洋」派が順に追う展開となっている。特に「北極洋」派は北極圏の有用性(資源や航路、また潜水艦、特に将来的に保有が想定される戦略原潜の聖域として)に注目、将来的な北極圏開発を見据え日本が北極に隣接する国であることをアピールしていく狙いであり、事前の予想では「日本海」派が多いと思われた所謂「右翼」内でも意見が割れていた。


 そんな定義の揺らぐ日本海の海上、かつては中朝国境のニュースでよく見る橋(中朝友誼橋)があった緯度経度のあたりに、台湾ほどの大きさの島があった。退役予定だったP-3Cを維持しての機数増など、海自哨戒機隊の多大な努力の末に発見されたこの島に、海自と陸自の護衛を伴った外交官が派遣され、自衛官と現地民との交流があったりなどしたがそれはひとまず置いておく。

 北対馬と呼ばれるようになったこの島は、現時点で石炭と金、そして一部のレアメタルなどが採れることがわかっている上、広大な土地が余っており、現状では北極方面の探査拠点として有用、さらに周辺の海域が良好な漁場であり、その上住民は「国家」の概念を持っていなかった。よって景気と国威の発揚、そして安全保障上脅威となるような国家がこの場所を占拠し日本本土を窺う事態を防ぐ為、この島を併合すべきとの意見が政府内や右派においてかなり強くなっている。先住民の人口は10000人に遥かに満たないことから近代化にあたっての負担もそこまで大きくはなく、また開発事業による景気・失業対策や食料・資源の国内生産化によって元は取れると考えられていることも大きい。

 ひとまず現地住民との交渉により、港と港町、そして自衛隊の基地・駐屯地・演習場を作る許可を得た政府は、春に向けて急ピッチで港の整備を開始した。南極観測船「しらせ」を派遣し、北極圏の探検を行うためである。

 転移直前の昭和基地からの撤収で、オーストラリアなどの協力を得て慌ただしく活躍した「しらせ」は、その昭和基地が時空の彼方に消え去ったことによりフリーハンドになっていた。南極観測船が北極探査をするというのはなんとも皮肉であるが、極地という最も活躍できる場であることに変わりはなく、「しらせ」は半年以上をかけて、酷使の後であるが故の入念な整備と、未踏の北極圏探査のための改修が行われ、二年ぶりの一般公開の後、この島から北極圏探査へと出発する予定となっている。


 そんなこともあり、転移後初めての年末年始を迎えた日本では、比較的明るい空気が漂っていた。石油と食料と各種鉱物資源は相変わらずオージアに大きく依存していたが、ここに来て日本も自前での資源確保への道筋が少しずつではあるが開けてきていた。転移によって中国の侵略の懸念がなくなった尖閣諸島では当初油田やガス田が転移してきているのか危ぶまれていたが、いくつかの調査結果から地球の時よりも北へ向かってかなり広大な範囲に油田・ガス田が広がっている可能性が出てきており、調査結果待ちだがこれも明るい材料であった。政府としては一日も早くオージアへの依存から脱却したいと思っており、まずは北対馬で大量に採れる石炭を利用した石炭ガス化複合発電(IGCC)や超々臨界圧石炭火力発電で当面を凌ぎ、その間に自前の油田を確保したい考えである。

 そうした中で、一つの問題が出ていた。それが、政府として電気自動車の普及を推進していくのか否か、ということだった。石炭と原子力を主電源として行くなら、電気自動車を普及させれば間接的には石炭と原子力で自動車を動かすことができるため、ガソリンを節約することができるようになる。北対馬ではかなりの量の石炭を自前で確保できる見通しが立っているため、これを推進すればオージアへの石油依存度を低下させることができる。生産段階でのエネルギー消費などの問題もあり、電気自動車がどの程度温暖化対策へ寄与するかは単純にはわからないが、少なくとも現在のエネルギー安全保障においてはプラスの材料となりえる。

 しかし問題もある。電気自動車を含め現代の電気機器のバッテリーに必須のリチウムは、オージアからの輸入に頼っていた。地球においてですら懸念されていたことだが、電気自動車の普及が進めばリチウムは確実に需要が増えすぎて、供給を圧迫することになるだろう。自前で鉱山を確保できなければ、その普及はどこかで頭打ちになってしまうことが予想されるし、より深刻なオージア依存になるかもしれない。現在政府は都市鉱山とも呼ばれる廃棄物からの資源リサイクル技術に多大な支援をしており、当然その中には現代電子社会には必須となったリチウムの再利用技術も含まれていたが、実用化までにはまだまだ時間がかかり、効率についても限度があるであろうと予想されていた。またこの世界の海水にもリチウムが含まれていることがわかっており、海水からのリチウム回収技術の開発へも支援が行われていたが、こちらも実用化までには時間がかかる見込みである。

 そして原子力発電のための核燃料の確保も問題だった。電気自動車の普及のためには電力の安定供給は必須であり、そのためには原子力発電が最も効率が良く安定していて、しかも二酸化炭素排出量は小さい。この新世界では今のところ温暖化は問題になっていないが、全ての近代国家がこれまで通りであればいずれは地球と同様の状況となるであろうことは明らかだった。しかし天候の変化の過酷な日本の風土に風力や太陽光といった発電方式は適さず、そもそも太陽光発電は不安定で電力供給に悪影響を及ぼすのみならず、はげ山を量産し有害物質を垂れ流し建造物では火災を広げるとあらゆる意味で論外であった。現状では電力の安定供給には火力発電か原子力発電のどちらかは必要不可欠であり、日本のように資源供給に問題があるのなら、その両者を併用し冗長性を確保する必要がある。太陽光発電利権への配慮などしている場合ではないため、与党内の保守派や中道から右派の野党の働きかけにより太陽光発電への補助金も原子力規制委員会も廃止され、火力発電所の強化増設や設備更新と共に原発の再稼働が進められていた。

 しかし今この世界でウランを産出しているのはオージアの勢力圏とイツーシア大陸、シライト帝国の植民地だけであり、原子力発電を主軸に据えていくのならこちらも早晩資源供給が問題となることは明らかだった。政府はさらに核武装を目指しているため、軍事的な意味でも自前でのウランの確保は必須だった。

 以上のように一長一短というより結局のところ石油またはリチウムとウランの安定供給が必要不可欠であるため、政府として電気自動車の普及を推進していくのかは意見が割れていた。リチウムは電気自動車だけでなく現代のあらゆる電気機器に必要不可欠と言ってよく、またウランも発電用の燃料としてのみならず核兵器にも必要となる。そして石油もガソリンだけでなく軽油・重油やジェット燃料など他の燃料やプラスチックの原料としても重要な資源であることに変わりはない。どちらに重点を置くかの問題でいずれにせよリチウムもウランも必要な資源ではあるため、石炭を確保し、石油もオージアからの十分な供給に加えて自前での確保の可能性が出てきた日本は今、リチウムとウランの安定確保を優先目標としていた。


なんとか月一に戻して月二くらいには持って行きたいところ…

さて梅を掘りに行かなければ…(重い腰を上げる)

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― 新着の感想 ―
[気になる点] にしてもオージアデカすぎませんかね?技術的に追いつかれたらアメリカとイギリスの関係に近くなりそうな希ガス、領土があるって良いですよね、領土……欲しいですよね、帝国時代の最大版図ぐらい、…
[一言] 海水ウランはどうなんですかね? 原子力は発電コストに対する燃料価格が小さいので、充分に許容できると思いますし、他の海水溶存希少元素も手に入りますし。 あと、高速増殖炉も進めたい所でしょうか …
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