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「ここがメイド用の浴場だよ。お嬢様には僕から言っておくからごゆっくり。」
私の要望を聞き入れてくれたレオンさんに案内されたのは、とてもメイド用とはいえない、シンプルなのに華やかで品のある浴場だった。これがメイド用だというのならあの"お嬢様"は一体どんな豪華絢爛な浴場を使っているのか……。
朝方ということもあり、私以外のメイドの姿はみえない。こんな、こんな広い浴場を独り占めできるなんてなかなかないかもしれない。
中世ヨーロッパの芸術作品のようなデザインの壁や大理石を敷き詰めた床をじっくり見ていたいが、そうもいかない。レオンさんが気を利かせてああ言ってくれたが、あの不機嫌そうな仏頂面の"お嬢様"がいつまでも小汚い小娘を待っていてくれるはずもない。
名残惜しいが、急いで用を済ませて行かなくちゃ。
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更衣室に戻ると、そこにはエメさんが私のメイド服を抱えて立っていた。どうやら待たせてしまったらしい。
「お待たせしてすみません」
「いえ、私もレオンに言われてついさっき来たところだから……気にしないで。」
相変わらず、話づらい。怖い人ではないというのはわかっているけれど、表情も読めないため、どう接したらいいのかがわからない。
メイド服なんてものを着たことがないのを知っていたのかそれとも命じられてなのかはわからないが、エメさんは丁寧に手作りのメイド服を着せてくれた。私が今まで着たことのある服よりもボタンが多かったが、エメさんは流れるような手付きでパパッと済ませてしまった。
肌になめらかな生地の感触がある。買ったら高そうだなぁ、と思った。
エメさんに無言で促されるまま姿見の前に立ってみると、
「わ」
エレガントなのに可愛い、濃紺のメイドを身に纏った市倉沙羅が映っていた。
めちゃくちゃ空きました。5ヶ月ぶりの更新です。えへ。
更新頻度は少しあがりますが、これまで通り不定期気まぐれ更新でいきます。気が向いたときにでも読んでいただけたら幸いです。