序章
鳥が鳴いた。
青く澄み渡った空は暗転、暗闇は太陽を地平線へと追いやった。
深い森の中心部にそびえ立つ城のアプローチに金髪の少女は姿を現す。
「………………。」
「お嬢様、いかがされましょう。」
後ろから黒いメイド服を来た女性が、しずしずと少女に指示を仰いだ。
「…………。捕獲するのです。」
少女の紅い目が、森の先の海岸を見据えた。
※
一体全体、何がどうなってこうなっているのだろう。
多少の息苦しさを覚え、目を覚した私だが、まるで状況が理解できないでいた。辺りは薄暗く、何かに包まれている感じがする。だんだんと目が慣れていくにつれ、なんとなく周囲も見えてきた。私は今、何か半透明のものに入れられたまま移動しているらしい。私の傍らにはそっくりな顔をした黒いメイド服の女性が二人。どこかへ連れて行かれてる。一体どこへ……。
……それより、私はどうしてこんな状況に置かれているのか……。ぼんやりする頭をどうにか回す。
確か、私は買い物に行こうとしていた。お母さんに卵を頼まれていた気がする。すごく雨が降っていて、行きたくなかったけど。スーパーを出たらすごく風も強くなってて、雨もずっと強くなってた。風が強かったせいで、買った卵を割っちゃって、帰りたくなかった。お母さんは怒ると怖かったから。だから、ちょっと寄り道をした。海が特別好きって訳ではなかったけど、なんとなく行きたくなった。それで───
「波、が、きて、」
そうだ。テレビでよく知っていたはずなのに。荒天なのに。私は海に行った。それで、高波が、いきなり、私を、
「うっ…………」
ぐるんぐるんと回った気がする。洗濯機みたいに、洗われた気がする。思い出して吐き気がする。
急に、私を包んだものが止まった。いつのまにか、大きな扉の前にいた。
右にいたメイドの女性がドアをノックし、左のメイドの女性が連れてきました、と言う。
「どーぞ」
中から、少女らしき声が帰ってきた。
扉が開く。