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第66話 王都への帰還

サブタイトルの適当感が……

 疲れているにも関わらず、シュティアを可愛がったと言うこともあり、エルフの郷に戻ってきた翌日は見事に寝坊をした。


「遅いですね。まあ、シュティアさんが部屋を抜け出した時には大体予想が付いていましたが……」


 俺とシュティアが一緒に台所へと顔を出した瞬間、こちらを向いたヴェーヌがそう言いながらジト目を向けてきた。

 文句のような物を言っているが、まるでタイミングを図って作ったかのように朝食を出される。そのあたりきちんと考えられており、頭が上がらない。


「ありがとな」

「お礼はいいですから、冷めないうちに食べてください。ちなみにですが、私とウーラさんはとっくに食べていますからね」


 ヴェーヌはそう言うを台所へと向かった。水の流れる音がするので食器か何かを洗っているのだろう。

 なんやかんや言いながらもきちんとしてくれていることに感謝しなければな。


 シュティアと並んで朝食を食べる。ヴェーヌなら日本食を作りそうだが、お皿に乗せられたベーコンにスクランブルエッグ、サラダにパンと洋食だった。そして――


「これも飲んでくださいね?」


 ヴェーヌはそう言いながらグラスをシュティアと俺の前に出された。中には緑色の液体が入っている。ヴェーヌ作、恐怖の野菜ジュースだ。

 俺はできる限り表情が変わらないように頑張るが、向かいに座るシュティアの顔は引きつっていた。


「きちんと飲んでくださいね? 特にシュティアさん?」


 笑顔をュティアに向けながら台所へとヴェーヌは戻っていった。


「……飲まないからな」


 シュティアがすがるような視線を俺に向けてきたが、この野菜ジュースの不味さを知っている俺も出来れば飲みたくないと思っている。不味いにもにも関わらず、シュティアの分もわざわざ飲もうなんて思わない。

 断られたシュティアはというと、野菜ジュースをじっと見ている。



 特に会話をすると言うこともなく、朝食を食べ終わった。さすがに洗い物をヴェーヌに任せると言うわけにもいかなかったので俺がシュティアの分と合わせて洗う。



 俺が洗い物を終わらせるとほぼ同時にウーラが食卓へとやってきた。

 表情を見る限り、昨日のような雰囲気は読み取れない。俺に話したことによって落ち着いたのだろうか。


 気が付けばシュティアとヴェーヌが椅子に座って話をしているのが見えたので、俺は4人分のコップを出すと飲み物を入れる。

 メルクールは昨日から獣人の村に戻っている。そのためここにはいないので用意はしない。カナはそもそも飲まないので用意はしない。


「王都にいる他の獣人やエルフの回収には、いつ行くのですか?」

「早い方がいいはずだ。今日中には向かおうと思う」

「いくら何でも、国王が王都につくにしては早すぎないかしら?」


 ヴェーヌの質問に答えると今度はウーラが尋ねてきた。

 まあそう思うだろうな。


「そのあたりは考えてある。これを使う」


 俺はそう言うと、インベントリから巻物を取り出した。もちろんシュティア達にはわかるはずがないことぐらい分かっている。

 俺は見やすいように机の上に置く。


「簡単に言えば、これは国王からの指示書。内容は、俺が王都に行きこれを見せた時に獣人達を渡すようにと書かれている」


 俺が説明していると、机の上に置かれた巻物をカナを含める4人がじっと見ている。


 もちろんこれを無くせば受け取れないと思っていい。もしかしたらもう一度国王の元へ行き書いてもらうか、王都で待つか。

 2回も書いてもらうのは失礼だろう。そうなれば待つことになると思う。


「それじゃあ、到着すればほとんどすぐに受け取れるのね?」

「ああ」

「分かったわ。それとメルクールちゃんはどうするつもり?」


 まあその質問が来るだろうとは思っていた。

 もちろん俺は、メルクールを村へ送り出した時から決めている。


「置いて行く」

「え?」

「ここを出発したときに使った転移装置を使うことになるから、王都まではかなり遠い。王都で受け取った獣人やエルフをここまで連れてくるから、どんなに頑張っても10日ほどはかかりそうだな。それまでメルクールにはゆっくり休んでもらうつもりだ」


 さすがに母親の死は大きいと思う。

 そのためある程度時間を上げて身の整理をさせてあげたい。


 もし俺たちがアルール王国の王都へ行っている間にこちらに戻ってきたら、間違いなくいないことに気が付く。なぜ呼び戻さなかったのかと怒られそうだな。まあその時はその時だ。


「それじゃあ、予定通り今日出発なんですね?」

「ああ。ただ……」

「ただ?」


 俺は言い留まってしまった。ヴェーヌが俺をじっと見てくる。シュティアとウーラも見てくるので、余計に言い辛くなった。

 だが俺の負担であったり早く帰ってくることを考えると致し方無い。腹を括る


「シュティア。すまんが残ってくれ」

「ッ!?」


 俺の予想通り、シュティアが目を見開いて驚いている。当たり前だ。

 普段の俺ならばこんなことは言わない。

 驚いたのはシュティアだけではない。見るとヴェーヌとウーラも驚いている。


 もちろん理由はある。


「シュティアは運動が苦手だろ?」

「……」


 俺の問いにシュティアは今にも泣きそうな表情で頷いた。

 やめてくれ。揺らいでしまう。


「早く移動するには出来るだけ人を減らした方がいい。それでもウーラは転移装置を起動させるため。ヴェーヌは何かしらの面倒なやり取りが必要になった時に任せるために必要だ。ただシュティアは……」


 シュティアはと言うと、得意なのは魔法を使うこと。だが今回の場合はいてもいなくてもあまり変わらない。結果こうなった。


「ちなみにですけど、カナちゃんはどうするのですか?」

「カナも置いて行く予定だ」


 さすがにドローンを出さないといけないような状態にはならないと思う。

 また、カナはインベントリに入ることを嫌うため、出しておくとなると、誰かが背負うなりなりしないといけない。そうなれば残るほうがいい。

 なにより、シュティア1人はさすがに良くないと思ったことが大きい。


 シュティアはとは違い、カナは無表情で何も言わないまま。

 逆にそっちの方が怖い。


 視線を感じ向けると、シュティアが涙を我慢するかのようにじっと俺を見てくる。見てくるというより、睨んでいると言った方がいいな


「大丈夫だ、すぐ戻ってくる」

「あの……零さん。それ……」

「言うな」


 フラグ発言であることぐらい自分でも分かっている。

 それよりもまずはシュティアをどうにかしなければならない。本人はまだ納得していない。


 結局それから1時間ほど、俺はシュティアを納得させる作業に俺は入った。そのため実際に出発したのは昼近く。予定通り俺とヴェーヌ、ウーラで出発した。






 魔法陣を使ってアルール王国の領土内へ。だが出た場所はアルール王国の王都の近く。予想では【ウィーン】に出ると思っていたが、ウーラが別の転移装置を使うと事前に教えてくれていたので王都近くに出たと分かっている。

 ただいつも通り森の中に隠されるようにある洞窟の中なので、本当に王都近くなのかは分からない。


「この3人って、かなり珍しい組み合わせですよね?」

「そういえばそうだな」


 洞窟から出て森の中を歩いているとヴェーヌが声をかけてきた。確かにここにいる3人での行動はない組み合わせだ。


「まあこういう組み合わせもいいかもな」

「それ聞いたらシュティアちゃん、間違いなく怒るわよ?」

「……確かに」


 ウーラの言う通り、シュティアなら間違いなく怒ってくる。


 そんな中味のない話をしながら草原を移動する。徒歩でもよかったのだが、予想以上に王都と森の位置が離れていた。そのため少しばかし軽装甲機動車で移動。


 ある程度近づいたところで降り、城門まで歩いて向かう。


 王都に入るために並んでいる列だが、そこそこ長い。戦争のためにいなくなっていた人たちが戻ってきているのだろう。そんな列に俺たちも加わる。


 いつも通り検査を受ける。久しぶりに冒険者である証拠のプレートを見せる。

 これで後はお金を払えば通れる。


「期限が切れている」


 門番の言葉を聞いて、俺は一瞬思考が止まった。

 切れている?


 門番はそう言いながら返却をしてきた。


 そう言えば、なんやかんやあり、ギルドで依頼を受けていなかった。

 門番の言う『期限が切れている』というのは、凍結されていると言うことか?


 結局お金を払い、城門をくぐり中へ入る。

 近々依頼を受けないとな……


 レールンに向けて進軍した以来見ていない。多分だが1か月ぶりだ。その間に王都はほとんど元に戻ったように見えるほど復旧している。


 目的はエルフと獣人を受け取るということ。そのため一直線に城へ向かって歩いて行く。



 街に入った時のようにすんなりと城の内部へ。


「少し待ってろ。確認してくる」


 ――というわけにもいかなかった。門番に見事止められた。

 5人ほどいる門番の内、1人が城の方へと駆け足で向かい始めた。


「なんですんなり入れると思ったのかしら?」

「かなり前に自由には入れるようにしてくれただろ?」


 俺が言っているのは、初めてアルール王国国王に会った時の話。まだ幼いエマ王女に気に入られた俺が漬け込むようにしてお願いをしたことだ。


 そんな俺の言葉を聞いた2人はどこか呆れた表情をしている。


「あなた、自由に城内に入ってもいいことを証明するものを貰ったかしら?」

「そんなものあるのか?」

「当たり前ですよ」


 ウーラの質問に俺が驚いているとヴェーヌが怒った。


 確かに証明するものがないと、自由に出入りしていいことを許可したものかどうか分からないな。


 城に向かった兵士の方を見ると、城の方から1人の兵士が走ってきているところだった。

 その兵士は門番に1言2言話す。頷いた門番は俺たちの方を見てきた。


「確認できました。どうぞ」


 どのような説明を聞いたかはわからない。だが通ることが出来たので良しとしよう。



 城内に入った俺たちはメイドに迎えられた。どうやら次期国王が待っているようだ。

 メイドの案内で執務室に移動。


「よく来たね。座ってくれ」

「失礼します」


 次期国王に座る用促されたので、俺はソファーに座る。ヴェーヌとウーラも座った。向かいに次期国王が座る。

 手で促されたためか、飲み物を出したメイドは下がっていった。驚いたことに護衛をするためにいた兵士も下がっていった。


「さて。それじゃあ要件を聞こうか」

「単刀直入にいいますと、獣人とエルフについてです」


 どのように切り出していいか分からなかったが、相手が先に切り出してきたので、俺は要件を伝える。

 それと同時に、インベントリから巻物を取り出してテーブルの上に置く。


 それを手に取った次期国王は開いて読み始めた。

 その間、俺たちはじっと待つ。



「どうやら勝ったようだな。2種族については今から準備をする。付いてきてくれ」


 そう言った国王は城にある住居区画へ向かった。

 そこには手当をされた獣人とエルフがいた。人数にするとおよそ40名。


 急ぐほどでもないが、仕事もあるだろうとのことで俺は後にし、大人数を引き連れて街の外へ。


 そしてそのまま森へと向かい、転移装置を使ってエルフの郷へと戻ってきた。半日で終わらせることが出来たのは大きい。




 戻ってくると、連れて戻ってきた獣人たちやエルフ達については、エルフに全部任せた。面倒という理由が大きい。

 寝泊まりしている家に戻る。


 どうやら今日は帰ってこないと思っていたようで、シュティアが大喜びして俺に抱き着いてきたので、俺はバランスを崩しそうになった。




「明日には出発するつもりかしら?」

「いや。わからん。メルクール次第だ」

「あの子が戻ってきたら出発と言うことね?」


 夕食を食べながらいつ出発するかを話す。

 出発は、メルクールが自分の周りの整理が終わるまで待つつもり。ただ、あまりにも遅かったら迎えに行くつもりだが……


 それより、アルール王国王都付近から国境へ向かうというのは少々骨が折れそうで心配だ。

 というのも、案外距離がある。できれば転移装置で国境をこえて魔族領に近いところに出ることが出来ればいいのだが……


「近いところに移動できればいいのね? あるわよ?」


 俺が国境を超えることが出来る転移装置を使いたいと説明をするとウーラが自然に答えた。

 あるんかい!


「それより使っても問題ないのか?」

「ええ。多分ね」


 多分か……

 まあ、可能性があるだけ良い。

来週ですが、今のところ2話投稿しようと考えています。というのも、この話が第3章での主人公視点の最後だからです。

残りの2話は別の人の視点にしようと考えています。



かなり身勝手な判断ですが、来週の2話の投稿で一時的に更新を終了させていただきます。1番大きな理由としては、描写があまりにも荒くなってきているからです。

詳しくは来週にでも報告させていただきます。

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