第65話 ウーラの隠し事
情報量が多いです。ご注意ください。
ウーラがしかめっ面で部屋に入ってきたと言うこともあり、俺はもちろんのこと、3人も困惑している。
シュティアとヴェーヌに一瞬だけ視線を向けると、2人と目が合う。
2人が俺に聞き出せと訴えかけているような気がした。
「ウーラ、どうした?」
「……え?」
ウーラが少し驚いた表情を見せる。
もしや自分がどのような表情をしているか分かっていないのか?
「しかめっ面をしていたが、何かあったか?」
「私そんな表情をしていたかしら?」
ウーラが少し困惑した表情をして、確認をとるかのようにシュティアとヴェーヌの方を向いた。2人は小さく頷いていた。
それを見たウーラがどこか申し訳なさそうな表情をする。
「ごめんなさい。自分では出しているつもりはなかったの」
「別にいいが、何かあったのか?」
「少しヴィルヘルミーナ……って言ってわかるわよね?」
「大丈夫だ」
「ヴィルヘルミーナと少し言い合いになってしまったのよ」
ウーラの口から驚くべきことを伝えられた。ヴィルヘルミーナと――長老会メンバーの1人と言い合いになった。それは……
「かなり良くないことですよね?」
「ええ。良くないことよ」
俺が思っていることをヴェーヌが困惑した表情で口にする。本人も思っているのか、目を伏せる。
かなりまずいことぐらいわかる。
「この先大丈夫なのか? 罰とか受けることになるんじゃないのか?」
「わからないわ。ただ、良くて郷からの追放。悪い場合は死刑……ってところかしら」
悪い場合のことを考えて驚きを隠せないのか、ヴェーヌが口元を抑えながら目を見開いている。シュティアもヴェーヌと同じように驚いている。ただ、カナは静かにウーラを見ているだけだった。
驚いている俺たちを見てか、ウーラが少しばかし優しい笑みを浮かべた。
自分が死ぬかもしれない。にも関わらず笑みを浮かべることが出来ることに驚く。
「安心して頂戴。悪い場合が起きる可能性はほとんどゼロよ。人間と違ってエルフは同族には優しいの。よっぽどのことでもない限り死刑はないわ」
それを聞いて少しばかし安心したが、可能性がゼロではないということが原因で不安を消し去れない。
「でも、良くて追放って何を言ったのですか?」
「ヴィルヘルミーナを罵ったわ」
長老会のメンバーの1人を罵る。これまた凄いことを俺の仲間はしたな……
視線を向けるとシュティアとヴェーヌが先ほどと同様に驚いている。
「別にヴィルヘルミーナは罵られても怒りはしなかったわ。それよりも少し笑っていた。ただタイミングが最悪だったわね。ちょうど他の長老会のメンバーが来たの。そしてちょうど私がヴィルヘルミーナを罵るところを聞かれた」
「ウーラが罵ったことを他の長老会の人たちが怒ったというところか?」
「そんなところよ」
ウーラがため息をつく。
悲しそう……というより面倒臭くなったなと思っているような表情に見える。
「悲しそうじゃないな」
「そう見えるかしら?」
「どちらかと言うと、面倒だと思っているように見えるが……」
「あら。あなた心読めるの?」
「ただの勘だ」
ウーラが少し驚いた表情で尋ねてきた。
超能力者じゃああるまいし……
「確かに面倒だと思ってはいるわね。まあ私にとって追放はありがたいことだけれど」
「追放がありがたい?」
想定外の言葉が出てきて俺は聞き返してしまう。
追放と言うことは2度と戻ってこれないことを差すはずだ。ますます分からなくなってきた。
1つだけ予想が出たが……まさかな。
だが合っているかもしれない。
「ウーラ。なぜ追放がありがたい? 昔にヴィルヘルミーナと何かあったのか? それとも他のエルフと何かあったのか?」
「ごめんなさい。疲れているから先に休ませてもらうわ」
まるで俺の質問から逃げるかのようにウーラは部屋を出ていった。
まさか当たっていたのか?
どうしても気になった俺は立ち上がろうとして――
「零さん。やめておきましょう」
ヴェーヌが俺の腕を掴んできた。
それで少しは冷静になれたのか、ヴェーヌが俺の腕をつかんで止めたように、これ以上の追及はしないためにもウーラを追いかけない。
ウーラは言葉の通り休むためなのか、階段を上がっていく音が聞こえ、そして部屋の扉が開閉する音がわずかに聞こえた。
「……レイ。これは、ウーラの……問題。レイが、関わっては、だめ」
話すのが苦手なシュティアだが、しっかりと自分の考えを伝えたいからなのか、声に力を込めるように話す。俺は何も言わないで頷いた。
夕飯を食べた後の片付けはすでに終わっている。
本当ならここで寛ぎたかったが、ウーラのことが心配で落ち着かなかい。紛らわすために何か作ろうとするが、結局のところ鉄などの材料を出して手が止まる。
どうやら落ち着かない気持ちがシュティアとヴェーヌにも伝染したようだ。2人もどこか落ち付かないのかそわそわしている。
「零さん。先に寝ますね」
「……私も」
「ああ」
耐え切れなくなったようだ。シュティアとヴェーヌが部屋を出ていく。カナはヴェーヌに手を引かれるかのように部屋を出ていった。
感覚的に遅い時間だろう。きりがいいので俺も寝るために片付けを始めた。
机や床の上に置いている物をインベントリへと片付けていく。
少し出し過ぎていたので片付けるのに少々時間がかかった。
「ごめんなさい。少し話したいのだけれどいいかしら?」
声が聞こえたので俺はそちらへと視線を向ける。そこにはリビングの入り口に寄りかかるようにしてウーラが立っていた。
「寝ていなかったのか?」
「寝ずに待っていたのよ。少し話したいことがあってね」
ウーラはそう言いながら俺の隣に座る。
話したいこと。先ほどのことだろう。もしそうなら、なぜウーラはシュティア達がるときに話そうとしなかった?
「なぜあの子たちがいる間に話さなかったのか気になるのかしら?」
「俺の気持ちを読んでいるのか?」
「顔に出ているわよ」
ウーラがどこか呆れたような表情をしながら俺を見てくる。相変わらず人の心を読むのがうまい。
俺もその力が俺も欲しい。案外便利そうだ。
「安心して頂戴。貴方の心しか読めないわ」
「冗談でもそういうことは言わないでくれ」
どっと疲れが出たように感じ、ソファーの背もたれに体重を預ける。
分かっていても、こういう冗談は本当にやめて欲しい。
「あの子たちがいる間に話さなかった理由は簡単よ。私がやっていることは裏切りに等しいこと。それを知った時、あの子たちは絶対に許さない。特にシュティアちゃんは、私を殺そうとしてくるかもしれないわね」
おい、待て。いったい何を話そうとしている?
そう聞いてしまいそうになったが、変に口を挟むより、黙っていた方が早く聞けると思い、どうしても口を挟みたいところを我慢する。
「肝心である、あなたに聞いて欲しい話をしていいかしら?」
「ああ」
「それじゃあ始めに、あなたに謝らなければならないわね。ごめんなさい」
「え?」
突然すぎるウーラの謝罪に俺は驚いてしまった。
記憶にある限り、ウーラが俺に謝らなければならないことはない。時々俺をからかうと気があるが、謝らなければならないほどではない。
俺が驚いている中、ウーラが説明を始めた。
「前に言ったと思うけれど、私は長老会に言われてあなたについていくことになったわ」
「ああ。覚えている」
「でもただついていくのが私の仕事ではなかったの。目的はあなたの監視」
ウーラは真剣な表情で俺の目をじっと見てくる。まるで俺の心を読んでいるかのように。
俺は黙ったまま待つ。
「監視する目的はドローンなどの兵器をいつ、どのようなタイミングで、誰に対して使うか。監視を行う理由は、エルフに向けて使う可能性があったからよ。そしてもし、エルフに向かって使うことが確認出来たときに私はしなければならないことがあった」
ウーラがそこで一度言葉を止めて、決心するかのように大きく息を吸って吐く。
そして再び俺の方をじっと見てきた。
「それは、あなたの殺害よ」
やらなければならないことと聞いて、なんとなくだが何を言うのかは予想はできていた。
俺の捕縛か、使用を止めるか、俺を殺すか。どれかだとは予想をつけていたのでそこまでは驚かなかった。
まあ、自分たちの命が危ないにも関わらず、俺を放っておくとは思わなかった。
それにウーラが言っていた、シュティアに殺されるかもしれないと言っていた理由が分かった。
俺のことを思うシュティアは、ウーラが俺を殺すかもしれないと知った場合、それを未然に防ぐために、ウーラを先に殺す恐れがあったといいたいのだろう。
だがそれなら、なぜ俺に言った? シュティア達に相談するかもしれない恐れだってあるんだぞ?
考えれば考えるほど、沼にはまっていくかのような感覚に陥る。
「もちろん、私はあなたを殺すつもりなんてなかった。例えあなたがエルフに向かって兵器を使おうとしたとしても」
頭の中で考えていると、まるで答えるかのようにウーラが説明をする。
「ちょっと待て。その言い方じゃ、まるでエルフを見捨てるかのように聞こえるんだが?」
「ええ。その通りよ。エルフ全員の命より、あなた1人の命を優先するわ」
ウーラが何を考えているのか分からなくなってきた。
同じ仲間であるエルフより俺の命を取るだと? 何を言っている?
「はっきり言って、私はエルフが嫌いなの。私自身同じエルフなのに。……笑えるわよね」
まるで自嘲するかのようにウーラは乾いた笑みを浮かべる。
いったい、ウーラとエルフの間で何があった?
「ウーラ。お前――」
「ともかく、私はあなたの監視をするためにあなたと一緒にいたの。そして今日でその任務が解かれることになるはずだった。理由はいくつかあるけれど、大きな理由としては付いて行かなくてもいいという判断を長老会のメンバーが出したから。でも私はあなたに付いて行くことを選んだ。それからいろいろと言い合っているうちに罵ったの」
いっきに情報を与えられ、俺の頭が悲鳴を上げそうになっている。
ただきちんと理解できたところが、ウーラが長老会メンバーの1人のヴィルヘルミーナを罵って、追い出されそうになっていること。他にもいろいろと説明があったが、いまいち理解できなかった。
1つ心配なことがあり、それは俺に飛び火しないかどうかだが……
いや、違うな。俺よりウーラがどうなるか心配だ。自分に飛び火したらその時はその時。今はウーラのことだ。
罵ったから、シュティア達にも言っていた通り罰を受けるということなのだろう。
「まあ今言いたいことはそのぐらいね。隠していてごめんなさい」
「気にするな。誰だって何かしら隠していることがある。それにウーラは仕事でしていたんだろ?」
俺の顔を見ていたウーラの表情がやわらいだ。今はこれでいいんだろう。
安心した瞬間、ウーラが言った言葉が頭の中を横切った。それと同時に気になることが出来る。
「今言いたいことって、まだ何か言いたいことはあるのか?」
「……ええ」
「でも言いたくはない。もしくはまだ言うときじゃないと」
「そうよ。言えなくてごめんなさい」
「気にするな」
ウーラが申し訳なさそうな表情をする。慰めるためにも頭を撫でてやろうかと思ったが、すぐに止めた。
頭を撫でて喜ぶのはシュティアかメルクールぐらいだ。
ウーラが話したことを頭の中で整理していると、1つ思い出した。
「そう言えばアスノハの奪還を行った夜に誰かと話していたように感じたが、あれはもしかして……」
「あなたの予想通りだと思うわ。あれは近くにいたエルフと情報をやり取りしていたの」
他のエルフと情報をやり取り? ウーラの話を聞く限り、ドローンのことをやり取りしていたとだと思うが、気になったのはそこではない。
あの時ウーラの近くには、本人以外の気配が一切なかった。気配を消しているのであれば話は変わってくるが、スキルはレベルによって力が変わってくる物があるのでそのあたりは怪しい。
例えば、レベル10の人の【気配感知】とレベル50の人の【隠蔽】なら、レベル10の人はレベル50の人を見つけることができない。
もしレベル50の人の【気配感知】とレベル10の人の【隠蔽】なら、気配を感じ取ることが出来る。
そこから考えると気配が一切なかった理由は、俺とのレベル差があったことになる。だが俺のレベルは高い。この世界の人のうち、俺のレベルを超えているなんてほとんど考えられない。
じゃあなぜ、気配を感じ取ることが出来なかった?
まあ、聞いたとしても答えてくれないだろう。
この短時間で解決したことがいくつかあるが、反対にわからないこともできたので、一度頭のなかで整理するか、紙に書きだして整理しないとな。
その後はどちらも話さない時間ができる。居心地は悪くはなかったのでいいだろう。別に良かったと言うことでもないが。
「今度こそ寝るわ」
「ああ」
ウーラは立ち上がると部屋から出ていく。一緒に寝室へ向かうのは躊躇したために時間差を付けることにした。
ほどなくして扉の開閉する音がわずかに聞こえた。俺も寝るために寝室へと向かう。
疲れのためか、ベッドに入ると瞼が重たくなってきた。
すぐに眠ることができそうだ。
――と思っていると、ノックなしに扉が開閉する音が聞こえた。
ウーラ……のはずはないだろう。ヴェーヌもこんな真夜中に、しかもノックなしで入ってくるはずがない。
瞼を閉じたまま頭の中で考えていると、俺の寝るベッドに乗ってくるのが分かった。眠たい瞼をゆっくりと開く。暗闇になれたためか顔がはっきりと分かった。
「何している、シュティア」
「……夜這い。最近、忙しかったから」
俺の顔を覗き込むようにして笑みを浮かべたシュティアがつぶやく。
ここ数日の疲れのためか、ついため息をついてしまった。
「……だめ?」
俺のため息を拒否ととらえたのか、シュティアが尋ねてくる。今にも泣きそうな目をしている。首を横に振る気も起きなく、目を閉じるとつい2度目のため息をついてしまった。
確かに最近は忙しかったが、今は休ませて欲しい。
「気になったんだが、話聞いて……っておい、何している」
「……準備」
ほんの少し視線を離した瞬間、シュティアが俺の太ももの上に座ったまま上着を脱ごうとする。
俺が尋ねると、『何を当たり前のことを』と言うかのような表示で見てきた。どうやらシュティアは引かないようだ。
「……何言いかけたの?」
「ずっと起きていたのか?」
疑問形に疑問形で答える。先にこれを確認しておいた方がいいような気がしたからだ。
シュティアは何も言わず、こくりと頷いた。
「じゃあ、ウーラと俺の会話を聞いたか?」
「……」
「シュティア?」
名前を呼ぶと、シュティアが先ほどより小さく頷く。どこか申し訳なさそうな表情をしている。盗み聞きをしたという罪悪感でも沸いているのだろう。
俺はそれに触れないことにした。
どのくらい聞いたのかはわからない。ただ大事なところである、ウーラが俺を殺す使命を与えられていたことを聞いたのかがとても心配だ。
俺は上半身を起こす。その間にシュティアは脱ぎかけていた上着を直すように気直し始めた。
「どのくらい前から聞いていたのかは尋ねない。ただウーラの仕事を聞いたのであれば、頼むから殺そうなんて思わないでくれ」
それが1番怖かった。仲間内での殺し合いなんて見たくない。仲間内での殺し合いを抑えることが出来るのなら、自分の命を差し出してもいいと思ってしまう。
「……大丈夫。心配……しないで」
俺の頬を両手で包み、微笑みながらシュティアは話しかけてくる。心配しないでと言った通り、柔らかい言い方で俺の心配を取り除こうとしているのが分かった。
ただ、心配しないでという言葉は、ウーラを殺そうとしていないことを指しているのか、それともウーラを殺そうとしていることを刺しているのかはわからない。
これだけはシュティアが俺の気持ちを汲み取ってくれることを祈るしかない。
「……でも、今だけは……私を、見て」
「仕方ないな」
俺は苦笑いを浮かべてしまった。だがシュティアは機嫌を損ねることなく、逆に嬉しそうに笑顔を浮かべた。
そしてそのままシュティアは俺を押し倒し、俺に覆いかぶさった。
この話、情報量が多すぎて、書いている途中に作者が混乱していました。
そういうこともあり、もしかしたら誤字脱字があるかもしれません。また、混乱によって思考能力が若干低下しているために、少しおかしいところもあるかもしませんので、後日修正を加えると思います。
(後書きも、思考能力が若干低下したまま書いております。情報量が多いのはだめ。絶対)




