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第59話 レールン王国王都陥落(上編)

長かったので2つに分けました。

 アルール王国の街【タラッタ】に立てこもったレールン王国の兵士たちを倒し、解放してから数日。いや、十数日と言った方がただいいのだろうか。すでに何日たったかなんてわからない。

 数日前に大規模な集団と戦闘したが、それ以降は兵士の姿を見ない。全滅したのではないかと、兵士の間で言われるほどだ。


 敵と遭遇しなかったため、予定よりも早くレールン王国王都の前まで来るとができた。俺にとってはおよそ3か月ぶりだろう。詳しい日にちなんて覚えていない。


食料に関しては、戦闘が起きることを予想していたためにやや多く持っていたと言うこともあり、まだ余裕がある。



 本当はそのままけが人を出すことなく、相手が降伏して王都内に入ることが出来ればよかったが、そうもいかないのが戦争と言うものだろうか。


 まるで後ろには引けないかのように――実際に引くことが出来ないので、レールン王国の兵士たちは街の中に立てこもっている。

 そして王都を囲んでいる城門の上には、他の街よりもさらに多くの大砲が備え付けられており、いつでも撃てるように準備されているのが遠目からでも見える。厄介なことに、カタパルトのような物までちらほらと見える。



 2日ほど前の昼には王都付近に着いたが、さすがにすぐに戦闘をするのは厳しいと言うことで野営をすることとなった。

 そしていろいろと準備ができた本日、太陽が地平線の向こうから顔を覗かせる時間帯から準備が行われた。昨日の間にわずかながらの援軍も到着し、準備はできている。

 数少ない攻城兵器もきちんと準備がされている。


 ただ、こちらの兵士にも家族はいる。無駄な死者を出したくはなかった。

 それにあちらも無駄な戦力を失わないはずだということで、兵士の2人に書状を持たせて降伏するように伝えに行かせたが……



「ダメか……」

「……見たいですね」


 前列にアルール王国騎士団の団長と俺がならんで様子を見ていたが結果は良くなかった。兵士2人が城壁に近づいた瞬間、いきなり城壁の上から矢を浴びせられていた。


 幸い兵士2人のうち、1が魔法使いであったと言うこともあり、魔法で矢を防いだが、無理だと判断して戻ってきている。さすがに大砲やカタパルトを2人に使う気にはなれなかったようなので、それは幸いと言ってもいいだろう。


 出来なくもないが、大砲の球であったりカタパルトから発射された石を魔法でどうにかするのは、少々厳しい。

 見知らぬ2人だが、無事でよかった。地球には魔法はないので、同じような状況に立たされると死んでいたかもしれない。



 2人が無事に戻ってくると、団長は2人から話しを聞き労いの言葉を掛けると、国王に説明をするためにと後ろに下がっていった。


「……レイ」

「どうした?」


 隣に立っていたシュティアが小さい声で俺の名前を呼ぶ。そちらを見ると、シュティアが俺の顔をじっと見ていた。

 ものすごく近くに人がいるという状況ではないので、俺の名前を呼んでも問題はないと思うが、もう少し気を付けて欲しい。


 シュティアが次の言葉を探しているような気がして黙って待っていると、言葉が見つかったのかつぶやくように尋ねてきた。


「……怖い?」

「女王や学校の奴に会うことに対してか? それとも戦闘が始まることに対してか?」

「……両方」

「学校の奴に会うことは怖くはない。戦闘に関してもそこまで怖くはない」


 俺はそう言うが、シュティアはじっと見てくる。じゃあどうしたの? とでも言いたいのだろう。

 俺は、何もなく大丈夫だと伝えるために、シュティアの頭を優しく撫でる。




「ゼロ。すまないが来てくれないか? 作戦を伝える」

「わかりました」


 王都の方を見ていると、隣に来た団長が声をかけてきた。

 俺は言われた通り付いて行く。もちろんシュティア達5人も付いてきている。


 指令所のようなところに連れてこかれると、国王に座るように促される。席の順はいつも通りといっていいのだろうか。アルール王国王都の城で行われた時の席順だ。


 俺が座ると、すぐさま国王から作戦が伝えられた。作戦はものすごく簡単だ。


 まずは俺がレールン王国王都の門の扉を破壊しに行く。そしてある程度、城壁の上にある防衛用の兵器を破壊し、兵士たちは動けないようにする。動けないようにといっても、殺さなくていいらしい。


 その間にタイミングを見て兵士たちが突撃するという物になった。

 つまり【アスノハ】での作戦と同じ。


 この作戦にはシュティアはもちろんのこと、メルクールにヴェーヌ、ウーラが猛反対。カナも不満を漏らしていたが、4人に比べればまだマシだ。

 メルクールにヴェーヌとウーラなんて、今にも得物を振りかざしたり無詠唱魔法を使いそうになった。


 特に問題はシュティアで、3人とは違い詠唱を即座に始めた。しかもその詠唱が戦略級魔法である【ニヴルヘイム】の物らしいから混乱がもの凄かった。


 物らしいというのは、俺は詠唱を知らないため周囲の言っていることから予想をしたためだ。例え奇跡的に成功したとしても成功させることが可能であると言うことに変わりはなく、次も成功させる可能性があるということ。

 そして今、この場で成功させてしまうとマズイと言うことで混乱していたようだ。


 さすがにここで戦略級魔法を使われるのは困るので、俺が全力で止めたこともあり問題はなかった。ただ国王達大人はシュティアが怖いためか、全員が俺に敬語で話し始めるのでこれはこれで困った。



 戦略級魔法の【ニヴルヘイム】だが、兵士たちが使うには詠唱が長い上に、息が合わなければ発動しない。それも低い確率でだ。

 もし成功したとしても、魔法使いたちの魔力が底をつく。戦闘中にそれは良くないと言うことで却下になった。


 先ほど言っていたように、成功させる可能性があるシュティアを使う案も出たが、倒れるところを見たくないと言うことで俺が却下した。


 結局俺がシュティア達を説得し、【アスノハ】での作戦と同じような作戦になった。





 作戦は決定から半時間ほどで実施された。やはり1度やったことがあると言うこともあり、準備は苦労はしなかった。

 そう。準備は……


 苦労したのは城門まで近づくまで。他の街と王都では2倍はあるかと思うほど、防衛設備と人員の量が明らかに多かった。特に大砲。

 タイミングをずらしているのか、1回に跳んでくる砲弾の量は同じだが発射の間隔が短く感じる。さらには弓兵と魔法使いの数も多いのか、走る前に攻撃されるなど、ろくに近づけなかった。

 アルール王国軍側からの、カタパルトでの援護があってもだ。


 ようやく城門に近づいたのは7分ぐらい経ってから。それまでずっと走り続けていた。


 王都と言うこともあり、城門も大きい上に硬い。そのため手で投げないと使えない対ドラゴン用のミサイルを2つ使ってようやく壊せた。もちろん今回はきちんと離れたところから使用したと言うこともあり、気絶するという間抜けなことはしなかった。




 王都の中に入ったため、アルール王国の勝ち――


 と言うこともなく、門をくぐった先にいた兵士と乱戦になり、城壁の上に上がるのに苦労する。

 上がったら上がったで、今度は弓兵であったり魔法使いとの戦い。散々な戦いであったことは分かってもらいたい。


 それでも何とか城門付近は制圧。そこからレールン王国の兵士たちが流れ込んできて、一気にこちらが優勢となった。


 もちろん王都に入ったからと言って、すべてが終わったわけではない。この戦争を終わらせることが本当の終わりだ。



「ゼロ。国王様がお呼びだ。向かってくれ」

「わかりました」


 城壁の上に上がってきた兵士の1人が俺に声をかけてくる。すぐさま俺は城壁の上に登ってきた階段を降り、近くにいた兵士のもとへ。そこで国王のいる場所を尋ね、向かう。


「来たか、ゼロ。済まぬが仕事だ」


 俺が近づくと同時に国王が声をかけてきた。どうやら休みを取らしてくれないようだ。

 レールン王国兵士は街の制圧を行うと言うことで、俺はレールン王国のアリーシュア女王を確保しに向かうよう、合流した国王から直々に指示された。


「なぜ俺なのでしょう?」


 突然言われたときは驚きのあまり理由を聞いてしまう。

 聞いた後で、何かしらの考えがあり指示を出してきた。詳しくは教えてくれなかったので、別に知らなくてもいいものであると気が付いたが、言ってしまったので後には引けなかった。


 幸いと言っていいのだろうか。国王は嫌な顔を1つせず理由を話した。

 俺に頼んだ理由は、1番早く城にたどり着けるかもしれないというもの。確かに早く着くかもしれないが、兵士が行った方がいいのではと思い直す。

 ただ、今回は冷静だったのでそれ以上は聞かずに従うことにする。


「ではゼロ。頼めるか?」

「やってみます」

「やってみるじゃない。やるかやらないかだ!」

「わかりました。やります」


 返事をすると、俺はすぐさま女王を捕まえるために城へと向かうことにした。

 それより先に、シュティア達に報告しておいた方がいいだろうか? あとで何か言われそうだ。



「ゼロ。ついていった方がいいですか?」

「いや、大丈夫だ。1人で行く。それより4人と一緒に動いてくれ」

「はい」


 ちょうど近くにいたメルクールが、俺のもとに来るなり尋ねてきた。

 メルクールを含むシュティア達5人とは、俺が王都内に入るための道を切り開く際、一度分かれていた。国王から指示を貰ったと言うことで、そのことを伝えたいと思っており、タイミング的にはちょうど良い。


 俺はメルクールに1人で行くことを伝える。メルクールは返事をすると、俺に背を向けて少し走ったかと思うと、離れたところに待機していたシュティア達4人のところに行く。メルクールが向かうまで全く気が付かなかった。きちんとカナもいる。

 メルクールが何かを話したらしく、合流したメルクールと共に4人はこちらを見て来る。


 メルクールの説明だけでは足らなさそうだな。

 5人に近づく際、絶対何か言われると感じてしまったのは、やはりそこそこ長く共にいるからなのだろうか。



「あなたはまた無茶をするつもりかしら?」

「……ゼロ。無茶は……ダメ」

「2人の言う通りです。今からでもいいのでやめてください」


 案の定といっていいのか心配された。カナは何も言わないが、じっと俺の方を見ている。

 だが5人がいくら心配したとしても、俺は引くつもりはない。


「大丈夫だ。何も心配することはない。城門を破壊するよりは簡単だ。すぐ戻る」

「ゼロ。その言葉はまるで、アメリカのホラー系映画に出てくるサブキャラが死ぬ間際にいいそうな言葉ですよ……」


 うん。ヴェーヌの言う通りだ。我ながらマズイことを言った。


「えいが……がどういうものかは今は聞かないでおくわ。あなた、死ぬなんてことしないでよね?」

「……死んじゃ、ダメ」

「本当ですよ! やめてくださいね!」

「何度も言うが、大丈夫だ。心配するな」


 ウーラ、シュティア、メルクールと順に心配そうにするので、大丈夫ときちんと伝える。

 カナは相変わらずじっと俺の方を見ている。そこで1つ思い出したので伝えておくことにした。


「ファイブ。ワン達と一緒にいてくれ。ドローンを出しておくから、必要なら使え。銃弾は補給をしていないから銃は使えない」

「わかりました、ゼロ」

「じゃあ行ってくる」


 カナが頷いたことを確認すると、俺はドローンを出す。相変わらずデカい。場所を良く取る。

 出すとすぐに女王がいるはずの城に向かって走り始めた。5人のことは心配だが、大丈夫だろう。




 道中は器用に建物の上を走る。というのも、下の道を走っていると敵と交戦しなければならないからだ。


 いくらアルール王国が優勢でも、ここはレールン王国の王都。自分の庭にいるレールン王国兵士を相手にしながら戦っているため、王都はまだまだ制圧できていない。

 制圧できていないと言うことは、王都までの道には兵士がいる。時間はまだあると思うが、いちいち戦っている暇はない。そこで取った方法が建物の屋根の上を走っていく方法。


 これだと早く着くが、ものすごく目立つ。

 そのため時々俺に向かって矢であったり魔法が飛んでくるが、狭い屋根の上を全力で走り、避ける。


 屋根の上を伝ったとしても、限界はあった。城と街の間には空間があり、そこで地面に降りる。


「敵だ! 全員構えろ!」

「レールン王国騎士団の名に懸けて、ここを通すな!」


 20人程度と数は少ないが、レールン王国騎士団がまるで最後の壁になるかのように待機していた。全員見事な鎧を着ており、手には剣が握られている。ありがたい歓迎だ。だが――


「じゃまだ。そこをどけ」


 少々急いでいる俺からすればじゃまでしかない。

 もちろんそれで道を開けるわけがなかった。レールン王国兵士は俺との距離を詰めるかのように近づく。


 俺はインベントリからハンドガンを取り出し、銃口を騎士団に向ける。

 わざわざ剣で戦うつもりはない。


 この世界には銃はあるが、火縄銃のような物。ハンドガンは見たことがないはずだ。そんな物を見たからなのか、その場に一瞬止まった。明らかに動揺している。

 だがさすが騎士団の兵士と言ったところか。こちらに向かってくる。


 俺は兵士の太股に銃口を合わせ、引き金を引く。

 銃口から勢いよく飛び出した銃弾は飛翔したのち、兵士の鎧を貫通。撃たれた兵士はバランスを崩し、走っていた勢いにより、地面を転がる。

 それを見た兵士はその場に急停止する。


「お前、何をした!」

「攻撃をしただけだ」


 俺はそういいながら、ほとんど棒立ち状態の兵士に向かって銃口を向けると、再び引き金を引く。動いていないと言うことで、狙いやすかった。

 兵士が状況を理解して動き出すまでにマガジン内の銃弾をすべて使い切る。もちろん太股を狙った。10発入っていたが、銃弾がなくなったためにリロード。


 敵兵士は10名が地面に倒れており、10名ほどまでに減っている。そして残された10名ほどはようやく状況が理解できたようだ。


 俺がリロードを終えるまでに、兵士の1人が接近してきた。剣を振れば俺に当たる距離。

 俺はバックステップで距離を稼ぎながら、インベントリにハンドガンをしまい、代わりに刃渡り1.5メートルの大剣を取り出し、相手の攻撃を防ぐ。


 金属と金属がぶつかる音が響く。僅かだが火花が散った。


「一方的に部下を殺されるとはな……」


 声に聞き覚えがあった。兜の隙間からわずかに見える顔を見ると、レールン王国騎士団の団長だった。最後に会ったのが2か月前と言うことで名前は忘れてしまったが……


 のんきなことに、俺は2つのことに驚かされた。

 1つ目に驚いたことは、はなぜ団長がここにいるのか。本来は前線に出ていないといけないはずだ。ここにいると言うことは、前線にいなかったことになる。

 2つ目に驚いたことは、まさかこのようなシーンで再開するとは思ってもいなかったこと。ただ、男同士の再開だ。あまり感動要素はない。


「そういえば、さっきお前が使っていたような物と同じようなものを持っていた者がいたな」

「ほう? それは意外だな」

「意外だろ? なあ、レイ」


 まるで俺が(おれ)であることを分かっているかのように尋ねてくる。よく漫画などでこのようなシーンが書かれており、相手が動揺しているが、いざ自分がそのような立場に立ってみるが、案外動揺しないものだ。


「俺が零だったらどうするつもりだ?」

「レールン王国につかないか? 俺はお前を切りたくない」

「切りたくないではなく、切られたくないの間違いじゃないのか?」

「ずいぶんと軽口をたたくようになったな」


 剣と剣で押し合うかのようにしながら、俺とレールン王国騎士団の団長は話す。

 団長は余裕があるかのように話すが、兜の隙間から額に汗が流れているのが見えた。対する俺は案外余裕がある。やはりステータスの差が大きいようだ。


 その間にも、他の兵士たちは俺を取り囲むように移動する。

 ああ、面倒だ!


 しかも厄介なことに、取り囲んできた兵士の1人が俺を刺そうと剣を突き付けてきた。それを避けるために、剣を押しこみ団長との距離を開ける。それと同時に体をわずかに動かして剣先をよける。さすがにこのままでは不利だ。


 インベントリからハンドガンを取り出し、俺を刺そうとしてきた兵士の太股に銃弾を撃ち込む。兵士は痛みのあまり唸りながらその場に倒れる。


  だが撃っている間に若干の隙ができてしまった。もちろんそれを団長が見逃すはずがない。

 すぐさま切りかかってくる。タイミング的にインベントリに入れる時間がないため、左手のみで剣を持ち、防ぐ。

 左手のみだとやはり押し込まれる。すぐさまハンドガンを仕舞い、剣を両手に持ち変えて押し返す。団長は後ろに跳ぶように下がった。


「ステータスがかなり高いな。この2か月半ほどどこで何をしていた?」

「レベリングだ」

「普通のレベリングではここまでいかんぞ?」


 団長が俺の顔をじっと見てくる。俺はおっさんに凝視されて喜ぶような者ではない。

 視線をわずかに周囲へと向ける。人数は先ほどの俺の攻撃で減った――のではなく増えた。


 正しくは、回復したのか周りに合流している。ポーションでも使ったのだろう。これじゃあいくらやってもきりがない。先を急ぐか。


 俺と、俺を囲むようにいる兵士の周りには十分な広さがある。俺は身体強化を使い、人の頭上を飛び越えるように飛ぶ。ステータスと身体強化により、軽々と飛び越えることが出来た。

 そのまま城の内部につながる扉に向かって走る。


 後ろから兵士たちが付いてくるのが分かったが、相手をしている暇はない。


 扉をくぐると、すぐに扉を閉める。すかさずインベントリから鉄を取り出し、両方の扉の取っ手同士を固定し、開かないようにする。これで少しは時間稼ぎができるはずだ。


 追いついたらしいレールン王国の兵士たちは扉を叩いているが、開く様子はない。近くには出入りできそうな窓も見えない。よかった。


 城内に入ったのは良いが、肝心の女王の場所はわからないので、行き当たりばったりだな。


 そんなことを思っていたが、どうやらその必要はなさそうだ。

 男女2人の日本人が俺の前に立ちはだかる。どこかまだ幼さが残っている。1年生と言ったところか。装備は冒険者のようなもの。がちがちの鎧装備ではない。


「お前、敵だな!」

「いや、味方だ。女王に知らせがあって来た」

「嘘をつくな!」

「どうして嘘だと思う?」


 我ながら悪役に突っ走っているなと思ってしまうが、俺は会話を続けた。ここでこの2人から女王の居場所を聞き出せれば、手間が省ける。


「怪しい奴はみんなそんなことを言う!」


 こいつ面倒臭いタイプだ。もちろん味方である証拠があればいいが、そんなものない。信じてもらう手段なんて思い付かない。強硬手段をとるか。


「お前面倒な奴だな……」

「近づくな!」


 俺は話しながら近づくが、男子生徒は俺を睨んでくる。男子生徒と俺との距離が10メートルに近づいた瞬間、【縮地】で男子生徒に近づく。縮地がぎりぎり届く範囲からだ。手加減をして回し蹴りをする。蹴りは腹部に当たり、男子生徒は後ろに数メートル飛んだ。

 男子生徒はそのまま床を転がるように倒れた。剣は男子生徒から離れたところに飛んでいく。


光琉(ひかる)!」


 どうやら男子生徒の名前は光琉らしい。

 俺は男子生徒の名前を呼ぶ女子生徒の後ろに回り込むと、女子生徒の両手を後ろに回し、左右の手首を左手でつかむ。右手には刃物を手にしており、女子生徒の首元に当てる。よくある人質の取り方に似ている。相変わらず、悪役まっしぐらだ。


 その間にようやく男子生徒が立ち上がった。


「動くな。女王の居場所を吐け」

由実(ゆみ)を開放しろ!」


 どうやらこの女子生徒は由実という名前らしい。2人の呼び方からして、付き合っているのか?

 まあ、俺にはシュティアがいるのでどうでもいいが……


 男子生徒は剣を拾い、構える。

 だが俺が女子生徒を人質に取っていると言うことで、近づけないようだ。


「取引だ。女王の居場所を吐けば、解放する」

「光琉、言っちゃ駄目!」


 女子生徒が余計なことをいう。そこは言うように促して欲しかった。

 女子生徒の腹部をナイフの柄尻で殴る。痛さのあまり、女子生徒がその場にうずくまろうとするが、俺は無理やり立たせる。


「由実!」

「おっと、近づくなよ? こいつ死ぬぞ?」

「お、お前!」


 俺の忠告を聞き、男子生徒がその場に止まって俺を睨む。

 見事なまでの悪役だ。数分後に死んでしまうのではないかと少々心配。


「だ、大丈夫だから……」

「由実……」


 爆発してもいいんじゃないかと思ってしまうような、ピンク色の雰囲気を2人が出す。なんだか蚊帳の外に出ているような気が……


「わかった。言うよ」

「女王の居場所か?」

「ああ。女王は大広間にいる」

「そうか」


 少々手間取ったが、無事に聞き出せた。それじゃあこの女子はもう用済みだ。

 俺は女子生徒の()()()()をナイフの柄尻で殴る。よくある気絶のさせ方だ。当たり方が良かったのか、女子生徒は糸が切れた人形のように倒れそうになる。

 俺はすぐさま支え、ゆっくりと地面に寝かせた。


「由実!」

「大丈夫だ。気絶しただけだ」


 男子生徒が今にも切りかかってきそうな感じで近づいてくる。俺は大丈夫であることを伝えると、その場女王のいるであろう大広間に向かう。


「おい! お前の名前はなんだ!」

「……聞いてどうする」

「いつかリベンジをしてやる!」

「もう会うことはないと思うが……」


 俺はここで考える。別に言わなくてもいいような気がする。

 多分だが、日本に戻るまで2度と会うことはないと思う。それに言ったからといって、本当にリベンジされるとは思わない。


 結局、俺は何も言わずに女王がいるであろう大広間へ走って向かった。

戦闘シーンの描写はやはり苦手なので、ついつい避けてしまいます。

きちんと書かないといけないのはわかっていますが……

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