第56話 アスノハ奪還戦(前編)
「どうやら、街に立てこもっているようだな」
「はい」
野宿をした場所からさらに4日ほど歩いた場所。
平原の中、国王と副団長――正しくはアルール王国の軍が1つの街を見ていた。街の名前は【アスノハ】。俺たちが以前、武道大会のために立ち寄った街だ。
正しくは武道大会に参加しようとしていたが、途中で邪魔が入った街だが。
現在の状況だが、街に着いたのはついた。ただ国王の言う通り、街にはレールン王国の兵士たちが立てこもっている。【アスノハ】はアルール王国の領土だが、そこをレールン王国の兵士たちが乗っ取っている。
もちろん敵であるアルール王国の兵士たちが入らないように城門はしっかりと閉じられ、城壁の上には兵士たちが配置されている。どうやら向こうもこちら側を目視出来ているようで、慌ただしく動いているのが遠めからでも分かる。
こちらの人員は昨日の補給部隊の到着により、かなり増えた。話を少し聞いただけなので分からないが、1万をこえたようだ。
補給部隊が王都へと戻る際には、欠損などの重症患者や捕縛した敵兵士たちを連れて帰って行った。
だが俺の提案により、5人ほど日本人を連れてくる。
「ゼロ。本当に成功するのかね?」
「五分五分と言ったところですね」
国王が隣に立っている俺に尋ねてくる。ただ、その作戦が成功する可能性は低い。
そこそこ待っているが、相手がこちらに攻撃してくる感じはしない。決行するか。
「相手が動きそうにないので、行ってきます」
「ああ。気をつけろ」
「それと、失敗した場合は、言っていた別の手段を使わせてもらいます」
「分かっておる。少々荒いが必要な被害だと思っておる」
俺は別のところにいるシュティア達のところへと向かう。
すでにシュティア達も準備ができているので、俺が近づくと振り返ってきた。
「実行に移すぞ」
「本当にやるのですね?」
シュティア達を見ながら伝えると、ヴェーヌはこちらを見ながら心配そうに尋ねてくる。確かに今からしようとしていることは危険を伴う。だがしなければならない。そうしないとこちら側の兵士の死傷者が増えてしまう。
「本当にやるんだ。行くぞ。立て」
俺はヴェーヌにそう言いながら、この作戦のカギともいえる人を立たせる。
人数は男子3人に女子2人の計5人。全員とも学校の奴らだ。5人とも髪を茶色や金色に染めている。顔立ちは普通。
「お前! ただで済むなと思うなよ!」
「そうだ! こんなことをして、勇者が動かないと思うな!」
男子生徒2人が俺を睨むが、怖くない。逃げられないよう、5人をつなげるように結んでいるロープの先端をつかむと、無理やり引っ張っていく。もしここで立ち上がらないのであれば引きずるつもりだったが、5人はきちんと自分の足で歩いてきている。手間が省けた。
アルール王国の集団から離れるように、街に向かって歩く。
徐々に近づく街の城壁の上には、肉眼でもしっかりと敵兵士たちが見える位置まで来たところで、俺は足を止めた。
「街に向かて横一列で座れ」
「私たちに何をするつもりなの!」
「死にたくなければ座れ」
5人に指示を出したが、女子生徒1人が半分泣き顔で尋ねてくる。もちろん答えてやるつもりはないので、インベントリから出したこの世界の銃をちらつかせ、座らせる。
剣より銃の方が恐ろしいのか、5人は指示に従って座る。
「じゃあ始めるか」
俺はシュティア達に伝えると、インベントリから拡声器を取り出す。これも魔道具の一種だ。魔道具はとても便利です。
俺が準備をしている間にも、シュティア達は日本人5人に目隠しをする。これは最悪の場合に備えてだ。
5人の日本人は突然のことで騒いでいるが、無視する。
俺は拡声器を顔の前まで持ってくると作動させ、街に向かって呼びかける。正しくは、城壁の上にいる兵士たちに向かってだ。
「あー。あー。レールン王国の兵士達と日本人に告ぐ。今すぐ街の門を開けなさい。さもなくば、ここにいる日本人5名を殺す」
言っている感じは、ドラマに出てくる立てこもり犯に警察が説得をしているような感じだが、言っている内容はもはや悪役だ。
隣で聞いていたヴェーヌは俺から離れるかのように1歩移動した。
「それと日本人に告ぐ。君たちが動かなかったら、ここの5名が大変悲しむぞ? 制限時間は5分。1分経つごとに1人ずつ殺していく」
そこで一度拡声器の使用を中断して、日本人に近づく。
気配で感じたのか、5人の体が固まるのが分かった。
「ほら。お前たちからも言ってやれ」
俺はそう言って拡声器を1人の男子生徒の前に持って行く。
その時にヴェーヌが「完全に悪役ですね」とつぶやいていたが、聞かなかったことにしてやろう。
「た、助けてくれ! 死にたくない!」
「それだけでいいのか?」
思ったよりも男子生徒の説得が短かった。まあ、これで相手が動くのであればそれでいいが。
俺は再び拡声器を顔の前に持ってきて呼びかける。
「それでは今から1分間時間を与える。よく考えることだ」
そう言って拡声器を下ろす。まだ使うと言うことでインベントリにいれない。もちろん言葉に出さないでカウントをすることも忘れないようにする。
「あなた、かなりの悪役ということを自覚しているかしら?」
「確かに端から見れば、悪役以外言えませんね……」
ウーラとヴェーヌは呆れているのか、首を横に振っている。
俺は視線を城壁の上に戻す。見た感じ、城壁の上にいる兵士たちに動きは見えない。その間も着々と時間は過ぎていく。
そして1分が経とうとする。門が開く兆しはない。仕方がないか。
「シュティア。できるな?」
「……うん」
シュティアに尋ねると力強く頷いてくれた。後はタイミングが合うかどうかだ。
「ま、待ってください!」
「なんだ?」
「本当にやるんですか!?」
ヴェーヌが俺に尋ねてくる。表情は仮面をかぶっているため分からないが、声からして困惑している感じだ。
俺はヴェーヌに頷くと、これから起こることが城壁の上に立っている人たちに見えるよう、5人の日本人の背後に立つ。シュティアは俺の横で待機。
手に持った拡声器を顔の前に持ってくる。
「時間だ」
注目を集めるために、俺は城壁の上に立っている敵兵士たちに向けて告げる。
そのままでは邪魔なので、拡声器をインベントリにいれ、代わりにこの世界の銃に似せたものを取り出す。この世界の銃は火縄銃のような物だが、少し手を加えて薬莢が入るようにした。
それを城壁の上の兵士たちが良く見えるように、日本人の1人の後頭部に当てる。わずかだが城壁の上の兵士達がざわついているように見える。だからと言って待ってやるつもりはない。
ゆっくりと引き金を引き絞る。
パンッ!
静かな草原に銃声が響く。それから1秒も立たずに、男子生徒が地面に倒れた。
「え? 今の音ってまさか……」
「お、おい! まさか!」
無事であった4人がざわつく。メルクールとヴェーヌ、ウーラは何も言わなかったが、俺の方をじっと見ている。仮面をかぶっていると言うことで、何を思っているのかは残念ながら分からない。
「ま、待って。全員無事よね?」
「私は無事よ!」
「俺も無事だ!」
「大丈夫だ!」
冷静なのか、それとも男子生徒の身の良くないことが起きたのを信じたくないためか、女子生徒の1人が尋ねる。それに残る3人は答えたが、地面に倒れている男子生徒は無言だった。
「ね、ねえ……孝仁? 冗談よね? 返事してよ?」
女子生徒の1人が今にも泣きそうな声を出すが、男子生徒は答えない。
いや答えられない。なぜなら――
「嘘よ……嘘よ! こんなの絶対嘘よ! これは夢! これは絶対夢よ!」
女子生徒の1人がついに現実逃避をし始めた。よっぽどつらいのだろう。
だが俺は冷たく言い放つ。
「友達のことを思っている暇はあるのか? 次はお前たち4人のうちの1人が被害者になるんだぞ?」
俺はそういうと、体を城壁の方へ向ける。想定外だったのか、城壁の上にいる兵士たちが慌てふためいているように見える。
それを見つつ、拡声器で再び呼びかける。
「1分経過したが、お前たちは何もしなかった。だから犠牲者が出た。今から1分後に2人目の犠牲者が出る。誰が犠牲になろうと俺には関係のないことだが、お前たちが最善の選択をすることを願う」
俺は言い終わると、最初の時と同じように日本人の内の1人の前に拡声器を持って行く。先ほどは男子生徒だったので、次は女子生徒にした。
「ほら。何か言ってやれ」
「お願い! 私たちを助けて! 早く城門を開けて! ここで死にたくない! 日本に帰りたい! もうこんなの嫌なの!」
「だそうだ。早く城門を開けてやれ。それでは今から1分間待ってやる。先ほど見たことも考慮し、よく考えろ」
相手がいい判断をしてくれるよう、心の中で祈りつつ拡声器を下げた。
それとほぼ同時に、誰かに強く手首を握られる。誰が握って来たのかを確認する前に、俺の手首を握ってきた人物は日本人から離れるかのように、少しだがアルール王国の陣営の方へ急ぎ足で戻っていく。
50メートルほど離れた位置で、俺の手首を握っていたウーラがようやく止まる。俺とウーラの後ろには、なぜかメルクールとヴェーヌまでいる。シュティアとカナは日本人の監視のためか、残っている。
「あなた、気は確かかしら?」
「何のことだ?」
俺の手首を離すと同時に、振り返りつつ尋ねてきた。俺達だけに聞こえるように声を抑えているのか、小さい。だが声から察するに、わずかながら怒っている。いや、かなり怒っている。
もちろんウーラがなぜこのようなことを尋ねてきたのかは大体予想が付いている。それでも俺はあえてとぼけてみる。
「とぼけないで。なぜ日本人を殺したの? この世界に初めて来たころに、人を殺して苦しんでいたのでしょ? それを忘れたのかしら?」
案の定と言っていいのだろうか。先ほどよりわずかながら声が大きくなり、怒っていることが分かるような、強い言い方になった。
ヴェーヌとメルクールは何も言わずにじっと俺を見ている。
「もちろん忘れてなんていない。だが……いや。今は関係ないな」
俺は反論するように言いかけるが、言葉を途中で止める。
言いかけたことは、俺が人を殺すのに慣れてきてしまっているのではないかと言うこと。
【アスノハ】に来るまでに戦闘があり、そこで俺は敵兵士を殺したが、まるで罪悪感という感情がごっそり抜け落ちたような感覚に陥った。
だがそれは、今ここで言うことではない上に、ただでさえシュティア達に心配を指せているのにさらに心配させることになると思って言うことを止めた。
ウーラがじっと俺を見ている。少しずれた回答になるかもしれないが、俺はウーラの質問に答える。
「日本人だが、死んではいない」
「何を言っているの?」
俺の告げたことに、ウーラは訝しがるように尋ねてくる。何も知らなかったら当然だろう。
俺は種明かしをすることにした。
「よく思い出してくれ。俺が射殺した奴は、血なんて流していなかっただろ?」
それを聞いて、3人は考えるそぶりを見せる。
俺は続けた。
「あの銃は弾丸を取って発砲した。音はなったが、銃弾は出ていない」
「待って。それじゃあなぜあの日本人は倒れたの?」
「魔法の一種に全身を麻痺させるものがある。それをシュティアに頼んでやってもらった」
「つまりあの日本人は、死んでおらず、ただ単に麻痺を起こしており動くこともしゃべることもできていないっていうことかしら?」
「そういうことだ。これは国王とシュティアの2人で相談した結果、実行に移された」
もちろん弾丸を取っているからと言って、怪我をしないわけではない。発砲したときに発生した燃焼ガスで重症を引き起こす恐れがあったので、わずかながら後頭部から逸らした。それでも鼓膜は破れたかもしれない。死なないよりはマシのはずだ。
俺の説明を聞いた3人はため息をつきながら肩を大きく落とした。
「零さん。そう言うことはもう少し早く言ってください」
「すまない。完全に忘れていた」
ヴェーヌがどこかほっとしたような感じを出している。
ふと思ったのだが、そろそろ1分が経つ頃だ。戻らなければならない。
日本人を射殺するマネをするために戻ると、シュティアがじっと見てきた。俺は頷くと、拡声器を取り出して呼びかける。
「時間だ。答えを聞こう」
結論から言うと、相手の答えは1回目の時とは変わらず。
そのため、草原に再び銃声が鳴り響く。今回は先ほど訴えていた女子生徒が被害者になった。もちろん殺してはいない。1人目と同様に麻痺を食らって動けないでいるだけ。次の被害者は男子生徒になり、訴えを言わせてやる。
さすがに2人も被害を出したので動くと思ったが、作戦開始からおよそ3分経っても動きは見れなかった。つまり男子生徒も麻痺を食らい倒れる。
本当は4人目である女子生徒に訴えさせようとしたが、泣きじゃくるだけで役には立たず、残る男子生徒1人も黙っているだけで、こちらも同じく役に立たなかった。それでも相手に門を開かせるために最後まで続けたが、結局門が開くことはなかった。
報告のために陣営に戻ることになったが、さすがに5人を置いて行くことはできず、引きずるようにして陣営へと戻っていく。その際、兵士たちの近くを通り過ぎたのだが、ぎょっとした表情をしていた。
麻痺のために動けないでいる日本人は兵士に任せ、俺は報告のために国王のいる場所へと向かう。
「ご苦労。門は開かなかったな」
「ええ。別の方法を使いたいのですが、いいでしょうか?」
「もう行くのか?」
「早ければ早いほどいいでしょう。ともかく、準備をお願いします」
「わかった」
国王が頷いたのを確認した俺は、準備のために少し離れた場所に移動する。
そこで俺は準備体操を始める。それと同時に兵士たちが門に向かって進軍し始めた。
「……何、しているの?」
突然屈伸を始めたことに戸惑いつつ、シュティアが尋ねてきた。その後ろでは他の4人もじっと俺を見ている。仮面をかぶっているので、じっと見られると少し怖い。
「門まで少し走ってくる」
「走ってくるって、どうするつもりですか!?」
「……爆破?」
「なぜ疑問形!?」
今度はヴェーヌが尋ねてきたので俺は返したが、見事に突っ込まれた。
「爆破って……あなた、もしかして昨日使っていたものをまた使うのかしら?」
「そうだが?」
「やめなさい、危険だわ!」
ウーラが真面目な声で俺を止めようとする。
「だが破城槌普通に壊していれば時間がかかるだろ。その間に兵が死んだら意味がない」
「だからと言って、あなたが危険な目に合わなくてもいいでしょ!」
わずかずつだが、ウーラの口調が荒くなってきている。まるで駄々っ子をしかる母親のような感じだ。
だがここで俺が引けば作戦に支障が来たす。それに……
「その気持ちは俺も同じだ。5人が少しでも危険な目に会う可能性を落とすためにも、この作戦が必要なんだ」
俺はウーラの方を見て真剣に伝える。
多分だが、この作戦をしなければシュティア達も前線で戦わなければいけなくなる。そうなれば必然的に危険な目に合う可能性が増える。だからやらなければならない。
「引き下がるつもりは無いのようね?」
「ああ。もちろんだ」
ウーラがため息をつく。俺の気持ちが伝わったのだろうか?
俺の気持ちが伝わったことを願いたい。
「わかったわ。行っていいわ。でも、絶対に怪我だけはしないようにして。いいわね?」
「わかってる」
気が付けば上下関係ができ書けていることに突っ込みを入れたかったが、そんなことをしていると時間が無くなるので、俺は遠くに見える城門に向かって歩き始めた。
「待ってください。あたしからも質問です」
「なんだ?」
すぐにメルクールが尋ねてきた。俺は足を止めて振り返る。
そろそろ本当に時間がなくなってきている。
「どうやって城壁の上からの攻撃を防ぐのですか? 明らかに無理ですよね?」
「……走っていたらどうにかなるだろ」
「アホなんですか!? 無理に決まってるでしょ!」
メルクールに思いっきり怒られた。案外行けそうかもしれないんだがな……
「ちなみにですが、なぜ走っていたら大丈夫だと思ったのですか?」
「矢は放ってから目標までに着く時間が長いだろ? その時間があったら避けれると思って」
「確かに遅いですが、思っているほど遅くないですよ」
ヴェーヌが飽きれているのか、肩を落としている。カナを除く3人も飽きれているように見える。
「じゃあ、何とかしてみる」
「何とかって……って待ってください! 本当にどうするつもりですか!」
「危ないからここで待ってろよ」
時間がなくなってきたので、俺はその場を後にする。
ヴェーヌが付いてきそうになっていたので、俺は待っているようにいうと、門の方に走り出した。
ただ、本当に避ける手段を考えていない。俺はインベントリの中に、何か良さそうな物が入っていなかったかを思い出す。
そこでふと、前にネタで作った盾を入れていることに気が付いた。それを取り出す。
形だが、この世界にあるような盾とは違って、横が60センチで縦が1.5メートルほどの長方形。角は少し丸みをつけている。
ニュース番組でデモ隊の鎮圧のために出動した警察などが持っている盾のような物と言えば分かりやすいだろう。
盾を出した時に、ちょうど先頭に立っている兵士たちとすれ違う。兜をあぶっているために表情は分からなが、空気はどこかピリピリしている。
俺は盾を左横に構えると走り始めた。
一瞬、縮地で近づけばいいと思ったが、すぐに考えを改める。縮地は一瞬で近づけはするが、終わった後にわずからながら硬直するので、今回は使えない。
つまり、ほとんどステータス頼みで走らなければならない。
距離的に敵の攻撃の射程に入っただろうと思った瞬間、城壁の上にいる兵士たちが一斉に矢を放つ。一斉に矢が放たれたため、不気味な音に感じた。
矢は弧を描くように俺の方へと飛んでくる。
俺の走っている前方の方を狙っていると思われるので、進路を変更して左斜めに移動し始める。ちょうど矢が地面に突き刺さる瞬間、俺は落ちた場所の真横にいた。早めに進路を変更したために矢には当たらなかったのが幸い。
ただ、地面に突き刺さった何十本もの矢を見て、そのまま走っていた時のことを考え、ゾッとした。もしかしたら、何本もの矢を食らい、地面に縫い付けられていたかもしれない。
相手が次の矢を放つ前に俺は距離を詰めるためさらに走る。ステータスを利用しているために、もう少しで近づきそうだ。
と思った矢先。上から爆発音がする。それとほぼ同時に、自分の周囲の地面が土煙を上げる。まるで地面そのものが爆発したかのように思えた。
幸い土しか飛んできておらず、顔は盾で守っていたので被害はない。すぐに土煙が晴れ、状況を理解した。城壁の上にある大砲で撃たれたのだ。
大砲で撃たれたために完全に足が止まった。
それを敵が見逃すはずがない。何本もの矢が放たれる音が聞こえた。見ると、広範囲に広がるように放たれている。
城壁の上から俺のいる位置まではさほど離れていないということで、今から走り始めてもすでに遅い。走り始めても、矢は広範囲に放たれているので絶対に当たる。
俺は盾を上にかざす。それとほぼ同時に矢が地面に突き刺さっていく。何本もの矢が俺のかざした盾にぶつかり、金属と金属がぶつかり合う音を出す。
雨のように矢が降るとはまさにこのことだなとのんきに考えてしまう。
矢が降って来なくなったことを確認すると、再びすぐに走り出した。どうやら大砲の装填が終わっていないようだ。
危なかったが、門にかなり近づくことが出来た。距離はおよそ75メートルほど。
矢はまだ放たれそうにない。すぐさまインベントリから人力でないと飛ばないミサイルを取り出す。飛ばないミサイルとはいったい……
「これでも食らってろ!」
俺はそう叫びながら、全力でやり投げのように投げる。
起動の確認をする暇もなく、すぐさまその場にしゃがみこんで盾を構える。両手でしっかりと支え、衝撃に備えた。
すぐさま門か地面。どちらに着弾したのかはわからない。だが何かに当たって起爆されたのは確か。
大爆発が起きた。




