第49話 状況説明と作戦の提言
「単刀直入に言う。こちら側――アルール王国側についてくれ」
そう言うと、国王が頭を下げた。それに続き次期国王と団長、副団長までもが頭を下げた。
「あ、頭を上げてください!」
突然すぎて俺の思考が停止している間に、ヴェーヌが半分叫ぶように訴える。それを聞いた国王達4人が頭を上げた。
俺は何とか思考が回復したので尋ねる。
「突然どうしました!? 俺は元からこちら側につくと言っているのに、なぜ頭を下げたのですか!?」
「話し合っていたのだが、こちら側から正式にお願いをしていないことに気が付いてな」
「お願いをして貰わなくとも、先ほどこちら側に付くと申したはずです」
そう。俺は先ほど、こちら側――アルール王国側に付くと伝えた。
にもかかわらず、国王が頭を下げてまでお願いをしてくるとは思わなかった。
「それでも、こちら側から正式に願いを出したかったのだ。そこは分かってくれ」
「……そうですか。わかりました」
「ともかく移動しよう。付いてきてくれ」
国王が付いてくるように言うと、大広間の外に出て行った。その後ろを次期国王に団長と副団長が付いて行く。俺はその4人の後をついていくように大広間から出た。もちろんシュティア達5人も付いてきている。
誰1人話さないまま、とある部屋に到着した。国王を先頭に部屋に入っていく。
部屋の中は、そこそこ広かった。部屋の中央には正方形の机が置かれており、地図が広げられている。
壁際には本がぎっしりと詰まった本棚と、ざっと20脚近くの椅子が置かれている。
「さて。全員、机の近くに集まってくれ」
国王のその言葉を聞くや否や、次期国王ら3人が机の周りに移動する。俺達6人もそれに続いて机の周りに移動した。
「これは……」
机の上にある地図を見た瞬間、ヴェーヌがつぶやいた。
机の上にあった地図は、そこらに出回っているような大雑把な地図ではない。かなり正確な地図が存在していた。
書かれている国は中心にアルール王国。アルール王国を挟むようにレールン王国と、俺が次に行く予定の帝国――アルザラ帝国が書かれていた。それに海と、エルフと獣人が住んでいる森も書かれている。かなり正確な地図なので、森の大きさがよくわかる。かなり大きい。
地図の上には、ペットボトルのキャップほどの大きさの物が所々に配置されている。色は3種類。地図の上に置かれているほとんどの物は黄色をしており、その次に多いのが青。そして、各国に1つずつ置かれている色が赤色。
赤は1つずつなので、王都と思われる。だが青と黄色のものが何を表しているか分からない。
「ではこれより、状況説明を始めさせていただきます」
俺が地図を見ていると、団長が声を出した。
どうやら状況説明を行うためにここに来たようだ。だが気になったことが1つあった。俺はその疑問を解消するために、尋ねることにした。
「なぜ俺達が参加する必要があるのでしょうか?」
その質問を聞いた国王達4人が俺を見たあと、まるで誰が理由を説明するかを相談するように無言で顔を見合わせた。
少しすると、国王が俺の方を見る。
「ゼロ――ここではレイといっても問題ないだろう」
国王を含む4人はすでに俺のことが誰なのかは分かってるはずだ。確かに言っても問題ないだろう。
俺は仮面とフードを外す。それを見たシュティア達5人も同じように仮面とフードを外した。
「さて。話を戻そう。君達が話している間に、団長が少しばかし情報収集を行った。どうやらレイとそこの小さい女の子以外の4人が街でレールン王国の兵士の相手をしてくれていたようだな」
俺が見て居ないところで、シュティア達4人はかなり頑張っていたようだ。
「もちろん、レイもかなりの強さであったと聞いている。扉の前での戦闘ご苦労であった」
どうやら俺のことも聞いていたようだ。俺は少し照れ臭くなり、視線を逸らす。
隣にシュティアが立っており、ちょうど視線の端で顔を見ることになったのだが、俺の方を見て褒めてといいたそうな表情をしている。
「それと気になることが1つ。空を飛んで火を吹いていた物があったと報告を受けたのだが、あれはなんだ?」
いつかは来るであろうと思っていたが、このタイミングで質問が来たか。
俺は言葉を考えつつ、慎重に答える。
この世界にドローンなんてない。ドローンは使い方によってはこの世界のバランスを崩す恐れがある。すでにここで壊したと思うが……
「詳しいことを説明するのは難しいので、魔法で飛んでいる鉄の塊とでも思って下さい」
「魔法で飛んでいるのか!?」
「詳しくいえば、魔道具の一種により飛んでいます。もちろん使い方などの詳しいことは教えることはできませんが」
俺の説明を聞き、団長が驚いて声を上げた。俺は詳しいことは伝えられないと先に言っておく。
どうやら聞きだしたいと思っていたらしく、4人とも落ち込んだ。
「……作戦会議は?」
「そうだな。団長頼むぞ」
珍しく、シュティアがしゃべった。
それを聞いた国王が頷きながら、団長に丸投げした。
なれているのか、団長は頷くと説明を始めた。
「未だレールン王国の兵士は撤退中とのことです。方向はレールン王国方面とのこと。ほとんどの荷物を置いて行ったため速度は早く、現在はこの辺りかと」
そう言いながら団長は、細い木の棒で地図の一点をさす。かなり王都に近い位置を指したが、地図に書かれている範囲が広いことが原因だろう。
「この距離ならば本来、追撃は可能ですが、荷物を捨てている向こう側の方が移動速度が早いため、諦めることにしました。またこちらの被害も大きく、下手に追いかけない方がいいと判断しました」
確かに移動速度が向こうの方が早ければ、離れていく一方だ。
「王都へ攻め込んだのはレールン王国騎士団です。彼らは馬を使って移動し、先行隊として攻め込んできました。そのため後続の軍と合流すれば、数の差で追撃をしに行った部隊が壊滅する恐れもあります。残念ながら後続の部隊の現在位置と規模は一切分かっておりません」
「先行隊が騎士団なら、後続の軍には誰がいるのですか?」
俺は気になることがあったので尋ねる。予想ではレールン王国の騎士団の兵士以外の兵士だと思うが、確証がない。それに学校の奴らが参加していると、タラッタのギルドで教えられていた。
「後続には騎士団以外の兵士が参加している。主に貴族の私兵だ。情報をもたらした者の話によると、異世界の者も参加しているとのことだ」
話を遮った俺の質問には副団長が答えてくれた。どうやら情報は間違っていないらしく、ほんとうに学校の奴らが参加していたようだ。そうなれば敵国に参加していることになる。
敵国に参加しているのであれば、敵対することになる。もちろん手加減はしないつもり。エルフや獣人の奴隷を受け取るためにも。
「話を戻してくれ」
俺が理解したことを確認した国王が指示を出し、団長が頷く。そして再び説明を始めた。
「先ほども説明した通り、追撃を行った場合にこちらが全滅する恐れがあります。そのため追撃はしない方向で考えております。そうなれば、次は攻め込むことを考えなければなりません。もちろん、援軍の到着を待ってからになりますが」
団長が国王の方を見る。国王が軽く頷いた。どうやらここまでの話を了承をしたようだ。
団長は地図の上に目を落としたので、その場にいた全員が同じように地図の上に目を落とす。俺も遅れて地図の上に目を落とした。
「敵の後続部隊が大規模であれば、まだ国境近くの街にいるでしょう。もし中規模なら、すでに王都の隣街まで進行してきている可能性があります」
そう言いながら、団長は持っていた木の棒で、国境近くの街【ウィーン】から【アスノハ】を経由して【コロノ】へと、木の棒の先で順に指していく。
軍の規模により、進行速度がかなり変わるのか。そう言えば、妹の怜も言っていたな。
「援軍を待って、攻撃を仕掛けるときにも問題が発生する恐れがあります。王都から国境までには街が3つあり、どこかの街を利用し籠城する可能性があります。そうなれば、街の防衛に使う大砲を使用される恐れがあります」
本で読んだのだが、基本的に各街には大砲が備え付けられている。これには役割が2つある。
1つ目は魔物が暴走――スタンビートを起こして街に攻めてきたとき。スタンビートを起こした魔物はまっすぐと攻めてくる。しかも数がものすごく多い。そのため、少しでも数を減らそうと、城壁の上に大砲を置くことが考えられた。
そして2つめの役割が、敵国が攻めてきたときに攻撃できるように。もちろん兵士は人間だ。ある程度考えて行動すると言うこともあり、あまり効果はないようだが、ないよりはマシだそうだ。過去に数回、大砲を使ったために敵の兵士を減らし、相手を撤退に追い込んだことがあると書かれていた。
全く関係がないが、ここで本から得たちょっとした1つの情報を。
本に記載されている限りは、この世界は数万年前から技術が一切も進んでいないそうだ。何かしらの便利な技術を開発しようとすれば、謎の力が働き、数日前までは実験が成功していたにもかかわらず、突然実験が失敗続きになるらしい。
それが原因で、電話などの遠距離の通信設備などは作れていない。
閑話休題
「問題はそれだけではありません。考えられる限り、この問題が今回一番大きなものでしょう」
団長の言葉を聞き、その場にいる全員の視線が団長に集まった。団長は絶対に聞くようにと促すかのように全員を見ると、問題点を言った。
「今回の戦いは、異世界の者が参加しています。情報によりますと、異世界はこの世界よりも技術などのすべての面において優れているそうです。もしかしたらですが、我々が思ってもいないような戦略を取ってくる恐れがあります」
ここで俺は少し考えた。
このタイミングで、俺が異世界のものであると伝えるかどうか。どのように反応されるか分からないので、うかつに言い出せない。
なんて思っていると……
「……レイも、異世界から……来た」
「何!?」
「ええ。零さんは異世界から来ていますよ」
ここでまさかのシュティアの裏切りが出た。これは想定外だった。さらにヴェーヌが証言をする。
俺はシュティアの方を見ると、ダメだった? と言っているかのように俺を見て来た。
別に悪くはないが……
俺はため息を付く。2人も異世界から来たと証言をすれば、言い直せないだろう。そもそも国王に嘘を言う時点でいろいろと問題だ。
「2人が言うように、俺は異世界から来ました」
「確かに顔と目は異世界の者に似ているが、髪の色は黒ではないが?」
次期国王の言う通り、現在の俺の髪の色は茶色。だがそれは、シュティアの魔法によるものだ。最初にシュティアとあった時に、茶色にして貰っていた。理由は日本人だと思われないように。
街で指を指されながら見られることに嫌気がさし、シュティアに頼んで色を変えてもらった。
「ええ。確かに今は茶色ですが、これは色を変えてもらっているからです。シュティア、頼む」
「……うん」
俺がそう言うと、それだけで分かったらしく、シュティアが俺の髪に手をかざす。すると頭全体が暖かくなったように感じた。
俺の髪が黒であると分かっている俺とシュティア、日本人なら黒い髪と知っているヴェーヌに、そしていつも無関心なカナ以外の、この場にいる人全員が驚いている。
「まさか本当に、異世界から来た者だったとは……」
国王がそうつぶやくと、他の3人も頷いていた。
それに合わすかのように、メルクールとウーラも頷いている。この2人には日本人であると言ったはずだが、信じていなかったのだろうか?
ヴェーヌはなんだか安心した表情をしている。俺の言葉と外観でようやく確信が得れたのだろう。
「レイは異世界の者か。何か良い作戦はないか?」
「突然言われましても、何も無いですよ」
団長が尋ねてくるが、そんなすぐに作戦が思いつくわけがない。戦略系ゲームが得意で、よくやっている妹の怜ならば何かいい作戦が思いついたかもしれないが、この場にいない人のことを考えても意味がない。
俺の言葉を聞いた副団長が少し残念そうな表情をしたためなのか、団長が脇腹を小突いていた。
俺から作戦が出てこなかったためか、団長は別の質問を投げかけてきた。
「では、相手が考え付きそうな作戦はないか?」
「と言われましても……」
俺はそれを聞いて、何かないか考えた。
そこでふと頭の中を作戦が1つ浮かんだが、いくらなんでも失敗したときの代償が大きすぎた。
だがどうやら俺の表情を見て、何かアイデアが浮かんだことが分かってしまったのだろう。国王が視線だけで、俺に言うように促してきた。
「1つ思いついたのが、空からの攻撃です」
「空から? それはどういうことだ?」
「簡単に言いますと、手が出せない高い位置から一方的に攻撃をする方法です。俺の世界では飛行機という、空飛ぶ鉄の塊を使っていますね。この世界では、飛行船があるのでそれを使うと可能だと思いますが……」
「そもそも数が少ない上に、とんでもなく高価だから使わないだろう」
「おっしゃる通りです」
国王が言う通り、この世界にも飛行船はある。と言っても、高価ということもあり数自体少ないため、めったに目にしない。使っているのは基本的に上級の貴族か大商人。それもほんの一握りだ。
どのくらい高価化と言うと、5機ほどで国家予算になるぐらい。
5機が並んで飛んでいると、空飛ぶ国家予算が見れる。
果たしてそんなものを戦争なんかに簡単に投入できるだろうか?
ちなみに高価な理由は簡単。とんでもなく複雑な魔道具を使っているから。
本で説明されていたが、全く理解できなかった。簡単に言えば、魔道具を大きな袋の中に入れておき、そこで作りだした特殊な気体で袋を空へ飛ばす。特殊な気体と言っても、別にヘリウムと言うわけではない。
もちろん袋の下には人が乗れるように箱をつけておくのだが、魔道具で生み出された特殊な気体は、どうやらかなりの力があるようで、箱の大きさが袋の半分を占めるほどの大きさでも簡単に浮かぶ。
だがその魔道具を作ることがものすごく難しく、結果としてあまり出回っていない。
そしてもう1つ。なぜかこの技術は謎の力により邪魔をされると言うことはなかった。謎の力の気分次第なのだろうか。
「飛行船は出てこないと予想するとして、他には何かないか?」
「馬車での兵員輸送はどうでしょうか?」
今度は、この世界に来て最初のことを思い出したのでそれを尋ねる。馬車に人を乗せれば、それだけで多くの兵を早く戦場に送ることが出来るだろう。
「それはあり得ないこともない。実際我々も行ったことがある。だがあまりにも馬が多すぎて、管理があまりにも大変だった」
どうやら、馬車での兵員輸送は行ったことがあるらしい。
まあ、馬は1日に何十リットルもの水を必要とする。水ぐらい魔法でいくらでも出せるが、魔法を使うのに必要な魔力は戦闘時にも必要とされる。戦闘時に必要な魔力を馬に使う水を出すことに回していたら、部隊が壊滅する可能性が高くなる。
「他には何かないか?」
「……特に無いですね」
団長が再び尋ねて来るが、さすがに思いつかない。たった2つしか出てこなかったが、俺にはそれが限界だ。
国王達4人がどこか残念そうな表情をしている。
少しはあなた達も考えろよ……
「そう言えば、レイの仲間である5人は何か無いか?」
国王が突然シュティア達5人に声を掛けた。掛けられた5人はそれぞれ違った反応だが、大きくまとめると驚いた反応を見せていた。
シュティアとメルクールは飛び跳ねそうなほど驚いており、ヴェーヌはまさか聞かれるとは思ってもいなかった表情をしている。ウーラは少し目を見開いている。いつも無表情のカナもこの時ばかりは驚いたようで、見開いた目で国王の方をじっと見ていた。
だがすぐさま思考が戻ったのだろう。シュティアが国王に向かって話し始めた。
「……な、何も……ない、です」
「あ、あたしも何も思いつきません! あたしは獣人ですから!」
ただ、シュティアはいつも以上につっかえつつ話した。やはり人と話すことは苦手のようだ。
メルクールも他人と話すことは苦手のようで、少し声が裏返っている。しかも最後はよく分からない理由までつけた。
「私も知りませんね。前世――いえ。何でもありません。ともかく、零さんが行ったこと以外は思いつきません」
ヴェーヌは途中で余計なことを言いかけたと判断したのか、少し強引に話した。
その時、唯一副団長だけが片方の眉を上げた。と言っても、ほんのわずかだったため、気が付かない人が多いだろう。前世という言葉が気になったと思われる。副団長以外の3人は表情を変えてはいないが、ヴェーヌに探りを入れるような視線を向けている。
だがそれもすぐに止め、国王はウーラの方を向く。
「ウーラという名前でしたっけ? お主は何かいい考えはないか?」
「私も同じように思いつきません」
「では、過去に起きた戦争の中で気になることはなかったか?」
「いくつか資料を見ましたが、特に気になることはありませんでした」
長寿で有名なエルフであるウーラも、特に気になることはないようだ。
その言葉を聞いた国王は明らかに落ち込んでいた。言い方は悪いが、生きる資料のような物だからな。
「問題点はこれくらいにして、現在考えている侵攻ルートはレールン王国王都までまっすぐ進むルートです。変に迂回を行い時間をかけるより、正面からぶつかりに行った方が短期決戦になるでしょう。もちろんこちら側の被害も大きくなると思いますが、下手に長期決戦をするよりはマシかと思います」
落ち込む国王を放っておくかのように、団長は説明を続ける。
最後に、途中で作戦の変更を余儀なくされる可能性はあると付け加えられた。
その後は武器であったり連れていく兵士の数を話していたが、そういう詳しいことは言われてもさっぱりだったので、適当に頷きつつ話を聞いていた。
気が付けば、わずかだが空が赤くなっていた。夕方だ。
そう思うと同時に、急に空腹を感じ始める。そう言えば昼食は取っていない。
ふと見ると、シュティアとメルクールが自分のお腹を見ていた。ヴェーヌとウーラは悟られないようにするためか、それとも本当に空腹ではないのかは分からないが、何もしていない。ただヴェーヌの目が少し泳いでいるように見えるのは気のせいだろうか。
そんなことをのんきに考えていと国王が声をかけてきた。
「お主らは夕食をどうするか決まっておるか?」
「いえ。これから考えようかと思っています」
「では、城で夕食を食べていかぬか? 街は被害が大きく、今日は食べられないだろう。それに宿も開いているか分からぬ。泊まっていくといい」
俺は一瞬、自分の耳を疑った。いくらなんでもそれはやりすぎではないかと。だがそれも、現実であることを思い知らされた。
「といっても、城もこのありさまだ。普段よりは劣る食事になるだろう」
俺はどうしていいか分からなかった。友達に誘われたなら二つ返事だが、相手は国王。どうしていいか分からない。
こういうのはよく知って良そうな人に頼るのが一番だ。そこで、ヴェーヌとウーラの方を見る。
だが2人はすでに俺の方を見ていた。どうするか判断しろと言っているような目をしている。
2人が駄目ならばと、今度はシュティアとメルクールの方を見た。この2人は知らなさそうだが、意見を聞きたかった。
だが、この2人もすでに俺の方を見ていた。完全に任せますという表情をしている。
4人が俺任せと言うことで、俺はどのように断るかを考え始めた。
絶対と言っていいほど、国王と食事をすることになるだろう。そうなれば給仕人が少なからずいるはず。
本来、ここにいるのはゼロ達であって、俺達はここにはいないことになっている。にもかかわらず、俺達がいたら疑念を持たれるはずだ。
やはりここは、お暇するべきだと判断できる。
だが国王はそれを許さなかった。それを阻止するためなのか、提案をしてきた。
「本当は共に食事をとりたいが、お主たちはあの恰好でいなければならないのだろ? それは分かっておる。だから、別室で食事をできるようにはするつもりだ」
心なしか、国王がどこか楽しそうに話をしているように見える。
それが俺の見間違いであって欲しい。
だが、それより大事なことがある。国王に退路を見事に断たれた。逃げ場が完全にない。
いや、1つだけあった。俺はそこを突く。
「ですが、城内はこの有様です。俺達がいれば、修復の邪魔になるかと」
「現在は人手不足です。この状況ではすぐさま復旧はできません。急がず少しずつ行う方が懸命かと」
俺の言葉を聞き、すぐさま次期国王が国王に提案を行った。次期国王が笑みを浮かべているが、ものすごく黒く感じる。さらには国王まで、いい事を聞いたという顔をしている。
俺にもはや逃げ場はなかった。折れることにした。
「わかりました。お言葉に甘えさせていただきます」
「そうか。ゆっくりしていくといい」
国王がそういうと同時に、次期国王が部屋から出ていった。
そして国王派と言うと、勝ったと言わんばかりの笑みを浮かべている。
いやいや、国王様。俺に勝つのではなくレールン王国に勝ちに行って下さいよ。
さすがにそんなことを言えるはずもなく、次期国王が連れてきたメイドによって、今日泊まる部屋に案内されるのであった。




