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第47話 王都奪還へ

後書きに、ちょっとした修正点の報告と、これもちょとしたお願い(読まなくても大丈夫です)を書きました。本当にちょっとした修正店の報告とお願いですので、興味のある方は読んでみてください。

 翌朝、朝日が昇ったばかりの時間帯に起き、朝食を食べ始める。朝早いと言うこともあり、全員眠たそうだ。もちろん俺も眠たい。

 メルクールは眠たそうに眼をこすっているが、昨日とは違いうつむいて考え事をしてはいない。やはり昨日の夜に話を聞いたのがよかったのだろうか。


 天気だが、夜の間に回復したようで晴れている。俺は内心、まるでメルクールの感情が空にそのまま反映されているのではないかと思った。もちろんそれはないと思う。



 朝食を食べ終えると、すぐさま王都に向けて軽装甲機動車を走らせる。かなりの距離を進んでいたため、昨日のうちに王都の隣街である【コロノ】を通り過ぎている。王都までの距離はあと少しだ。


「今はこの辺ですかね?」

「……この辺だと、思う」


 ヴェーヌとシュティアは後ろの席で地図を睨みながら現在位置を探っている。そのこともあり、ウーラが助手席に乗ることとなった。

 数分後、おおよその現在位置を割り出せたようで、この進み方で行くと昼前にはつくだろうと予想を立てててくれた。

 ただ、シュティアは昼を過ぎると予想を立てる。前世できちんと勉強をしていたヴェーヌを信じよう。




 休憩を適度に入れつつ走らせた結果、ヴェーヌの予想通り、昼前には王都が見えて来ることとなった。

 だが明らかに様子がおかしい。とおくの方からでもわかるほど、煙が上がっているのが見えている。それも城門の中からだ。


「……レイ。あれ」

「ああ」


 シュティアも気が付いたらしく、指をさしている。休憩の後に席を移ったため、現在は助手席に座っている。

 後ろの席ではヴェーヌがポーションの整理をしている。ポーションはポーチに入れて、全員に持たせるつもりのようだ。



 俺は王都から立ち上る煙を見て、嫌な予感がしたた。本当はそのまま進みたいが、一度軽装甲機動車を止める。どうしてもしておきたいことがある。

 王都までは、まだ距離があるので止めても見つからないはず。


 駐車処置を行い、俺は体ごと後部座席の方を向く。


「見たらわかるが、王都から煙が上がっている。すでにレールン王国の兵士が王都に侵攻してきている恐れがある」

「戦闘に入るのですね?」


 ヴェーヌが真剣な表情で聞いてきた。他の4人も表情は真剣な表情そのもの。5人から見たら、俺の表情も真剣なものに見えるはずだ。

 ヴェーヌの質問に、俺は頷くと話を進める。


「戦闘に入ると思うが、手加減はするな。お前たちを失いたくはない。もちろん俺も手加減はしな……少しはするつもりだ」

「あなただけ手加減するのはどうかしら?」

「俺がインベントリの中にある物を使って本気を出したら、王都は瓦礫の山になるからな?」


 しゃれにならないものが、俺のインベントリの中に眠っている。もしそれを使うと、真面目に王都がなくなる。だからある程度は手加減をするつもりだ。


「話が逸れたな。本題だが、お前たちが本気を出すと、どうしても人目が集まる。もしかしたら名前が広まるかもしれない。今後旅をするにあたって、それは避けたい。そこで、変装をして貰う」

「あの……零さん? なんだか嫌な予感がするのは私だけでしょうか?」

「ヴェーヌさん、奇遇ですね。アタシも嫌な予感しかしないです……」

「……2人の意見に、同意」

「さて、あなたはいったい何を隠しているのかしら?」


 どうやら俺が悪い考えをしていることがバレたようだ。俺はそれを明かすことにする。

 俺は出るように合図をすると、全員が車外に出た。

 そして回り込むと、俺の周りに集まる。


 それを確認した俺は、インベントリからタラッタの服屋で購入したものを5着取り出し、それぞれに渡す。

 たたまれていたために分からなかったが、広げたそれに、カナ以外の4人の顔が引きつった。


 俺が買った服は、真っ黒なフード付きコートだ。そう。俺と同じものだ。

 唯一違う点はシュティア達5人が着ると言うことで、女性の体形に合わせたものになている。だからといって体のラインが浮き出るほど、ぴったりと言うわけではない。


「えーっと……零さん? これは?」

「変装用」

「いや、それは知っていますよ! あたし聞きましたよ!」

「俺と同じやつ」

「……見れば、わかる」

「これを着るのかしら?」


 どうやら4人はお気にめさなかったようだ。

 だがその隣で、カナはすでに着ている。しかもフードまできちんとつけている。


「カナちゃん。あなた早いわね……」


 そんな様子を見て、ウーラが苦笑いしていた。


 カナを除く4人は少し躊躇っていたが、渋々着た。はたから見たら怪しい組織にしか見えない。

 もちろん俺は、もう1つ準備している。あとはそれを切り出すタイミングだが、さすがカナだ。タイミング良く質問を投げかけてくれた。


「お兄ちゃん。例えこれで外観を隠したとしても顔や声、呼んだ名前で誰か分かるのではないでしょうか?」


 確かにと思ったらしく、シュティア達が俺を見る。

 多分だが、今の俺の顔は悪だくみしている表情に見えるだろう。


「顔はこれで隠す。といっても、声は変わらないぞ?」


 俺はそういって、インベントリから俺と同じ、骸骨のような仮面を取り出した。もちろん目は特殊な鉱石を使っているために赤色。ただ、時間がなかったために、変成器はついていない。

 5人とも受け取ったが、カナを除く4人は顔を引きつらせている。もちろんこれだけでは終わらない。終わらせない。


「名前だが――」

「嫌な予感しかしないのですが?」


 俺が発表しようとした時にヴェーヌが遮る。他の4人も顔が暗い。

 だが俺は無視をして続けた。


「順番に、ワン、トゥ、スリィ、フォウ、ファイブとする」

「やっぱり……」


 俺がシュティア、メルクール、ヴェーヌ、ウーラ、カナという順番で指を指しながら言うと、ヴェーヌが肩を落とす。そして流れるようにその場にしゃがみ込んだ。

 ヴェーヌの様子を見て、シュティアとメルクールにウーラが驚いていると、ヴェーヌが顔をパッと上げる。それと同時にものすごい表情で怒ってきた。


「なぜそのような名前にしたのですか!」

「仕返しだ」


 俺はニヤニヤしながら答える。ようやく晴らせた。シュティア達を救出したあとの、あの出来事からずっと、いつかやり返したいと思っていた仕返しが、ようやくできた。


 俺とヴェーヌのやり取りが分からず、シュティア達3人はただ聞いているだけだったが、どうやらカナが教えたようだ。


「さて、3人の感想は?」


 一応、俺は3人にも笑われている。そのため俺は3人にも尋ねた。俺とヴェーヌがやり取りしている短い間でカナの説明があった。4人は理解はできているはずだ。

 そして最初に感想を言ったのはシュティアで、どのように言ったかと言うと――


「……私、1番。レイの、大切な人ランキング……1番」


 と、シュティアにしては珍しいどや顔で、全員に宣言していた。

 違う! 俺の思っていたものと違う!


 続けてメルクールが口にしたことは――


「番号なんて関係ありません! あたしが1番です! レイさんの1番はあたしです!」


 と、シュティアに向かって言い返している。ただ背が低いので、シュティアを見上げるように言っているのが少し和む。

 だから違う! そうじゃない! 俺の求めている言葉はそれじゃない! ヴェーヌみたいなことを言ってくれ!


 ウーラの方を見ると、俺に微笑んでいる。絶対違うこと考えている。

 その予想はすぐに当たることとなった。


「あら? 私は4人の中で4番目に大事と言うことかしら?」


 いいえ。合った順番に付けただけです。ちなみにヴェーヌとウーラの順番だが、起きていたヴェーヌを先に持ってこさせてもらった。

 最初は名前順も考えたが、真っ先に思い浮かんだ順番が、出会った順番だったのでこのようになった。


 5人の反応は、俺の予想とは違った――かなり違った反応だったが、俺がこのようなことを考える元となったヴェーヌが崩れ落ちているので良かったことにしよう。


 ちなみに、カナは無表情で受け入れている。




 王都から離れていると言っても、まだまだ距離がある。それに時間を取りすぎてしまったので、城門まで一気に進むことにした。

 もちろん、全員変装用の衣装を着て乗り込む。


「ヴェーヌ。お前が運転しろ。俺は銃座につく」

「運転って、どこまで進むのですか!?」

「城門の中で止めろ」


 仮面をつけているためくぐもった声で俺はそういうと、後部のドアをあけ車内に乗り込み、銃座につく。そこでインベントリから機関銃を取り出すと、すかさずセットする。その間に全員が乗り込み、軽装甲機動車がエンジン音を出して発進した。

 運転はヴェーヌがしている。だが明らかにスピードが出ていない。


「ヴェーヌ! もっとスピードを出せ。捕まるぞ!」

「人を引いてしまいますよ!」

「俺が何とかする!」


 俺が車内に顔を入れ、ヴェーヌに叫ぶと、反論が帰ってくる。ただ、運転しているので前を向いたままだ。

 俺は言い返し再び銃座に戻る。前方では、兵士がこちらを見ている。近くにはレールン王国の国旗があるので、レールン王国側の兵士で間違いない。

 俺達を敵の援軍だと判断したのだろう。剣を抜き、こちらに向けるのが分かった。


 軽装甲機動車と兵士の距離は縮まっていく。明らかにひき殺すルートだ。兵士の方はどうしていいか分かっておらず、行動を決めかねているように見える。俺は兵士の足元よりもかなり手前に照準を合わせ、トリガーを引いた。


 かなりのスピードで走っていると言うこともあり、振動がすごい。そのため照準がぶれる。

 結果、兵士のかなり手前に照準を合わせたにもかかわらず、周りに銃弾が着弾していく。銃弾が着弾したところの土が飛び跳ねる。運悪く、銃弾が腕に当たった者もいた。いくら鎧を着ていたとしても、当たった物は銃弾。普通に貫通していた。


 見たこともないものが凄いスピードで突っ込んできており、その物からは鎧に穴をあけるほど威力があるものが見えない速度で毎秒十数発飛んでくる。場面を見れば、兵士たちの判断は容易だった。

 兵士は道を開けるように逃げていく。そこをヴェーヌがまっすぐに軽装甲機動車を走らせて、門の中に入った。



 王都の中は、予想よりひどいものだった。

 あちこちから煙が上がっており、道端には民間人と思われる人であったり、アルール王国とレールン王国の兵士が倒れて血を流している。

 また、ところどころに馬車が横転しており、中に乗っていた乗客が上半身だけを出して息絶えている。


 俺や仲間に危害を加えようとするものには容赦しないつもりだが、やはり人が死んでいる場面を見るのは、慣れない。

 慣れれれば、人でなくなりそうだ。


「ヴェーヌ。車を止めろ。降りるぞ」

「はい!」


 俺の言葉を聞いたヴェーヌは、両サイドには瓦礫が落ちているため、道の中央に軽装甲機動車をすぐに止めた。すぐさま全員が降りる。ただ、真っ黒な服装に骸骨を思わせるような仮面をつけているので、無茶苦茶怪しい。

 俺は機関銃を仕舞うと、5人と同様に降りる。誰も乗っていないことを確認し、軽装甲機動車をインベントに仕舞う。


 道の真ん中と言っていいところで降りてしまったので、建物の陰に急いで向かう。俺の後ろを全員が付いてくる。



 ようやく安全だと思われるところに来たため、丸くなるように固まる。

 俺は指示を出すことにした。


「今からアルール王国側の援護を行う。本来はやりたくないが、全員バラバラになって動くぞ」

「散らばって、援護をするのですね?」


 ヴェーヌだと思うやつが尋ねてきたので、俺は頷く。俺以外の5人の仮面には声を変えるものをつけていないので、誰なのかは声で判断できるが、くぐもっているためにやはり確証は持てない。


「担当はそれぞれ決めてくれ。場合によっては、2人1組で動いて貰って構わない。俺はカナと共に城へ向かう」

「もし異世界の人がいたらどうしたらいいのかしら?」

「それはそれぞれ決めてくれ。俺がどうこう言うつもりはない」

「殺して構わないと言うことかしら?」

「それが4人の考えであるならば、俺は何も口出しをしない。もちろんレールン王国の兵士もどうするかはそれぞれ判断してくれ」


 全員が頷いたのを確認すると、俺はカナと共に城に向かって走り出した。

 シュティア達4人のことは少々心配だが、4人とも優秀だ。絶対に死にはしない。怪我さえするか怪しい。


 学校の奴らが戦争に参加しているのであれば、命を落とす覚悟があると勝手に判断する。そうでなければ戦争なんかに参加しないはずだ。



 さすがに俺の全力疾走にはついてこれないので、カナのために少しスピードを落とす。


「お兄ちゃん。ドローンは出さなくていいのでしょうか?」

「……出しておくか」


 少し考えた後、俺はスピードを落とし、道の真ん中にドローンを出した。5メートル四方ほどに収まりそうなドローンは漆黒で、6枚羽。機体の下には銃口が3つ――3砲身のガトリングが備え付けられている。口径は小さいので、撃たれた人が粉々になるということはないだろう。多分。


 これは対魔物用で作ったつもりだったが、対人用になるとは思ってもいなかった。


「カナ。頼む」

「わかりました。お兄ちゃん」


 俺の言葉を聞いたカナはそう言うと、ドローンを見つめる。その瞬間、ドローンが起動した。風を下に向かって吹き出して飛ぶのだが、モーター音はしない。その代わりに、円形のプロペラガードの内側に書かれている記号がぼんやりと輝いている。

 これは一種の魔法陣で、それを使って風を下に吹き出している。イメージは、ドローンの羽を取り払い、代わりに翅のない扇風機をつけた感じと言えば分かりやすいだろう。


 ガトリングだが、銃弾はマジックバックから供給するようにしている。それにより、銃弾を入れるボックスを外部につけるよりも軽量化ができ、さらにより多くの銃弾を搭載できる。もちろん薬莢を排出するところにもマジックバックをつけている。

 銃弾に関しては、弾薬を金属製の帯でつないで供給できるようにしている。この帯は壊れない限り繰り返し使えるようにはなっている。ただ、くっつける作業が無茶苦茶面倒。



 ドローンが空高く飛び立った。ちなみに、ドローンにはカメラのような物が付いており、飛ばす際はカナがそれを確認している。原理は一切わからない。そもそもこの世界には、通信機器などないので、映像のやり取りなんてできないはずだ。


 そのことに関してカナに聞いたが、空気中には魔力があふれており、それに含まれている波のような物に情報を載せてやりとりしているとのこと。少々難しいが、電波のようなものだそうだ。

 俺はそれを何とか理解し、新たに別のものを作ったが、それはのちのち説明しようと思う。



 ドローンは一定の高さまで上がると、どこかに飛んで行った。


「カナ。街の方にいるアルール王国側の兵を援護しに行ってやってくれ。くれぐれもアルール王国側の兵士には当てるなよ?」

「……わかっています」


 カナは返事を返してきた。

 カナはドローンの操作をしながら、自身も動くことが出来る。どうやら体とドローンの操作は別々の思考を行っているようだ。だがいくらカナでも、ドローンの操作中は演算が大変なのだろう。

 返事が遅れたり、走るなどの急な動きができなくなる。


 試しに一度走らせたのだが、受け身を取ることなく見事に顔から倒れ込んだ。もちろんその時は慌てて支えることになったが。



 さすがに城まで歩いてくほど現在の状況は余裕がないので、俺はカナをお姫様抱っこすると走り出した。身体強化を使い少しでも早く走れるようにする。ステータスが高いこともあるのか、元から軽いカナがさらに軽く感じた。

 ただ周りから見たら、真っ黒な服を着て骸骨を思わせるような仮面をつけた人が、同じ恰好をした人をお姫様抱っこしているように見える。なんともいえない姿だろう。


 だが幸いと言っていいのだろうか。現在の戦いの場はこの辺りではないようで、人の姿は一切見えない。俺は城に向かて走る。

 ただ、所々に馬車が倒れていたり建物が倒壊するなど、行く手の邪魔になった。そういうものはジャンプをして避けることとなった。


 時々だが爆発音が響き、その方向から煙が上がる。4人が心配だ。



「……4人が戦闘に入りました。シュティアさんとメルクールさん、ヴェーヌさんとウーラさんに分かれています」

「わかった。4人が危ないようなら、そちらを優先してくれ」

「……はい」


 あちこちから上がる火の手を見たり、道路わきに息絶えている一般市民を見て、城を囲っている壁を通り過ぎて城に近づいてきたとき、カナから報告が入った。どうやらシュティア達4人が戦闘に入ったようだ。

 俺は前を向いて走り続けながらカナに指示を出す。

 そうしている間にも城が目の前に来た。


 よく見ると、すでに城の中に兵士が入っているようだ。数人の兵士が見張りのためか外に立っており、城の廊下にある窓からは内部で兵士が戦っているのが見える。


 俺は攻撃準備を行おうと思ったが、両手はカナを支えるために使っていることに気が付いた。そこでお姫様抱っこから背負う方法に変更することにする。


「カナ。背負うから移動を頼む」

「……わかりました」


 俺はスピードを落としつつ、カナが背中に移動するのを手助けする。

 カナが器用に背中に移動したのを確認すると、左手を背中にいるカナに添えて支える。これで右手が使えるになった。

 すぐにインベントリからハンドガンを取り出す。


 その間にも、距離は縮まったため数人の兵士はこちらに気が付いた。最初はためらっていたがすぐに敵と判断したようで、腰に下げている鞘から剣を引き抜いてこちらに構えて来る。

 だが距離はあるので、向こうは攻撃をしてこない。


「悪いな。お前たちに構っている暇はない」


 俺はそうつぶやくと、引き金を引く。外で待機していた兵士たちは騎士団ではないためなのか、ミスリル製ではなく鉄製の鎧を全身装備している。もちろん鉄の装備で銃弾を止めることなどできるわけがない。人数分の銃声があたりに響く。

 額を撃ち抜かれた兵士たちがその場に次々と倒れた。それを俺は極力見ないようにする。夢に出てくるのは勘弁だ。


「城内に入るぞ」

「……わかりました」


 俺は倒れた兵士たちを避けるように走り抜け、数日前にくぐった入り口の扉を再びくぐりながらカナに声をかける。

 ふと気になったので、俺は街の上空に目を向ける。そこには真っ黒な機体が、空を我が物顔で飛んでいるのが遠くに見えた。時々だが機体の下が光っている。敵に銃弾の雨を浴びせているのだろうか。

 カナは案外容赦がないなと思ったが、それを指示したのは俺だ。見た目が小学生の子供に、敵を排除しろと指示を出した俺はいったい……



 余計なことを考えてしまった。頭の隅に追いやると、俺は城内に入る。

 状況は外よりひどいものだった。兵士が食い止めようとしていたのだろうか。辺りには死体が転がっており足の踏み場もない。床には血の海ができており、壁には血が飛び散っている。


 兵士以外の人はどうなったか気になるが、それよりもまず王を探さなければならない。その場にとどまり、音を探る。

 予想では執務室にいそうだが、戦闘に備えて違う部屋にいるかもしれない。そしてその近くには必ず兵士が待機しているはずだ。そして今は場内に敵兵士がいるので、必ず戦闘音が起きているはず。


 俺は耳を澄ます。わずかだが聞こえてきた。場所は――


「こっちか!」


 俺は音の下方向に走り出す。場所は1階から聞こえているはず。確証がないのは、音が小さいため。

 俺はカナを背負ったまま走る。俺が走っている廊下は、大人5人は簡単に横に並ぶことが出来るほとの広さがあり、左右には石像が立っている。所々赤くなっているのは、廊下に倒れている兵士のものだろう。踏まないように気をつけつつ、ひたすら走る。


 予想が当たったようで、廊下の先ではレールン王国側の兵士が固まっている。音の発生源はその奥で、さらにその奥には大きな扉がある。2か月ほど前、レールン王国の城で模様は違うが、同じぐらいの大きな扉を見たことがある。大広間へつながる扉だ。もしかしたら、この扉の先に王がいるのかもしれない。


 扉と兵士の間のどこに着地できそうなスペースがあるのか分からないため、さすがに兵士を飛び越えるなんてできない。では壁走りはどうかと言われても、忍者じゃないので無理だ。結果、道を切り開くことにした。


「カ――ファイブ。待機しておいてくれ」

「わかりました。ゼロ」


 さすがにカナを背負ったまま戦闘はできない。

 距離はあるといっても兵士に聞こえるかもしれないので、バレないために俺は事前に考えていた名前で呼ぶ。一瞬間違えそうになったのは仕方がない。

 カナは俺に理由を尋ねることなく、俺の名前を変えて呼んできた。カナは本当に優秀な子だ。


 兵士から十分に離れて居ることを確認し、俺はカナをゆっくりと下ろす。現在もカナはドローンの操作を行っているため、急な反応はできない。そのため安全なところで待機して貰うしかない。

 カナは俺から降りた後、一瞬周囲を見渡した。近くにあった鎧と柱の間に座るように隠れた。少々心もとないが、見る位置によっては完全に分からないだろう。



 俺はカナが隠れたことを確認すると、インベントリから剣を取り出す。種類はロングソード。ステータスが上がったために、軽く感じるのが難点だ。自分の身長とほとんど同じぐらいの大剣もあるが、この場では使いづらいと判断したために使わないことにした。

 もちろん銃も使用しない。助けようとしているアルール王国側の兵士にも当たるかもしれないからだ。


 俺は一気にレールン王国側の兵士の後ろに近づく。足音でバレたのだろうか。レールン王国側の兵士が振り向く。それと同時に接近した俺は、胴と首の間にあるわずかな鎧の隙間から剣を突き刺す。すぐさま剣を引き抜くと、隣にいた兵士にも同じことをする。


 兵だって人だ。俺はこの世界に来てから、2か月ぶりに人を殺した。未だに慣れない。

 いや。殺人に慣れようとは思わない。慣れるとは思わないから。今だって躊躇をしている。そのためか、剣を突き刺す寸前に目を次の目標とする敵に向ける。そうやって、人が死ぬ光景を見ないようにしている。それは一種の逃げであることぐらいわかっているが、そうしないと自分を守れない。


 余計なことを考えていたことに気が付き、今は目の前の敵にひたすら集中するよう自分に言い聞かせる。そうしないと、守りたいものを守れないから。


 俺は目の前の敵に視線を向け、ひたすら剣を振った。辺りは人の血の臭いが立ち込めている。気分が悪くなるが、気合で振り払う。


 レールン王国側の兵士は、まさか背後から敵が来ると思っていなかったのだろう。焦りからなのか、動きが一気に乱れ始める。

 その乱れはレールン王国側の兵士とアルール王国側の兵士が接触しているところまで広がったらしく、アルール王国側の兵士と俺で挟んでいるレールン王国側の兵士を全滅させるまでにかかった時間はそう長くはなかった。

本当は先週報告するべきでしたが、完全に忘れていました。

零の持っていた、骸骨を真似た変装用の仮面ですが、変成器機能を止めました。と言うのも、仕組みに少し無理があったので……


それともう1つです。

作者が書いている表現より、自分の考えた表現の方が合っているぞ! と思う方がいらっしゃったら、その文章の場所と考えた文章を感想欄にて教えてください。作者が書いた文章が酷かった場合、そちらに直させていただきます。よろしくお願いいたします。

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