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武器作り

 笑いが収まった後、頭の中はすっきりとしていた。

 何をすればいいのかがはっきりと分かる。今まで中断していた銃を作ればいい。


 腹筋を使ってすぐさま起きあがると、椅子に座り机と向き合う。

 1秒と置かずインベントリから鉄鉱石と、初めて作ったためにぐちゃぐちゃの銃――リボルバーのフレームを取り出した。


「『形成』」


 そしてすぐに銃を鉱石干渉でインゴットに変える。ここ最近慣れてきたこともあり、まるで息をするかのようにインゴットに形成する。


「『形成』」


 そしてインゴットに形成するなり、再び形成。もう1度リボルバーのフレーを再現。初めて作ったフレーより、明らかにいい出来。だがそれでも駄目。まだ駄目だ。


「『形成』」


もう1度壊し、インゴットに直す。そして――


「『形成』」


 もう1度作る。先ほどよりいい出来。これぐらいなら何とか行ける。


 続いて細々とした部品を作る。フレームより作るのは難しい。だから何度も作り、壊し、作り、壊しを繰り返す。少しでもだめだと思ったら、すぐに壊す。



 気が付けば、とっくに夕日は沈んでいた。夕飯を食べ逃したな。多分だが風呂も入り損ねた。

 だが別にいい。俺は一刻も早く銃を作り上げたい。


 その後も部品を作っては壊す。だが眠気が来た。午前中は鍛冶の練習がある。一瞬行かなくてもいいと思ったが、考えを改める。


 銃作りには金属が欠かせない。

 練習と称して鉄鉱石を貰う――正しくは流用するために貰う――ことはできるが、午前中にある鍛冶の練習を休むような奴に、果たして渡そうと思うだろうか。


 そのまま作り続けたい気持ちを抑え、即席で作った鉄の容器に部品を仕舞い、『インベントリ』に入れる。

 そしてその日はそのまま眠った。




 次の日、起きるなりすぐさま着替える。

 そのまま再びリボルバーを作り始めた。部品だが、一通りできたので、組み立てる。そしてついに――


「よしっ! 出来た!」


 試作品のような物だが、十分使えるはず。

 試しにハンマーを起こし、引き金を引く。


 カチッ!


 うまく動作した。この勢いで銃弾も作りたいが、そろそろ朝食のはずだ。

 そう思ったのと同時に、扉がノックされた。


「宮崎君。起きていますか? 朝食の時間ですよ」

「わかりました。今行きます」


 俺は返事をすると、すぐに机の上にある物をすべて仕舞う。何も残っていない。

 それを確認した後、大広間へと朝食を取りに向かった。


 朝食はパンや野菜、肉など種類が豊富だったが、俺はまるで飲み込むようにして食べる。ほどほどまで食べると、今だおしゃべりしながら朝食を食べている奴らを放っておいて部屋へと戻った。


 再び作業。

 今度は銃弾を作る。特にこれと言った問題もなく、こちらも無事に完成。つまりいつでも発砲できる。ただ、火薬の量があっているかは分からない。多すぎても少なすぎてもだめ。一度確認する必要がありそうだ。


 作業はそこまでにして午前中は鍛冶の練習に。

 リボルバーを作る際に細かい部品を作ったと言うことで、鍛冶の練習は難なくこなせた。


 そのためいつもより早く終わる。

 昼食を取りに一度大広間に向かったが、誰もいない。ただ昼食の準備はされていたようで、早めにとる。

 ちょうど俺以外の生徒が入ってきたところで、俺は昼食を終えた。


 そのまま今度は騎士団の団長の元へ。この時間ならいつもの練習場にいるのだろうか。

 練習場へ向かう途中、昼食のために大広間へと向かう多くの生徒とすれ違う。声をかけられるが、俺は無視。


 訓練場につくと、予想通り団長はいた。すぐさま近づく。


「確か君は……レイだな。どうした?」

「1つお願いがあり来ました」

「お願い? 何だ? 出来る限りのことはかなえてやるが、無理はいうなよ」


団長が笑顔でそういうが、俺は真面目な顔をする。

 これで今後の予定が決まる。


「以後、俺は午後の戦闘の訓練には出ません」

「どういうことだ」


 団長の笑顔が一瞬で消え、少し怖い表情になる。

 俺は一瞬逃げそうになったが、自分の考えをきちんと伝えるために思い留まる。


「俺の職業は鍛冶師です」

「……続けて」

「そのため、午前と午後の両方とも鍛冶をしたいです」


 両方とも鍛冶をしたい。

 別に間違ってはいないが、狙いは午後の時間を銃作りに割り当てたい。そして銃の製作を一気に進めたい。鍛冶の練習にもなるから間違っていない。


「それは他の奴のために鍛冶を学ぶと言うことだな?」

「ええ」


 正しくは、早く帰ることが出来るように、他の奴のために俺が力をつけると言うことだが、修正なんてしなくていい。


「……わかった。女王陛下の方には俺から説明しておく」

「つまり許可は下りたと言うことですね?」

「ああ。頑張ってくれよ」

「もちろんです。ありがとうございます」


 俺はそう言って頭を下げると、急いで部屋へと戻っていった。






「どうだ? 慣れてきたか? そろそろ他の奴に交じってやっても問題なさそうだが」


 鍛冶の練習がひと段落し、俺に付いてくれている人と話す。髪が薄茶色の若い男性だ。


「かなり慣れてきましたが、もう少し勉強が必要ですね」

「そうか。そう慌てることはないからな」


 男性は笑顔で笑った。

 ついでだ。この機会にあれを聞いてみるか。


「1つお願いがあるのですが、いいですか?」

「なんだ?」

「街の外に出るための許可書を貰えませんか?」

「許可書? そんなものいつ使う? なぜ外に出る?」


 真剣な表情になって聞いてきた。

 まあ、少しばかり予想はできていた。

 俺は今は訓練中。にも関わらず街の外にでる意味が分からない。それに出るとしてもいつ使うかわからないだろう。


俺はあらかじめ考えていた通りのことを話す。


「目的は、自分の作った剣を実践で使ってみたいっていうのが大きいですね。ダンジョンだと何があるかわからないので、外にいる魔物に向かって使いたいと思いまして。自分に合う剣を作れないと、他の人に合う剣なんて作れないじゃないですか」

「ほう。でいつ使う?」


 ダンジョンより街の外の方が危険だと俺は思っていた。そのためダンジョンで使えと言われるだろうと思っていたが、何も言われない。

 無茶苦茶怪しい説明を放置し、俺はそのまま説明を続ける。


「午後です」

「午後? 午後は戦闘の訓練があるんじゃないのか?」

「鍛冶の練習をするためと言うことで、団長に頼みました」

「つまり後は許可書待ちということか」

「そういうことです」


 され、許可は下りるだろうか。

 ちなみにだが、俺は剣を試しに使うために街の外に行くわけではない。銃を試射するためだ。


 城の中で撃つわけにもいかず、かといって街の中で撃つわけにもいかない。結果、町の外でと言うことになった。もちろん外に出るためには許可書やなんやらが必要だろう。

 武器の使用実験のためと言うことにすれば、許可書が下りると思ってこういう行動をしたが、果たしてどうなるだろう。


「少し待っていろ」


 男性はそういうと奥の方へ行った。

 貰えるのか?


 俺は言われたとおりに待つ。しかしいくら待っても戻ってこない。

 逃げられたのではないかと思い始めるころに、男性が戻ってきた。手に何か紙を持っている。


「これを持っていけ。これは俺が出した許可書だ」

「ありがとうございます」


 男性が紙を渡してきたので、それを受け取る。ここで読みたかったが、邪魔になりそうだったので、会釈すると、一刻も早く銃を試したいので門に向かって歩き出した。



 歩きながら紙に書かれていることを読む。

 内容は、俺がきちんと許可を得て外出しているということ。



 門が見えてくるときには、人も並んでいるのが見えた。

 俺も街から出る人の列に並んで検問を受ける。ここは王都のため、出入りする人が多い。そのため時間がかかるのは仕方がない。


 ついに俺の番が来た。


「待て。日本人であるお前がなぜ外に出る? 街の中にいないといけないのでは?」


 門番の男性が俺を見るなり尋ねてきた。

 ここに来るまでの間、黒髪の奴は見なかった。この世界には黒髪がいないのだろうか。

 

 ここで変な嘘をつくと後々、話の食い違いが発生する可能性がある。

 ここを出ていくつもりだがそれは避けたかったので、正直に話す。


「作った武器を試しに使用する為です。鍛冶士の人達は、今日は忙しいそうで時間をくれました」


 ついでに、訓練のさぼりではないと言うこと証明するために紙を渡す。鍛冶屋の男性に貰った許可書だ。


「確かに許可は下りているな。分かった。通っていい。だが森には近づくな。危ないからな」

「分かりました。ありがとうございます」


 無事通過する許可が出たので、門を通って王都から離れる。感覚的に徒歩30分。そこで試射の実験を行うことにした。

 弾薬は事前に作っていたが、火薬をいろいろな量を入れて最適な量を探すことにしている。


「まずは1発目」


 俺はそう呟いて、右足を半歩引き右腕を前に伸ばす。もちろん完全ではない。そして左腕は曲げて下からサポートするように構える。映画で見たことのある構え方。

 見よう見まねの構えが完成したので、実際に撃ってみる。的は10メートルほど先の石。跳弾に関しては大丈夫だろう。


 パンッ!


「いっ!」


 想像以上の反動だったため、腕が痛い。肩の方にも衝撃が伝わったので若干痛い。

 だがたくさん実験を行わなければならないので、次々と撃っていく。そのため、かなりの鉄と鉛を消費した。


 その甲斐もあって、試射の実験結果は納得できるものだった。いくつかは火薬を入れる量が少なかったりしたが、火薬を入れる量がちょうどいいものがあったので、それを基準にして作るか。


 この世界に来たのは学校帰り。教科書やノートも一緒に来ている。

 そして持ってきていた真っ新なノートは、現在メモ帳として使っている。今書いている物は火薬の量ぐらいだが。

 そこに実験結果を書き込む。


 弾道に関しても問題がない。ほとんど狙ったところに行く。これならダンジョンでも使える。ただもしライフルにも使うとしたら、もう少し調整が必要かもしれないな。



 試射が終わったことと、時間も時間だったので実験を終えて街に再び戻る。入るときも同じように兵士の検査が入る。いそいで城に戻るとちょうど夕食時。

 何人もの視線が俺に向くが、いちいち反応なんてしていられない。無視するように俺は席に座ると、夕食を取った。

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