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番外編 休暇『海水浴』

海水浴の話です(どう見たって季節外れ……)

明日は体育の日と言うことで、ちょうどよかったかもしれませんね……


海水浴ならこんな感じかな? と思いながら書きました。ですので少しおかしいところがあるかもしれません。

書くことも大変でしたが、書くためにネットで女性用の水着を調べたのですが、種類多すぎ!

「零さん。試着室のような作ってもらえませんか?」

「突然だな。どうした?」


 現在は朝食を食べ、片付けを終えた後。

 片付けを終えたため、何をしようか考えていると、ヴェーヌにそんなことを言われる。


 突然のことで、何を言っているのかよく分からなかった。

 俺が尋ね返すと、ヴェーヌが説明する。


「水着に着替えようと思いまして」

「水着……海で泳ぐのか?」

「はい」


 俺が尋ねると、ヴェーヌが笑顔で返事をした。

 ヴェーヌの後ろを見ると、ウーラ以外の3人が円になり何やら話していた。

 ちなみにウーラは俺の隣で座っている。




 王都からここまでくる道中は暇だったと言うことで、後ろの席で何をするかをシュティアとメルクール、ヴェーヌが話し合っていた。ウーラは特にしたいことはないためなのか、助手席に座って話を聞いているだけだった。


 3人はいろいろと案を出したが、せっかく海の近くに行くからということで、海で泳ぎたいと言うことになった。

 俺もいいとは思ったが、ただ心配なことがある。それは、海にも魔物がいると言うことだ。泳いでる時に襲われたりでもしらた、ものすごく危険だ。


 俺はそれについてウーラに尋ねた。シュティア達3人は水着の話をしており、聞けそうにない。


 陸に住んでいる魔物は、ほとんどがエルフの郷にあった訓練用のダンジョン内で出てきたので知っているが、海に住んでいる魔物は全くと言っていいほど知らない。

 海関連の魔物で唯一知っていると言っていいのはセイレーンだ。これは、ダンジョン内に出てきたハーピーを調べていると、似た魔物として知った。

 ただ、海の近くにいるだけであって、海の中にはいない。


 閑話休題



「海に住んでいる魔物は、基本的に浅瀬にはいないわね。どちらかと言うと、船でいかないといけないような沖合にいることが多いわ。もし浅瀬にいたりでもすれば、間違いなくここの街は滅んでいるわね」


 俺が尋ねると、ウーラは快く教えてくれた。さすがエルフ。長く生きているだけあって、魔物にも詳しい。

 頭の住にでもメモをしておく。忘れると思うが。


「と言うことは、海で泳ぐことはできるということですね?」

「ええ。でも海で泳ぐ人なんて、まずいないわよ?」


 さっきまでシュティア達と仲良く話していたヴェーヌが突然尋ねてきた。それでもウーラは快く答える。そしてそれを聞いたヴェーヌは、なぜだか分からないと言う顔をしていた。俺も分からない。

 魔物が浅瀬にいなければ泳ぐことはできる。


「あなたたち2人の世界が平和なのはわかっているわ。でもこの世界はそこまで平和ではないわ。それはあなた達2人も知っているわよね?」


 ウーラの言葉にヴェーヌと俺は頷く。ウーラは続けた。


「ただでさえ危険な世界にもかかわらず、そんな無防備なことできるわけないでしょ?」


 確かによく考えると、向こうこちらの世界では常識が違う。海や川で泳ぐとなれば、どうしても無謀になる。ウーラの言う通り、そこを襲われたらまず助からないだろう。


 ヴェーヌの方も納得しているようだった。




 そして色々と考えた結果、魔物ではなく人の心配だけしていればいいということで、街の近くではなく人が寄り付かないであろう場所を探し出し、そこで休暇を取ることとなった。

 そして、人が来ないであろう場所がここだろうということだ。


 ヴェーヌの頼み事である、試着室のような着替える場所をどのように作るか考えていると、ウーラがヴェーヌに提案した。


「着替える個室が欲しいのなら、私が作りましょうか?」

「ウーラさんが……ですか?」

「ええ。土魔法を使って作った方が早いでしょ?」

「確かにそうですね。お願いしてもいいでしょうか?」

「もちろんよ」


 ウーラはそういうと立ち上がり、ヴェーヌと共にシュティア達3人の方へ向かって行った。その後ろをカナが付いて行く。

 二言三言話した後、ウーラが作業を始めた。それを4人が見ている。


 ウーラが手慣れているためか、あっという間に長方形の箱が2つ出来上がった。

 砂を使ったということもあり、外観は白っぽい。砂を使ったにも関わらず崩れないのは、魔法が関与しているからだろう。


 さすがに扉はないようで、シュティアとメルクールが向こう側に回り込んだ。

 ヴェーヌとウーラは着替えないのか、俺と向かい合うように壁にもたれている。

 監視か? 俺が除かないように監視しているのか?



 別に見に行くつもりはないので本を読みつつ待つ。残念ながら俺は水着を持っていない。そのため、泳ぐとしたら服のまま泳ぐことになる。



 シュティア達が水着を持っている理由だが、エルフの郷のダンジョン内に海があったということでヴェーヌが自作していたからだ。布はエルフの郷にある物を使用。

 作っているところを見せてもらったが、かなり慣れた手つきだった。


 ヴェーヌ曰く、慣れれば簡単だそうだ。よく分からないため再び尋ねると、前世の時に服を作ったことがあるためと遠い目をしながら答えた。

 バカなことを聞いたと思って、慌てて話題を変えたことは記憶に残っている。


 その時にヴェーヌが俺の分も作ろうか尋ねてくれたが、自分の水着をヴェーヌに作って貰うことが恥ずかしかったため、いらないとだけ言って部屋に戻った。


 数日後、3人は実際に泳ぎに行っていた。俺はダンジョンの深層部でレベリングをしており、ウーラは用があると言ってどこかに行ってしまったためだ。シュティアとメルクールの水着はすでに作っていたらしい。もちろんウーラの分も作っていたようだが、出番なしとなった。


 3人が泳ぎに行ったその晩、俺がダンジョンから帰ってくると3人はソファーに座っていた。しかしどこか浮かない表情をしていたので何かあったと思う。ダンジョンの中の海で泳ぐと言うこともあり、魔物に邪魔され遊べなかったのだろうと自分の中で想像することになった。


 これは後日談だが、夕食時になり3人がタコの足を冷蔵庫から出してきた。しかもそこそこの量。結果、その日はたこ焼きパーティーをした。ただ3人が、親の仇を取るような表情をしつつたこ焼きを食べている様は少し怖かった。ウーラは心配そうに3人を見つつ、たこ焼きを楽しんで食べていた。




 俺は本を読んで待っていると、足音が聞こえてきた。視線を向けると、そこには水着姿の1人の美女と2人の美少女。2人の美幼女がいた。いや、メルクールの体形はどう見たって子供体型だからな?


「どうですか、零さん? かなり気合を入れて作ってみました! 感想をどうぞ!」

「かなり上手に作っているな……」


 ヴェーヌは腰に手を当ててポーズをとると、笑顔で尋ねてきた。

 作った本人の言う通り、かなりの出来栄えだ。店に売っている物を買ってきましたと言われても、頷いてしまいそうだ。


 エルフの郷では、ヴェーヌが水辺の近くで見せたいと言っていたので、家の中では見せなかった。そのため今日が初めて見ることになる。


 俺が眺めていると、全員からジト目を向けられた。

 え? 俺なにか間違ったか?


「……レイ、感想……それだけ?」


 俺が困っていると、シュティアが尋ねてきた。ようやくわかった。

 そこで、ようやく分かったかのようにふるまうと、どのように褒めたとしても絶対怒られるはずだ。そこで、まるで考えていたことを言うかのように感想を言う。


「全員、それぞれの持っている雰囲気に水着が合っているぞ」

「レイさん。それはあたしが子供体形と言っているのですか?」


 怒られないように感想を言ったが、その感想が悪かったのだろうか。メルクールが頬っぺたを膨らませて睨んでくる。

 ただ、他の3人は満足した表情だ。珍しくカナも満足したのか微笑んでいる。

 メルクールに何を言ったとしても、地雷を踏みそうなのでスルーして、気になったことを尋ねる。


「なあヴェーヌ。お前たち4人の水着は良いとしよう。なぜカナの水着だけスクール水着なんだ?」


 そう。なぜかカナの水着だけスクール水着。色はよくある藍色ではなく真っ黒。

 似せるなら細部までと思ったのだろうか。胸のところには『かな』とひらがなで書かれている。しかも手書き感満載で、字が歪んでいる。一瞬何かしらの染料で染めたと思ったが、よく見ると刺繡を施されている。ここまで丁寧に作られているにもかかわらず、字が歪んでいるのはわざとなのだろう。


 ちなみに、4人の水着はと言うとパッと見は似ているがよく見ると違う。

 シュティアの水着は、肩ひもが細いビキニ。色は白1色だが、かなり似合っている。

 メルクールの水着は、本人が自覚している通り子供体形に似合う、上下の分かれたワンピース型の水着。きちんと上下ともフリルが付いている。色は青色を基調としている。

 ヴェーヌの水着は、肩紐の部分が布になっているビキニ。それ以外はシュティアと同じ。色に関しては水色と白色の横縞模様。

 ウーラの水着は、シュティアと同じビキニの水着。色は黒一色でシュティアの色違いのように見えるが、腰に黒い布を巻いて、片方が長くなるように垂らしている。この中では一番大人な雰囲気がある。



「小さい子と言えば、スクール水着じゃないですか」

「そうなのか?」

「なんでそこでレイさんはあたしを見るんですか!?」


 どうやらヴェーヌの言葉を聞いた俺の視線は、メルクールに移ったことが本人にバレてしまったようだ。

 だって、メルクールはほとんど絶壁だし……


「なんか物凄く失礼なことを考えませんでしたか?」

「……動きやすくていいと思うぞ?」

「慰めになっていませんからね!?」


 俺が視線を外しながら慰めると、ものすごく怒られた。

 メルクールの戦闘スタイルは近接。それも持ち前の小柄な体を活かし、相手の懐に潜り込むような戦闘スタイルだ。


 メルクールとそのようにやり取りしていると、シュティアが近づいてくる。その表情はどこか不満げだ。

 俺が気が付いたのがうれしかったのか、不満な表情は無くなり微笑んでくる。ただ、その微笑みは何かを隠しているような感じがした。


 それが当たっていたのか、シュティアは俺の背中に優しく抱き着いてくる。

 水着という布一枚の状態で。


「なあ、シュティア? 何している?」

「……ん? 当ててる、の」


 シュティアがそう答えると、俺に抱き着く力を強める。結果、シュティアの胸はスライムのごとく形を変える。しかも水着と言うこともあるのか、感触が分かる。嫌と言うほどわかる。

 このようなやり取り、以前もあったような……


「シュティアさん? それはあたしへ見せつけているのですか?」

「……メルクールでは、出来ないことを……私は出来る。だから……恋人に、なれた」


 いや、シュティアさん。それは違いますよ? どちらかと言うと、半分無理やり恋人にされたようなものですよ? 文句はないが。


「シュ、シュティアさん! 不純ですよ!?」

「……私と、レイは……恋人。やって……あたりまえ」


 ヴェーヌが驚きつつ、注意をするかのように言うがシュティアは挑発するかのような笑みを浮かべる。

 それだけならよかったのだが、俺の頭を胸の前で抱くように体を動かしたため、背中から後頭部に柔らかい感触が移る。

 そのことについては何も言わない。言ったら絶対メルクールが怒る。


「零さんも何か行ってあげてください!」

「と言われても、俺とシュティアは恋人で、すでに色々――」

「やっぱり何も言わないでください!」


 ヴェーヌに何か言えと言われたため、言おうとしたら途中で止められた。

 ウーラは、俺たちのやり取りを見て苦笑いをしている。

 ここで思ったのだが、カナの成長に悪影響が出ないか心配だ。


「もういいです。泳ぎに行きましょう……」

「そうですね」

「フフフ」


 ヴェーヌとメルクールはどこか疲れたように言うと、海の方へ歩いて行った。その後ろをカナと手をつないがウーラが、笑いながらついていく。もちろんシュティアも付いて行った。


今回は海の上に安心して泳げると言うこともあるのか、シュティアとヴェーヌにメルクールは楽しそうに、互いに水をかけあって遊んでいる。こういう子供っぽいことをしないであろうウーラも混ざり楽しそうに遊んでいる。カナもどこか楽しそうにしているので、安心だ。


俺はというと、5人が遊んでいる姿を遠めから眺める。案外楽しい。




「あれ? シュティアは泳ぎに行かないのか?」

「……」


少しするとシュティアが帰ってきた。それと同時に、向こうに残った4人は沖の方に泳いでいった。まだ魔物は出ない範囲だと思うが、深さがあると思うので少々心配。


「シュティア?」

「……泳げない」

「え?」


 突然答えが帰ってきたために俺は聞き逃しそうになった。

 泳げないだと?


「……泳げない」

「あれ? じゃあエルフの郷のダンジョンで泳いだ時は……」

「浅いところにいた」


 かなり意外だった。水着に着替えていると言うこともあり、泳げると思っていた。

 浅いところにしかいることが出来なかったことはさみしかったと思う。


 にも関わらずシュティアは遊べない。

 俺は1つのアイデアを思い浮かんだ。


「よし。シュティア。泳ぐ練習をするか」


 俺はそう言いながら立ち上がる。

 シュティアはというと、俺の横にぺたんと座ったまま俺を見上げていた。

 俺は少し待っているように言うと、試着室のような物へ向かいハーフパンツに着替える。色は茶色。街で打っていたズボンだ。


 俺は着替え終えるとシュティアのところに戻り、手を取るとシュティアを立たせ、海へ向かう。


 腰のあたりの深さまでくると一度止まり、シュティアの方へ向く。その時には、メルクール達4人は沖の方まで泳いで行ってしまっていない。


「さて、始めるか」


 俺はそう言うが、シュティアの表情はかなり硬いものだ。


「先に水に浮けるようにするか。シュティア反対側を向いてくれ」

「……うん」


 まずは浮くことになれた方がいいと思ったので、仰向けで浮かせてみようと考えた。


 シュティアに泳ぎを教えると言った俺だが、はっきり言ってどのように教えていいかわからない。そのため、思いつく限りのことをやろうと思い、最初に思いついたのが仰向けで浮く方法だ。


 シュティアに指示を出しつつ、何とか仰向けで浮かばせることが出来た。もちろん俺は両手でシュティアの肩を支え、常に顔が水面に出ているようにしている。


「少し深いところまでいくぞ?」

「……うん」


 シュティアはどこか心配そうな表情だが、了解は得たので俺は引っ張るように移動する。あっという間に俺の首のあたりまでの深さまできた。シュティアの身長なら頭のてっぺんまで完全に沈んでしまいそうだ。


 その後も時々指示を出し、自力で浮いておれるであろう状態まで持ってくることが出来た。ただシュティアの体はこわばっており、浮いていることができるかが心配だ。

 まあ、大丈夫だろう。俺はということで――


「シュティア。手を離すぞ?」

「……う、うん」


 シュティアの了承を得られたので、俺はゆっくりと両手を離す。

 俺が手を完全に離しても、シュティアは危なげに浮いていた。


「よし! 浮いたぞ、シュ――」


 手を放してもしばらく浮いていたこともあり、完全に油断していた。シュティアが一瞬で海の底へと沈んでいった。

 潜水艦の艦長なら、「急速潜航!」と叫んでいただろう。それほど見事な沈みっぷりだった。シュティアの顔があった位置には、空気の泡が浮かび上がってくる。

 そしてシュティアは二度と海面には顔を出さなかった。


「……じゃなくて!」


 バカげた考えが頭の中で出てきたが、それを全力で追い払う。シュティアの腕があろう場所を探る。すぐにそれらしきものをつかんだ。すぐさま全力で引き上げる。


「シュティア! 大丈夫か!? 落ち着け! もう大丈夫だ!」

「あっぶっ……ぷはぁっ!! んぐっ……あ、んっ! ……かはっ!」


 俺が声をかけるが、シュティアは混乱しているうえに自分の呼吸を確保するので必死で、俺に体をつかまれても無意識に手足を動かして抵抗しようとする。もちろんそんなことをされてバランスを崩さないわけがない。


 何度か俺は顔を海水の中につける。そのたびに大量の海水を飲んでしまうが、シュティアは離さないようにする。


「シュティア! もう大丈夫だから落ち着け! 俺にしっかり捕まるんだ!」

「んぐっ……あっぷ……かはっ! んぐっ……かはっ!」

「シュティア!」

「はぷっ……」


 聞こえたのだろうか。わずかだが暴れるのが収まった。それを逃さず、すぐに岸の方にシュティアをつかんだまま引っ張っていく。




「ぜぇ……ぜぇ……」

「はぁ……はぁ……! けほっ……!」


 俺はなんとかシュティアを砂浜の上に引っ張り上げることが出来た。今は2人とも砂浜に寝転がるように倒れ込み、息を切らせている。

 シュティアは海水を飲んだためか、時々せき込んでいる。


 それから少しすると、お互い落ち着いたようで、呼吸も元に戻って来た。


「落ち着いたか?」

「……まだ」


 俺は顔をシュティアの方に向け、尋ねる。シュティアはいつもより少し長めに時間を空けた後答える。

 そう言いつつ、体を半分俺の方に向けると、左腕にしがみついてきた。胸に腕が沈み込みそうになっている。


 本来なら離れるように言うのだが、こうなったのも半分は俺が原因だ。シュティアが落ち着くまで好きなようにさせておく。



 さらに時間がたった。頃合いと見てシュティアに声をかける。


「そろそろ大丈夫だろ。離れてくれ」

「……ヤダ」


 シュティアはそう言うと、さらに俺に俺の腕にしがみつく。腕が胸に本格的に沈み込み始めた。さすがにまずいと思い、俺はシュティアを振りほどこうとする。


「お前、絶対落ち着いているだろ!」

「……もう少し」

「バカなこと言っていないでさっさと離れろ!」


 そう言って俺は右腕を使うために動かそうとしたが、びくともしない。

 俺は慌てて見ると、右手首が小さな砂山に埋もれている。そしてその砂山はコンクリートのようにびくともしない。


 周りから見れば何しているのだと思うかもしれないが、俺は必死で砂山から手を出そうとするが動かない。ふと見ると、両足とも右腕と同じように砂山に埋もれていた。これも同じくびくともしない。


「えっと……シュティアさん?」

「……どうしたの?」


 シュティアはそう言いつつ、妖艶な笑みを浮かべる。嫌な予感しかしない。

 俺はさらに必死になって右腕を解放しようとするが、いっこうに壊れそうな気配がない。


 そうしている間に、シュティアは俺の腹部に馬乗りになる。軽いこともあるのか苦しくはない。

 だがそこで気が付いた。シュティアが上に乗っていると言うことは、俺の左腕は自由である。


 だがそれはすぐに裏切られた。見事に左手首も砂山に埋もれていた。つまり四肢が一切使えない状態。

 詰んだ。

 その間にもシュティアは俺の体を指で撫でている。


「おい、シュティア! 止めろ! 今は昼間だぞ!」

「……嫌?」


 俺がシュティアに止めるよう言うがシュティアがどこか悲しそうな表情で尋ねてくる。

 そこですぐさまハイと言えなかった俺は自分を恨んだ。


「……じゃあ夜にする」

「いやそう言う問題じゃなくて!」


 そうしている間にもシュティアの攻撃は続く――ように思えたところで助けが来た。


「シュティアさん! 何しているのですか!?」

「……襲っている」


 ヴェーヌがそう言いながら走って近づいてくる。それに対しシュティアは、さも当然と言わんばかりに宣言する。

 それを聞いたヴェーヌが足を止め、顔をひきつらせた。


「零さんも何やっているんですか! 止めましょうよ!」

「見りゃわかるだろ! シュティアに拘束されているんだ!」

「何バカなこと言っているんですか!? ウーラさんはともかく、シュティアさんが出来るわけないじゃないですか! シュティアさんが土魔法使ったところ見たことないですよ!」

「じゃあ、俺が腕を上げるから見てろ! ……ってあれ?」


 右腕を上げると、砂の山を崩しながら手が上がった。試しに左腕も上げると右腕と同じく普通に上がる。

 シュティアが立ち上がったため、俺は上半身を起こして両足を確認する。砂山は先ほどの頑丈さを失ったのか簡単に崩れた。


「零さんはそういう趣味をお持ちだったのですね? 見損ないました」

「いや、ほんとだって! さっきまでコンクリートのように硬かったんだぞ!」

「はいはい、そうですね。早くしてください。2人ともお腹空かせていますよ?」


 ヴェーヌはツーンと音が鳴りそうな感じに顔を背けると踵を返した。その後ろにシュティアが続く。俺は立ち上がって体についた砂をはたくと、2人についていく。


 その際、シュティアがちらっと俺の方を見ると、下をちょっと出して笑った。

 無茶苦茶イラッと来た。




 その後は昼食をとり休憩を挟んだ後、みんなでシュティアの泳ぐ練習に付き合う。

 みんなの協力もあってか、なんとか泳げるようになった。その後はみんなで泳いだり、砂でイルカを作る要領で魔物を砂で作ったりを楽しんだ。


 ただ、ウーラが土魔法を使ったため、人の身長ほどのドラゴンを作った。雪像ならぬ砂像だ。しかも鱗の1枚1枚まで丁寧に作られている。魔法ってすごい……


 で、そんなことをしていると夜になった。

 夕食は魚料理にした。刺身が好きではなかった3人のために、トマトのような物を使用して白身魚を煮込んだ。海で泳いだと言うこともあり、暖かい料理が食べれてみんな満足。





 ちなみにみんなが寝た後、星空を見るためと俺はシュティアを連れ出した。もちろんシュティアは大いに喜んだ。

 ある程度離れたところまで移動した後、完全に油断しているシュティアの両手両足を布で縛り上げて砂の上に転がす。知識なんてないからかなり適当だ。

 その後、シュティアにされた昼間の仕返しをした。


 こうして休暇である1日が過ぎていったのだった。

たこが出てくると思った方すみません!


読んでいて分かったと思いますが、シュティア達3人がダンジョン内で泳いでいるときにタコが出てきております。もしかしたらその話を書くかもしれません。それまでお待ちください。

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